期間限定の記事です。削除する予定ですので、あしからず。
土曜日の朝、スマホのアラーム音が山村達也の耳元で鳴り響いた。
手元にあるスマホを瞬時につかんだ達也は、ベッドで仰向けのまま画面を見つめた。時刻は、午前十時十二分と表示されている。
目を覚ました達也は、二日酔いで気分がすぐれなかった。昨夜、ひさしぶりに大学時代の友人と会って居酒屋に入った。しこたま飲んで、食べたことまでは覚えている。二軒目のショット・バーでも調子に乗りすぎて、普段より飲みすぎたのがいけなかった。
達也は昨夜の記憶をたどりながら、おもむろに起きだしてベッドの端に座った。ぼんやりとしたまなざしで、見慣れた部屋を眺めた。 煙草のヤニで、若干変色しているように見える壁と天井。ところどころに、ポリ袋が散乱しているフローリングの床。どれを見てもくすんだ色をしている。
木目調のパソコンデスクにある灰皿には、煙草の吸殻がたまっている。達也は灰皿にたまっていた吸い殻をポリ袋に放り込んだ。 薄闇に包まれた部屋の中で、カーテンで閉ざされた窓から差し込む街の明かりが、カーテンの微かな隙間から室内を照らしている。
達也は、パソコンデスクに置いている煙草の箱を手に取り、指先で一本取りだすと口元にくわえた。そしてライターで点火すると、煙草を吸い始めた。 煙を静かに吐き出すと、白い煙が部屋に広がった。 煙の微かな匂いが漂い、時がゆっくりと流れているように感じられた。
達也は煙草の一服で、心の奥深くに閉じ込められた感情と向き合った。一服が終わり、タバコの灰を灰皿に落とした達也は、深いため息をついた。壁スイッチに触れて、蛍光灯を付けた。部屋は急に明るくなった。
達也は、本棚にぼんやりとしたまなざしを向ける。うっすらとホコリがかぶっているようにみえる。いつ掃除したのか思い出せなかった。一ヵ月前か。いや、それ以上前から掃除をしていないような気がした。社会人になってから、自堕落な生活が続いていることはわかっている。学生時代は喫煙者でもなく、達也はきれい好きと周囲から言われるほどの男だった。