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いじめの境界線

数年前にあった小学校の同窓会で、同級生が「Nさん(私のこと)、○○○○って言っていつもからかってごめんなー」って言ってきた。
「でも全然言い返してこないからさー」って言われてハッとした。
たぶん小学生だった彼には全然悪気はなくて、面白いと思ってちょっとイジったっていう程度だったんだろうな。
なのに私が何も言い返さないからいじめみたいな感じになって、何となく後味悪かったのかな。
何十年も経ってからわざわざ言ってくるくらいだもの。


小学校5年生の時、友だちが誰もいなくなった時期があった。

朝登校すると、机の中に「ホントはずっと嫌いだった」というような内容の手紙が入っていた。
いつも一緒にいた一番仲のいい女の子から。
訳が分からなくて動揺したけれど、周りに知られるのも嫌で、精一杯平静を装って着席した私のところに、友だちの一人がやってきて、「机の中に何か入ってなかった?」と聞いてきた。
「え?知らん。見てない」と言いながら顔を上げると、少し離れた所で数人の友だちがニヤニヤ笑いながらこっちを見ているのが目に入った。

これが始まり。

クラスの大半は休み時間になるとみんな一緒に校庭に出て遊んでいる中、私は大人しい子ばかりの5~6人のグループで、隅っこでゴム跳びなんかして遊んでいたのだけれど、この日から遊ぶ友だちがいなくなった。
「知らん。見てない」と言いながらも、休み時間にその子たちに声をかける勇気がなかった。
校庭で遊んでいる他のクラスメイトのところに行って、「入れて」という勇気もなかった。
きっと「入れて」って言えば入れてくれるんだろうなと思いながらも、その一言を言う勇気がなかった。

休み時間になるとみんな一斉に外に飛び出していく中、教室にいると先生に変に思われる。
仲間外れにされているのを知られたくなかった私は、遊ぶ相手もいないのに、毎日休み時間には外に出た。
校庭から見えるところに一人でいると、みんなにどうしたんだろう?って思われる。
考えた末、誰もいない校舎裏の方に行って時間を潰した。
長い長い休み時間。
辛い辛い時間。

学校になんか行きたくなかったけど、そんなことを言うと理由を聞かれるだろうし、親に怒られるのも怖い。
プライド高かったのかな。
先生にも家族にも誰にも知られたくなかった。
なので、誰もいない時に一人でちょっと泣いて、何事もなかったかのように学校に行ってた。


どうやって元に戻ったんだろう?
元に戻ったのかな?
仲直りしたのかな?
その後の記憶が全くない。

でも、今でも手紙を見た時のショックやみんなの輪の中に入っていけなかった時の気持ち、校舎裏から見る校庭の明るさ、みんなが遊んでいる様子、一人で泣いた部屋、そういったことは生々しく思い出せる。

あの時の私をぎゅっと抱きしめて、わんわん泣かせてあげたいと思う。
辛いことを我慢しないで、感情に蓋をしてしまわないで、思いっきり辛いって泣かせてあげたい。


よく考えてみれば、たった一通手紙を送られただけ。
積極的に無視された訳でも、嫌がらせをされた訳でもない。
手紙の内容に傷ついて、声をかけるのが怖くて、距離を置いたのは私の方。

これは・・・いじめだったのかな?

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