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「ろうと手話」の刊行をめぐって

2021年11月17日に手話を社会に取り戻すろう者たちの運動を日本語教育と「やさしい日本語」の視点から考えた『ろうと手話』という書籍が刊行されました。

「やさしい日本語」は、たとえば外国語に翻訳するように、やさしい日本語に翻訳したものを用意するという考え方です。日本語を第二言語として習得・使用するという意味では、外国人とろう者は同様であるという著者の考え方に注目していました。

今回、NPOインフォメーションギャップバスターのプロジェクトを通じて電通さんおよび著者と親交があり、その関係で帯コメントや対談の依頼がありました。「やさしい日本語」の関係者や日本語教師など、手話のことを知らない人にも関心を持ってもらえるきっかけになればという動機から引き受けさせていただきました。

『ろうと手話』については、下記の通り、さまざまなご意見が出されているのを私も拝読させていただいております。私自身は、著者ではありませんが、関与した者として考えさせられるご意見がありました。

日本語教育、日本語学の社会貢献  ―ろう児に対する日本語教育を例に―
庵 功雄【PDFファイル】

ここで、NPOインフォメーションギャップバスターの立ち位置について少し説明させてください。当団体は、あらゆる社会問題に対して、多種多様なアプローチがあり、それぞれの立場を尊重するのが基本的な考え方としてあります。また、インフォメーションバリア・コミュニケーションバリアを解消する方法に正解はなく、言語・コミュニケーション方法などによっても様々な違いがあります。そのため、特定のアプローチを唯一の正解として支持するのではなく、多種多様なアプローチの中から各場面に適合したものを各自で選択できるようにすべきと考えます。また、それを可能にするためには、正しい情報、とくに当事者による意見・議論が自由闊達に行われるようにすべきと考えています。また、関連しますが、手話に関する用語についても、下記ページにある通りの見解となっています。

『ろうと手話』の内容については、関係者にも事前にチェックをお願いしたと伺っており、私の立場としても筆者の提言の内容にまで関与することはありませんでした。しかし、今回皆さんからのご意見を拝読するに、ろう者当事者によるファクトチェックや提言内容についての意見交換などが不足していた感が否めないと考えております。

今後は、あらゆる立場の人が対等な立場に立ち、建設的な議論を継続することで、手話に対する正しい理解を深め、広げていくことを心から願います。

NPOインフォメーションギャップバスターは、みなさまからのさまざまなご意見を真摯に受け止め、言語的マイノリティとしてのろう者や使用言語である手話が、社会の中で適正な評価が得られるように、また、情報アクセスやコミュニケーション手段利用の権利が守られるように今後も活動を継続してまいりたいと考えています。


あらゆる人が楽しくコミュニケーションできる世の中となりますように!