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【ドラマ感想】ドラゴン桜(2005年放送)

人生を人任せにしないで、全力でチャレンジした経験はあるか。

そう聞かれて、見栄を張るでもなく、言い訳をするでもなく。自分自身に対して、まっすぐに答えを返せるだろうか。

答えに詰まった方は、このドラマを見て耳が痛くなるか、ハッとさせられるか…ひょっとしたら、前に進む勇気を持てるかもしれない。


弁護士の桜木が倒産処理案件として引き受けた龍山高校は、偏差値36のバカ学校。どの生徒も勉強に身が入らず、教師は保身ばかりでパッとしない。理事長は教育や経営に興味がないうえ、ブランド好きで浪費癖があり、金庫に残された資金も残りわずか。初めは粛々と片づけようとしていた桜木だが、元暴走族という過去を書き立てられ、仕事がなく水道を止められるほど貧しい自らの窮状を打開すべく、一計を案じる。

龍山高校に特別進学クラスを作って、1年間で東大合格者を5名出す。

教師はこぞって反発して足を引っ張り、生徒はヤジを飛ばすか白けるかして反応しない中、桜木は矢島と水野に目をつけて辛抱強くアプローチする。

そんなの、うまくいくわけがない。

最初は特進クラスに渋々参加した井野と生徒たちだったが、何度も衝突しながらそれぞれの事情と向き合っているうちに、気持ちが変わっていく。

・一つのことを極めようと愚直に努力できる人間には、東大に合格する素養がある。

・だから、バカとブスこそ東大へ行け。

・人生を変えたければ、社会のルールを作る側に回れ。

・5日しかない、じゃない。5日もある、だ。

・世の中には、勝手に理由を作って、勝手に決めつけて、勝手に諦める連中が多すぎる。

・自己流で通用すると勘違いしてるからバカなんだ。基本の型をものにして初めて、オリジナルが作れるんだ。

・生半可な気持ちで人助けなんてできるもんじゃない。自分のケツは、自分で拭け。

桜木は厳しい。徹底して来る者拒まず去る者追わず、井野にも生徒にも優しい言葉をかけない。ほとんど褒めもしない。バカ呼ばわりして突き放し、自分の弱さから目を逸らすこと、努力しない言い訳を作り出すこと、自分の課題と他人の課題をごっちゃにして自分自身に対する責任を放棄することを許さない。

一方で「見込みのある人間にしか声をかけない」という姿勢は一貫してブレず、ハードルの越え方がわからずに苦しんでいる者には、彼なりのやり方で手を差し伸べようとする。矢島の借金、水野の母親、緒方の濡れ衣、香坂の嫉妬、奥野の卑屈さ、井野の英語教師としてのプライド…一つ一つのエピソードが涙と笑いありの真剣勝負であり、途中で何度も躓いて誰かが離脱しそうになりながらも、彼らの内側には少しずつ健全な自己肯定感が育まれていく。

桜木の厳しい言動、東大合格のために用意された個性的で最強の講師陣、生徒を支える親。やがて教師と生徒たちの間には強い絆が生まれ、東大受験合格という目標に向かって互いを鼓舞し助け合いながら、悔しさをばねに、必死に食らいついていくのだった。

単に勉強方法が参考になるだけではなく、厳しさの中に名言が光る、受験生とその家族なら見て損はない良質なエンターテイメント。


誰よりも努力しているのに点数が伸び悩む矢島、泣きながら戦線離脱した水野の孤独な戦い、不合格に終わった小林の悔し涙、そして全員合格してほしいと切に願いながら叶わなかった桜木の、心の涙が印象に残った。受験がメインで、生徒の恋愛話があまり絡んでこないところが見やすくて良い。

テストの正解は1つしかないが、人生の選択肢における正解は1つではない。

それも、正解だ。

ドラゴン桜の前で生徒たちに語り掛ける桜木と、自分の手で人生を切り開くためにいまだかつてないチャレンジを終えたばかりの生徒たち、井野の万感の思い。仲間とともに勉強漬けになった1年間は、生徒たちのかけがえのない青春である。清々しいラストだった。


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参考HP:https://www.tbs.co.jp/tbs-ch/item/d1359/

番組名:「ドラゴン桜」(全11話)※2005年

主題歌:「realize」(melody.)

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