京都市の高さ制限の規制緩和は、打ち手として適切なのか?

2023年4月25日より、京都市で建物の高さ制限の規制緩和が行われました。

▼NHKニュース(京都市 建物の高さなど規制緩和 一部地域で25日から)
https://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20230424/2000073183.html

京都市のこの意思決定について違和感があるので、高さ制限の規制緩和が打ち手として適切かを考えます。

まず、今回の規制緩和を行う背景として、以下の説明が書かれています。
「20代後半から30代の若い世代が働いたり、住んだりする場所の確保が難しいことが課題となっていて、市はマンションやオフィスを増やすため、建物への規制を緩和する新たな都市計画を策定しました。」
「市中心部の住宅価格が高騰し、オフィスも不足。子育て世代や企業の市外流出が課題になってきた。」

・市の中心部の住宅価格が高騰。
・それに伴い、オフィスも不足。
・結果として、人口や企業の市外流出が起きている、とのこと。

人口流出し、企業も流出し、その理由が市中心部の住宅価格上昇だという。
しかし、「住宅価格の上昇」を防ぐソリューションとして、本当に高さ制限の規制緩和は適切なのでしょうか。

■高層マンション供給量を増やしても、住宅価格は下がらないのではないか
通常、住宅価格の上昇は「需要の増加」「供給の減少」またはその両方によって発生します。
シンプルに言うと、住む人が増える、住む家が減る、と住宅価格が上昇します。
京都市の住宅数と人口を確認してみましょう。

▼京都市の総住宅数と人口・世帯数の推移データ

平成30年住宅・土地統計調査「住宅及び世帯に関する基本集計」

京都市は人口が横ばいで、世帯数は増加し、総住宅数も増加し、空き家率が10%を超えています。
京都市は住宅数が減少しているわけではないので、人口が増えない限り、通常、価格は上昇しません。
つまり、何が言いたいかというと、住宅価格の上昇は、高さ制限による供給量不足が原因ではないと考えます。
その証拠に、東京では、人口が増加し、住宅供給量が増え続けているにも関わらず、住宅価格は上昇を続けています。
そこから考えられることは、高層マンションなどの供給量を増やしても(購入者がいる限り)住宅価格は下がらない、ということです。
住宅価格の上昇は、中心部の住宅供給量不足が問題ではないはずです。

■では、他に考えられる要因は何か?
私は、住宅供給量が問題なのではなく、京都の需要量(住宅を買いたい人)が多いことが主な要因だと考えています。
つまり、需要サイドを抑える施策を打たない限り、市の中心部の供給量を増やしても住宅価格の上昇は続くと考えます。
具体的には「購入者に条件を設ける」「購入者の税率を高める」などです。

■結論
私が、今回の意思決定で一番問題だと思うのは、問題に対する「打ち手が適切ではない」点です。
住宅価格の上昇がなぜ起きているのか、の分析が甘く、短絡的に「高層マンションによる供給量増加」という解決策を選択したように感じます。

もしも、それらを理解した上で、今回の意思決定がされていたら残念です。

京都市の住宅価格が下がるのか、5年後に答え合わせをしてみましょう。

おわり

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?