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扇風機がほしくて。

過去の思い出話です。

オタク皆ともだち

やっぱりオタクってオタクってだけで仲間意識が芽生えるのでしょうか。

高校生のとき、漫研に入りました。

せっせとイラスト描いて、コピーして製本して、年に4冊部誌の発行して。
文化祭では自分たちで作ったラミカやらしおりやら、ペーパーアイテムを販売して。
たぶん今以上にオタク生活エンジョイしてたんじゃないかしら。


漫研の地位向上を目指して

3年生になったとき、顧問が変わりました。
正確にはおっちゃん先生1人だったのが若い先生も追加されて2人になった。

その先生がえらく漫研に興味を持ってくれて。
部誌とか描いた作品とか色々見ては
「えー!めっちゃすごいやん!みんな絵めっちゃうまいなぁ!」
って、めっちゃ褒めてくれたんですよね。

で、先生言うんですよ。

「なんか大会とかイベントとかないん?出ぇや!」

そんなこと考えたこともなかった。
確かに、そういうのあったら出てもエェなぁ。

うちの部、学校内でえらく存在感が薄くて。
部室も専用のじゃないし、エアコンどころか扇風機すらないから夏は地獄。

なんか成績残したら学校も扇風機買ってくれんちゃうん?

そんな気持ちを持ち始めたある日、若い顧問が嬉しそうに部室に。

「漫研宛てに大会の案内来てたよー!」

来てたんかい。
っていうか今までそんなんいっこも渡されたことないぞオイ。
どうなってんねんおっちゃん顧問。

いただいた案内が「まんが甲子園」。
とりあえず予選の作品を出してみることに。

そのメンバー5人の中に、私も入りました。
3年生4人と、2年生1人の5人チーム。


いざ高知へ

出してみたら、まさかの予選突破。
本戦出場決定。

顧問がめんどくさそうに
「校長室あいさつ行くで」
というので、出場メンバーで嫌々あいさつ(笑)

そこでは参加費がひとり2万円かかると言われていたのをPTAで出してもらえること、学校に垂れ幕を出すことを言われました。
ただ、そのときの我々の意見は

「いや垂れ幕いらんから部室に扇風機買って」

もちろんその場で却下された。

そんなこんなで、5人+顧問で、本戦が行われる高知へ行くことに。


グダグダの一回戦

まんが甲子園は、お題にそったイラストなり漫画なりを制限時間内に描いて、それを審査員に見てもらって順位がつけられます。
そしてその本戦で使われるお題は事前に5つお知らせされていて、「この中から一回戦、敗者復活、決勝戦とで3つ使われます」とのこと。
要するにどんなものを描くかは事前に持ってこいよ、ってことですね。

結構日にちあったのに、なんと5人が集まって作戦会議できた回数、ゼロ。ほぼ内容決まらずのまま、全員集まれたのは出発当日。
結局空港で会議、バスで会議、宿でも会議。しかも徹夜。

そんなコンディションで迎えた一回戦、敗退。
お題は何だったかしら。もう覚えてないや。

まぁそりゃそうよね。
内容ほとんど決まってなくて、その場で即興で作るから時間がかかる。
だからネタもそんなに面白くないし作画も塗りも雑。

一回戦を突破した作品を参考に、次回の作品を練り直し。
全ては扇風機のために。


崖っぷちの敗者復活戦

敗者復活戦は、渡されたお題でその日の夜12時までに宿で作品を完成させます。
宿に戻って、みんな部屋へこもって作業。

しかし我々は腹ごしらえが先。
だって晩ごはん宿が出してくれてんねんから、食べなもったいないやん。
「お前ら以外の敗者復活出る学校みんな食べてへんぞ」
という顧問のお小言も聞き流しながら飯をかっこんで、いざ作業。

ちなみにお題は「change」。
もらったボードに向かって全員であーでもないこーでもないと鉛筆を走らせる。

さすがに心配になったのか、顧問も参上。
特に手伝えることはないのですが、横で観戦。
「これおもろいやん」とにやにやするのを見て「よっしゃウケた」と手ごたえを感じてさらに筆を進める。

作業中、ちょこちょこと新聞の取材がいらっしゃいました。
ひとり回答者にまわしつつ、こっちは作業。
それが繰り返されること数回。
最後の方は思わず「また来たん!?」と声を上げる大人げない私。
「そんなん言いな!」ととがめながら手を動かすメンバー。
「ごめんねぇ」と苦笑いの記者さん。
当時は本当にすみませんでした。

そしていつの間にか12時。
大会の方が部屋にボードを取りに来ます。

作品をお渡ししてグッタリする我々の横では、顧問がいびきをかいて寝ていました。
おいおっさん、一応ここ女子高生の部屋でそこ女子高生の布団やぞこら。

さすがに追い出して、全員風呂に入ったりなんやかんやで夜中にやっと就寝。
ほぼ徹夜2日目。つらい。


もう帰って寝たい

次の日は朝からまた動きます。
決勝は午後からなのですが、我々は敗者復活の結果発表があります。
ふらっふらの体を起こしてとりあえず会場へ。

敗者復活の結果発表は一回戦や決勝と違い、屋外の市場的なところで行われました。
全員の作品が貼りだされ、周りにはギャラリーが多数。
その前に学校ごとに並んで座っていた我々は、すでにひんし。

ちなみにこの「change」のお題のときに描いた作品は、女子高生が当時流行っていたギャル文字でのメールの打ち方を親世代やジジババ世代に教えているという内容。
おじさんやおばさん、それ以上の年齢の人たちが小さい携帯電話に向かって一生懸命になっている様子を描きました。
間違って電源切っちゃったり、片手で持って反対の人差し指でポチポチさせたり、ちょこちょこ小ネタをはさんで楽しかった気がします。

結果発表。
審査員が通過した学校を1校ずつ読み上げていきます。
通過できるのは全部で5校。

1校、2校と呼ばれていく中、我々の脳内は「布団に入りたい」。
3校、4校と呼ばれ、さぁ布団が目の前と思ったそのとき

「大阪府立松原高校」

全員ポカン。
当時の部長(に無理やりにしていた同級生)へ通過のタスキがかけられ、タクシーへ。

HPがほぼない状態で、果たしてまともな作品は描けるのでしょうか。


ハイテンション!決勝戦!

とりあえず出れるなら出ねば。
我々は賞金で扇風機を買わねばならぬ。

決勝のお題は「偽装」。
我々の表情がやっと明るくなりました。

実はこのお題が1番ネタがかたまっていたもので、しかも設定したキャラクターへの愛着も強かった。
それが決勝に出たもんだから、全員ヤル気MAX。
HPを気合で補っていました。

とはいえ一回戦敗退の思い出があるので、構図やら何やらは全部決めなおし。

「心の偽装」ということにして、バレンタインに好きな男の子へ頑張って作ったチョコレートを渡すも、素直になれないツンデレ女の子を描こうということになっていました。
女の子のデザインは決まってる。セリフも決まってる。構図どうする?背景は?
その場でせっせと決めていきます。

ちなみにこのときのキャラデザは私が担当していまして。
全員から「お前のデザインやからお前が下書きな」と言われ、前半はほぼソロプレイ。
全員が弁当を食べてる横でひとり作画。

「なぁ私もおなかすいてんけど」
「時間ないからはよ描いて」

仕方がないのでせっせと描いては全員に見せてお直し。

やっと下書きが終わって、ボードを他のメンバーに託して私ようやくごはん。
だがしかし

「時間ないからはよ食べてや」

私仕事したやん!飯ぐらいゆっくり食わせ!!(´;ω;`)ウゥゥ

あーでもない、こーでもない、と、また練りながら描いて、ネタが出たらそれも描いてを繰り返し、なんとか完成。
ちょっとだけ時間に余裕があったので、全員で作品持って記念撮影。

そういえばその写真、どこいったのかしら……?


人生での自慢

グッタリとしながら聞いた結果発表。
残念ながら3位入賞できず。賞金なし。
横にいたともだちいわく、私そのときめちゃくちゃ悲しそうな顔してたんですって。

ただ、ありがたいことに入賞は果たせまして。
「全日空賞」をいただきました。

うわー!もらえたー!入賞したー!!

と嬉しい気持ちはあったのですが、すでにHPがゼロで。
このあとステージでお話聞いたり聞かれたりしたんですが、なんかうろ覚え。

ただ、ひとつ今でも鮮明に覚えてることがありまして。
当時の審査委員長だった、アンパンマンでおなじみのやなせたかし先生のコメントです。

「女の子の表情がとてもいい。きっとこれは何度も描き直して、苦労したんだろう」
「あんたのためじゃないと言いながら、手にはたくさんのばんそうこうがありますね。嘘がへたで可愛らしい」
「気持ちに嘘をついている感じがすごく伝わってよかった」

どえらい有名な先生に、自分が(ひとりでじゃないけど)描いた作品ほめてもらってるよ。スゲェ。
しかもちゃんと伝えたかったこと伝わってるよ。拾ってくれてるよ。

と、感動。

あと、先生ごめん。
その表情1回しか直してない。

扇風機は買えませんでしたが、全日空の商品券をもらったので、系列のホテルのカフェで高校生には高級なケーキセットをいただきました。おいしかったです。
あとそのおつりで文化祭がゴージャスになりました。
上出来だったんじゃないかしら。


思い出にすがる

私、実を言うと、自分の作品が評価されたことないんですよ。
小さい頃に地域かなにかのイベントでちょこっと張り出されたくらいで。
ある程度本格的に描き始めて出したコンクールやらコンペでは、入賞どころかかすりもしない。

たまーに落ち込むこともあるけど、でも、このときの経験があるおかげで、なんとか保ててる感じがあります。

もちろん私ひとりの作品じゃないから、厳密にいうと違うのかもしれないけど。
でも超有名人に評価してもらったこととか、描いてるときの楽しかったこととか思い出すと、また描こうかなって思えるんですよ。

お仕事で描かせてもらったときは、お客さんが喜んでくれるし。
SNSとかでたまーにコメントくださる方もいらっしゃるし。

大きなところで評価されることは全然ないけど、そんな感じで、今後もまた頑張っていこうかな、って思います。


ちなみに

予選に出したかっぱの絵。
審査員の方から

「かっぱが小さいかっぱを食べていることで、メッセージ性を感じる」

的なコメントをいただきましたが、我々そんな深く考えてません(笑)

「かっぱってゆーたら何やろ?」
「かっぱ寿司?」
「おぉ、ほなかっぱの寿司にしよーぜ」
「エェやエェな!ほんでかっぱぎょーさん描いて数で勝負したろ!!」

そんなアホな若いノリで描いたネタです。

やっぱり芸術って曖昧ね!(* ´艸`)


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