享受会コラム#12「ワクワクするとは」byワカP

　８年もののベンチコートで身を包み、朝なのか夜なのか分からない時間に家を出発して、ブツブツ独り言を言いながら職場まで歩いていく。こんなやつがいたら、正直近寄りたくないが、決してその男はこれから罪を犯そうとしているのではない。その男は何かを考えているのだ。深く帽子をかぶっているので表情は見えないかもしれないが、きっとニヤニヤしている。BUFのワカP(わかぴー)とはそういうやつである。

人と関われば関わるほど、たくさんのことを考えさせられる。我が家にいる小さな人間も、私に色々なことを考えさせる一人である。彼の行動や発言から、これまでいろいろな事に気づかされてきた。たくさんの面白エピソードがあるが、ここにその全てを書いてしまうと、彼の人生に多大なるご迷惑をかけてしまいそうなので、妻に許可をいただいたものに限定して書いてみることにする。

【ep 01－寝ているのか死んでいるのか】
言葉を喋り初めて間もない頃の彼に、私が「おかあさんは？」と聞くと、彼は「死んでる。」と答えた。もちろん妻は今も元気に生活していて、先日、家族で温泉に行ったばかりである。言葉を喋り初めて間もない彼は、寝ている妻を見て“死んでいる”と言ったのだ。悪ふざけではなく、ましてブラックジョークでもなく、妻の状態を見て“死んでいる”と表現したのだ。

「子どもは“死”とは何かをまだ理解していないから、そういう表現になるのか･･･。」「ん？私は、死を理解しているのか？」「“死”とは何かと言われて、私はなんと説明するだろう？」「寄生獣の泉新一は、死んだ犬は犬じゃないと言っていたな･･･。」頭の中がグルグルし始め、ブツブツと独り言が始まる。

きっと･･･。親に教えてもらったり、本を読んだり、ニュースを見たり、虫が死んだり、大切な人が亡くなったり、これまでの私の人生の中で起きた“死にまつわる出来事”によって私は死について、自分なりに理解してきたのだ。我々は、具体的な数々の事象を抽象化し、死とは何かを自分なりに理解しているのだろう。

そして、これは他のことにも当てはまる。悲しいとは何か、楽しいとは何か、ワクワクとは何か。私は、どうも色々なことにワクワクを感じるようで、よく「病気だよ。」と言われる。しかし、病気という言葉は、私の中で褒め言葉として受け取っている。どうやら、これも病気らしい。･･･ん。病気とは何か。また、脳みそが音をたてて、グルグルし始めた。

そう言えば、“楽しいとは何か”を考えさせられた、彼のエピソードがある。
【ep Final－どっきり番組】
　ようやく１人で立つことができるようになった頃の彼と一緒に、ぼんやりとテレビを見ていた。見ていたのはどっきり番組で、たしか･･･、銭湯から出てきた芸人さんに牛乳の代わりに酸っぱい飲み物を渡したらどうなるかという内容だったと思う。当然、芸人さんはそれをその場で吐き出す。そして、私はその様子を見ながらゲラゲラ笑っていた。それを見た彼は、最近つかまり立ちを卒業したばかりのくせに、どうどうとテレビの前にひとり立ちをしたと思ったら、床によだれを吐いたのである。後ろのテレビでは、芸人さんもよだれをはいていたが、全く面白くなくなった。彼は、私がテレビを見て笑う姿をみて“面白いとは何か”を自分なりに理解していたようだ。

ワクワクするとは何か。もう一度、このBUFで自分なりに理解しなおしてみようと思う。

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