起こったことは政変だった・香港2020
香港で起こったことは政変だった。
私が知る限りでは『香港デモ』と呼ばれていてはっきりと『政変』と呼んだり書いたりしたところを知らないが、その時に香港に根を下ろす気で１０年以上住んでいた私が呼ぼう。あれは政変だった。
もはや法の体をなしていない弾圧法律の成立『国家安全維持法』
施行2020.7.1
上記の成立をもって、言論の自由があった香港は終わった。誰が終わらせたかというと、発端はある香港人の若者が、台湾を旅行中に自分の恋人を殺害し、台湾で出頭せずに香港に逃げ帰ったことだ。
「逃亡犯条例」発端の殺人事件容疑者が出所、香港と台湾が対立
この「逃亡犯」を、どこに送り裁くことにするのか、香港政府はこの事件をきっかけに「逃亡犯条例」の改正を提案し、中国本土に送ろうとした。
これに激怒したのが一般的な「香港は香港だ」「香港は一国二制度のもと高度な自治を保障されている」と考える香港市民。逃亡犯を中国に送り裁判してもらうならば、それって香港には司法権が無いと認めてしまうことになりますからね。
香港で最大規模のデモ 中国本土への容疑者引き渡し案に反対
私としては、非暴力でデモ行進をしているうちは、なんのひっかかりもなく共感できましたが、お互い、お互いの反対派の意見を表明するお店や施設の窓ガラスを叩き割ったりするようになり、ちょっとそれは違うんではないか、と民主派のはねっ返りの人たちにも感じたのです。自分と意見が違う人間を物理的に攻撃して良いとなったら、その香港民主派の人たちだって、自分が蛇蝎のごとく嫌っている弾圧的人権蹂躙的中国政府と同じことをやっていることに気づいて欲しかったと思います。
例を挙げると、香港にはレストランチェーンまで経営する大きな洋菓子チェーン店・美心（メイサム）という企業がありますが、ここのトップの年配女性はゴリゴリの中国派で、「デモにいくような学生はみんな頭がからっぽ」とかひどい言葉で民主派たちを煽りまくりました。この美心グループは、日本から吉野家運営の権利を買い、香港での吉野家はすべてこの美心グループによって運営されていたため、吉野家も民主派敵とみなされ、路面店のガラスはすべて大通りに向かって叩き割られました。しかしここで再度ガラスを入れるかというと、入れない。なんと鉄板をいれました。『鋼鉄吉野家』などがトレンドキーワードになりました。日本だったらこの対応はできないだろうなあと、どっちも筋金入りだなと思った次第です。
鋼鉄吉野家↓
https://twitter.com/livein_china/status/1190875998457225216
同じくMTR（地下鉄の運営会社）のカスタマーセンターのガラスが叩き割られて、窓口一枚分ガラスを入れて、残りは鉄板になったり、民主派が香港の政治家の家族は実は香港にいない、よその国に最初から逃がして会って国籍を外国で取らせている！と暴いて情報拡散したり、攻防についてはいろいろありますが、そんなことをやりあっているタイミングで、コロナ（Covid）が流行り始めました。
香港（と中国政府）は、コロナ拡大防止のために集会等を禁止、民主派がそれに従っているうちに、素早く、冒頭の『国家安全維持法』をたった半年で禄な審議もなくさっさと成立させてしまいました。実質的に「過去に遡って、世界中の人間に適用される言論弾圧法」です。
この『国家安全維持法』がいかに狂ってるかと言いますと、普通、法律って
「（わざわざ明記されなくても）日本国内で」「施行日から」「〇〇という具体的なことをしたら罪になりますよ」という三拍子があってまともな法律足りえているのですが、この国家安全維持法にはそれらすべてがありません。
①世界中の人に適用します
②（法律施行日よりも）過去の行いにも遡って適用します
③しかし罪状は「国家の安全を脅かした時」でなにが脅かす行為なのかは
具体的に列挙されていないため、なにが罪の行為に当たるのかわからない
香港・国家安全維持法の重要ポイントまとめ
はっきりと香港からは言論の自由がなくなってしまい、その背景には、政変があった。
私たちは夫・私・娘２人の一家四人が全員香港永住権を取り、娘たちは香港で大学へ行かせる気だったが、とくに私が、言論の自由がないと知るだけで日々香港で生きることがものすごく息苦しくなってしまい、私たちは別の国に引っ越して子供を育てることにしたのです。
なので私は、この出来事は将来『香港事件』とかの名前で教科書に載ると思うし、載せてほしい。そして教科書に出てくるレベルのことが自分の人生に関係して、自分が子供を連れて逃げるように引っ越すなんて、ゆめ思いませんでした。そして大好きな香港が変わってしまい、離れざるを得なくなってから、こういう文章がかけるまで、自分の考えが落ち着くのに4年かかりました。
2024.2.10
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