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国際高等専門学校 見学レポート その2

 こんにちは!キャリア・アウェイクナーの金澤です。

 今回は国際高等専門学校の見学レポート第2弾。国際高専の先進的な取り組みについてご紹介します。学校見学、学校パンフレットに加え、ルイス・バークスデール校長のインタビューを元に、金澤流に紹介していきます。

 見学レポート第1弾はこちらからどうぞ:


日本の理工学の課題と改善提案

 従来の「理工学」というと、数学・理科を軸として、理系バリバリのイメージがあったかと思います(あ、私のイメージですが 汗)。

 課題として、

・ 日本では仕事があるが、世界では通用しない

・ 言われたことはできるが、クリエイティブにはならない

・ 理系イメージが強すぎて女性が少ない

・ 大学から始めると、期間が短くて基礎研究までで終わってしまう

 などがありました。

 そこで、これらの課題を根っこから解決するために新しく作られたのが、この国際高専です。

前身は実績に定評のあった従来型高専

 第1弾でもご紹介しましたが、この学校は金沢工業大学の付属で、もともとは金沢高専という従来型の高専でした。石川県には金沢高専と石川高専(こちらは国立)の二つの高専がありますが、金沢高専は大学進学実績も高く、非常に定評のある学校でした。母体の金沢工業大学も、就職率が極めて高いことで有名な大学です。別にうまく行っていないから変えよう、という話ではないんです。

 冒頭で書いたように、日本の工学界が持つ課題を解決し、より産業界に貢献できる人材を育成するため、思い切って改革を進めようと作ったのが国際高専です。

 ただのエンジニアではなく、イノベーションを起こせる人材を育成することを目標に、様々な工夫を凝らして学校を作り上げています。

「9年一貫教育」でイノベーターを育む

 従来の高専は、5年一貫教育で大学受験をせず、本来の勉強に専念する教育環境で、日本の産業界の即戦力を育成することがゴールでした。しかし、バークスデール校長が力を入れて仰っていたのは、この学校で育成していきたいのは ”Leaders of Global Innovation” である、ということ。

 本気でこの目標を達成するためには、最初は全寮制である必要がある(注:1年・2年次は今回ご紹介した全寮制キャンパスで過ごす)。1年間の海外留学をする必要がある(注:3年次に全員がNZに1年間留学する)。英語を話せるレベルではなく、英語で議論や研究を進められる必要がある。さらには、この後の項でご紹介するEnglish STEMやCDIOも必要。

 そして、何よりこの目標達成のためには5年では足りないと考え、国際高専では「9年一貫教育」を掲げています。これは、高専の4年・5年次に、隣にある金沢工業大学(注: 4年・5年次は金沢市内のキャンパスに移る)の授業を受けたり、大学生と共同研究に取り組んだりします。

 高専卒業後は、他の大学も選ぶことはできますが、できれば金沢工業大学の3年に編入して、学習の継続性を持たせてほしいとのこと。そして、修士まで一貫して研究を行い、卒業後はできれば起業してほしい、とまでバークスデール校長は言います。

 起業をゴールとした9年一貫教育。今後の日本にとって、この考え方で行われる教育は、きっと非常に重要になると感じました。

※こちらが国際高専のパンフレットに載っていた9年一貫教育の図

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English STEM、CDIOという世界標準工学教育

 カリキュラムを拝見すると、原則として大部分の授業が全て英語で行われます(英語ネイティブの生徒は日本語で授業が行われるものも)。STEM教育(Science, Technology, Engineering, Math)という言葉は、ここ数年で日本でもかなり広がってきた教育内容ですが、国際高専ではEnglish STEM教育を掲げ、これを全部英語で行います。

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 さらに、授業スタイルはCDIOという、36カ国・130以上の大学で実践されている工学教育の世界標準と採り入れています。CDIOとは「考え出す」「設計する」「実行する」「操作・運用する」の4つの頭文字で、日本で取り入れている学校はCDIOホームページによると2大学(北海道情報大学・金沢工業大学)と6高専(私立の国際高専、国立の木更津工業・長野・長岡工業・仙台・津山工業の各高専)のみです。

※CDIOの説明はこの金沢工業大学のページがわかりやすいと思います

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 実際に授業風景も見学しましたが、いわゆるアクティブラーニングが一般的で、講義形式の授業はごくわずか。常に生徒たちは頭を動かし、考え、デザインし、それをディスカッションしながら前に進めていく、という授業スタイルで育っていきます。

 そんな世界標準のカリキュラムと、英語漬けの授業。これらは全て、この学校を出たら世界で活躍できる人材になるように、という想いが込められたものです。

全寮制ならでは、の生活サイクル

 これは国際高専の学校パンフレットに掲載されていた、「学生の一日」。なかなかハードですよね〜(^◇^;)

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 100分授業で1日4コマ、夕食を挟んで夜はリビングコモンズで「ラーニングセッション」があります。私が見学した際には、何人かで集まって勉強をする人、一人で音楽を聴きながら集中して取り組む人、教師と1対1でプログラミングについて個別指導を受けている人など、思い思いの学習に取り組んでいました。

※リビングコモンズでの夕食後の一コマ

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 この教師と生徒の関係性、生徒と生徒の関係性の濃さは、全寮制ならではのもの。ここで2年間を一緒に過ごした仲間は、掛け替えのない大切な存在として、学生の時だけではなく社会に出てからも、きっとつながりを持っていくのだろうと思います。


 2回に分けて、国際高等専門学校をご紹介しました。私が知る限り、日本国内でも最先端の教育理念とカリキュラムを持った、素晴らしい学校だと感じています。

 こちらの記事を機会に、子どもの今後を考えるきっかけにしていただければ嬉しいです!




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