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障がいがあっても、マイナスではない。

IT大手のBIPROGY グループの特例子会社として、2.82%という非常に高い障がい者雇用率を達成しているBIPROGY チャレンジド株式会社。橋本社長が取った障がい者従業員のパフォーマンスを最大化するための新たな施策とは。その秘訣に迫る。


新たなリーダーとして

BIPROGYチャレンジド株式会社で代表取締役社長を務める橋本和昭氏は1990年に新卒で日本ユニシス株式会社(現BIPROGY株式会社)に入社し、システムエンジニアとしてキャリアをスタートさせた。以来、橋本氏は新たなサービスの立ち上げや事業の企画推進など、多岐にわたる仕事を手掛け、25年以上にわたりBIPROGYの成長に貢献してきた。

しかし、橋本氏の人生に大きな転機が訪れる。突然の脳梗塞により、第一線から退くことを余儀なくされたのだ。復帰後は人事部門に異動し、健康経営の推進や障がい者雇用に携わることになった。

これらの経験から、病気や障がいの有無に関わらず誰もが働きやすい職場環境を構築することが、企業の持続的な成長に不可欠であると認識するようになったという。人事領域でキャリアを重ね、2023年10月に橋本氏はBIPROGYチャレンジドの代表取締役社長に就任した。

未来を開く3つの扉

BIPROGYチャレンジドの事業は、「Webアクセシビリティ診断サービス」、「屋外農園の運営」、「ヘルスキーピング」の3つの事業を展開している。

まず、Webアクセシビリティ診断サービスでは、誰もがアクセスしやすいウェブサイトを構築するためJIS規格に基づいた診断や改善レポートを提供し、ウェブの利便性を高めるための支援を行っている。障がいのある社員は実際の検査や改善点の整理、報告書の作成等に主体的に携わっており、その成果は顧客からも高く評価されている。このような取り組みは、2024年の障害者差別解消法の改正に伴い、すべての人に等しくウェブサイトの情報を保障することが求められる昨今において、対応すべき需要が高まっているといえる。

次に、屋外農園の運営では、知的障がいや精神障がい等の様々な障がいのある社員が農作物の栽培や収穫に取り組んでいる。この事業は、障がい者が自分のペースで作業できる環境を提供し、個々の特性に合わせた働き方を生み出している。さらに、収穫した農作物は社員食堂での提供や社会貢献活動に参加した社員への返礼品に活かされている。今後の展望として食品流通会社の協力を得て外販を計画している。

そして、2023年から豊洲本社にあるマッサージルームにて、新たにヘルスキーピング業務を開始した。この取り組みは、BIPROGYグループ全体の「健康経営」の一環として展開されており、社員へのリラクゼーションを通じて、社員の健康維持に大きく貢献している。この事業においては国家資格を所持する視覚障がいのある社員が活躍している。

これらの事業に共通しているのは、BIPROGYチャレンジドが障がい者一人ひとりの能力や個性を尊重し、適切な環境で働くことができる場を提供している点である。各社員が自身の役割を自覚し、組織全体の一員として貢献している。

個性を活かす、新しい働き方

BIPROGYグループは、2024年6月時点の障がい者雇用率が2.82%に達しており、法定雇用率(2.5%)を大きく上回っている。これは障がい者雇用を単なる義務ではなく、重要な経営課題として取り組んでいるからこそである。2021年の中期経営計画からグループ全体で法定雇用率に0.1%を上乗せする目標を掲げており、今後も障がい者の雇用機会をさらに拡大していく意向だ。

BIPROGYチャレンジドの働く環境で特筆すべきは、特例子会社では非常に珍しい、完全フルリモート勤務を導入している点である。これは、社員が地理的な制約に縛られず、自分の働きやすい環境で最大限にパフォーマンスを発揮しながら働くための配慮だ。加えて、地方の障がい者の雇用創出にも寄与している。

このようなリモート環境での働き方でも安定的に就労できるよう、コミュニケーションの重要性を十分に認識して施策を取り入れている。毎朝行われる「朝会」では、障がいの有無に関わらずWebアクセシビリティ事業部の全員がオンラインで集まり、仕事の段取りに加え、体調やタスクの確認を行っている。これにより、リモートワークの中でもチームの一体感が保たれ、安心して業務に取り組める環境が築かれている。

こうした取り組みは、内閣府が毎年発行する『障害者白書』にも掲載され、高く評価されている。BIPROGYチャレンジドでは、日々のコミュニケーションが企業文化の基盤となっており、すべての社員が共に成長し合う環境がしっかりと整備されているのである。

未来への広がりを求めて

橋本氏の今後の目標は、BIPROGYチャレンジドの事業をさらに拡大し、障がい者の活躍の場を広げることである。現在、BIPROGYチャレンジドでは3つの事業を展開しているが、それだけではまだ足りないという。特にアウトソーシングやオフィスサポート業務への進出を計画しており、これによって職域をさらに拡大し、より多くの障がい者に雇用の機会を提供することを目指している。

また、障がいのある社員の待遇を向上させるために、社員の育成とサービスの高度化を図ることで貢献度を高めることが重要だと語る。特にWebアクセシビリティの分野では、単なる検査業務に留まらず、コンサルティングやより専門的なキャリアパスを提供することで、社員のモチベーションを高め、長期的なキャリア形成を支援していく方針だ。橋本氏の言葉を借りれば、「障がいがあっても、それが人生のマイナスにならない世界をつくりたい」。

橋本氏の信念と行動が、BIPROGYチャレンジドの成長と障がい者の未来を明るく照らしている。今後もBIPROGYチャレンジドは、橋本氏のリーダーシップのもと、社会に新たな価値を提供し続けることだろう。


酒井 / 橋本氏 / 芳賀氏



ライター情報

氏名:酒井躍(サカイヤク)
所属
:明治大学大学院2年
経歴
:大学3年の時にメディア系インターンでの活動をスタート。これまでに100を超える経営者や政治家などに取材を実施。また、SNS総フォロワー10万の就活アカウント「ただの元人事」の企画・運営に携わる。現在は、学生団体Uni-Futuresの共同代表として、Webメディアの制作やイベントの企画運営などを行なっている。
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