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Monami

青白い肌、
縦長の瞳孔、赤い虹彩

その色は命の熱を表しているのか
それとも命の残り火なのか

普段、闇の中で活動する彼とは
会える時間はすれ違う
昼間私に残す文ひとつ
今日もどうか息災で。と

梅干しご飯一膳
味噌汁、香の物
彼が寝る前に用意してくれた朝餉

丁寧に畳まれた着物
外套はハンガーに掛けてある

彼が眠る時間
その眠りの邪魔にならないように
私は静かに着替えを済ます

いつだって目が合う時は
人懐こく笑んでいるような気がした

彼の言葉は誠実で、
自分には勿体なかった

でもある日のこと、
私が気付かぬうちに
彼はどこかへ行ってしまった
彼が暮らした形跡を消して

青白い肌、
獣じみた縦長の瞳孔、
赤い虹彩

真っ先に探したけれど
疾うにその気配を感じなかった
その現実を受け止め切れずに
夢を見るほど

もう一度、手を包んで欲しかった

ある日、夜空に真っ黒い蝙蝠が一羽
ジグザグに飛んでいた

どこか懐かしい温もりが、
薄く風に乗って流れて行った

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