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【Amazonブックレビュー】「看護覚え書ー看護であること看護でないことー」フロレンス・ナイチンゲール著

本書は今から160年前、1860年ナイチンゲール本人によって書かれた書で、初期のほうの著作にあたる。看護師という制度を作った人物で、そういう制度ができる前の医療、薬物療法が幅を利かせていない頃の、とくにイギリスの医療・看護の状況がリアルにわかって興味深い。

わたしは最も身分の低いとされた看護という業務を徹底的に専門職として高め、医師と同じ位の地位(医院によっては医者以上か?)にまで引き上げたナイチンゲールを高く評価し尊敬している。そして歴史上の偉人は往々にして、支配者層やあっち側に尽くす人物が多いが、ナイチンゲールに関する論評や書物に触れていると、どうも現状を徹底的に批判考察し、観察と直感に基づく現場、人間の心の充足を最優先するこっち側、医療批判側の人間に思えてしょうがない。

その最たる例が、本書62ページの感染症に対する考え方である。こんにちあらゆる病原菌はどこからか持ち込まれ感染によって蔓延るとされ、病原菌は単一で不変、コレラ菌はコレラ菌、チフス菌はチフス菌でそれぞれがそれに応じた症状を引き起こすと教え込まれているが、彼女は現場の観察からそれに異を唱える。すなわち天然痘も腸チフスも不衛生で人が密集した環境で自然発生し、病気も「熟成」して他の病気に変異していくと主張する。

20世紀に入ってから、日本の千島喜久男博士が、病原菌の自然発生を顕微鏡観察によって発見し、病態の変化や赤血球の万物への変化を主張したが現代医学によって弾圧された。

昨今の新型コロナ騒動により、ワクチンや感染症、現代医学に懐疑的な人が増えて来ている。中にはウイルスは存在しない、感染症すら嘘という意見もあり鵜呑みはできないが、もう一度、医学の真相を観察、臨床ベースで再構築する時期に来ていると思う。現代医学が真実ならもっと病人が減って然るべきであり、病気の数も減少していくはずだ。

ナイチンゲールに戻そう。本書を読んで最も彼女が訴えていたのは、空気の重要性。すなわち換気である。本書は澱んだ空気こそが病気を生むとさえ読める。興味深いのは薬を使わない代替医療の世界では有名な真弓定夫医師が晩年、食事や水に加えて、空気の重要性を訴えていたことに重なる。

当時の暖房源が薪や石炭など一酸化炭素を発生させる点を差し引いても空気の重要性が健康や病人の回復に直結しているという彼女の主張は薬物療法、ワクチン一辺倒になった現代医学を見直す意味でももっともっと注目されていいと思う。

ところで、天然痘など感染症の撲滅や減少はワクチンによるものではなく、上下水道や住空間、労働環境などの向上の結果だということが盛んに言われるようになった。本書の産業革命後の労働者階級の劣悪な暮らしと病気の発生をイメージしながら考えるとさもありなん。ワクチンによって免疫力が仮についたとしても環境が劣悪なら病気は防げないと思った。

現代医学を見直す上で、非常に示唆に富んだ好著と言えよう。もはや古典ではなく最先端と言っていいのかも知れない。

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