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オークスは女子高生がいきなり過酷なマラソンに挑戦するようなもの。〜名ジョッキーの本を読んで考察中。
イメージを膨らませ中。
今週末は3歳牝馬のクラシック第2戦、オークス(優駿牝馬)が東京競馬場2400mコースで行われます。(トップ画像は2015年オークスのパドック。写っているのはレッツゴードンキ。)
NHKマイル、ヴィクトリアマイルと個人的にG1連敗中。笑。
オークスは何としてもとって翌週のダービーにつなげたい気持ちです。
ということで、一度頭の中をリセットし、「オークスってどんなレース?」というところを、名ジョッキーの本を読みながらイメージを膨らませています。
まずは、この2冊の本。
![](https://assets.st-note.com/img/1652942961683-NrtO6rZjc5.jpg?width=800)
(右)蛯名正義「正義の競馬」2002年発行
同期の名ジョッキー2人が振り返る1999年のオークス
武豊騎手と蛯名元騎手(現調教師)は1969年生まれの同い年、騎手デビューも1987年の同期。
先日、今年開業したばかりの蛯名厩舎の馬に武豊騎手が乗り、この調教師・騎手というタッグで初勝利を挙げたのは記憶に新しいところ。
このふたりが、それぞれの本で、1999年のオークスについて触れています。
まず、武豊騎手は、結果的には2着に終わったトゥザヴィクトリーに乗り本番に臨む前にこう語っています。
この時期の3歳牝馬にとって2400mという距離はあまりにも過酷な条件です。桜花賞から一気に800mもの距離延長は、ほとんどの馬にとって未知のものであり、どんな展開になるのか想像することも難しいレースなのです。
まして、3歳の牝馬は人間でいえば16歳か17歳の女子高生ぐらいの段階です。肉体的には成長していても、精神面ではまだ大人になりきれないアンバランスな時期ですから、何が起こるか本当に分かりません。
トゥザヴィクトリーはのちにエリザベス女王杯に勝利し、ドバイワールドカップ2着、有馬記念3着するなど、スタミナたっぷりの女傑でしたが、3歳春のこの時点では前走の桜花賞で3着しているとはいえ、一介の2勝馬(であり、女子高生)。
武豊騎手も、「チャレンジャーの立場で、強豪馬たちに胸を借りるつもりで頑張りたい。」と語っています。
一方で蛯名騎手。
こちらは勝ったウメノファイバーに騎乗。
レースを回顧する形となりますが、このように書いています。
僕が乗ったウメノファイバーは18頭建ての7番人気。単勝が17倍近い配当だったから、事前の評価は決して高かったとはいえない。芝2400mに対する、彼女の距離適性が疑問視されたためだ。
父が2000mまでがギリギリ守備範囲のサクラユタカオーで、彼女自身もマイル前後の距離に良績が集中している。(中略)2400mとなると、正直なところ不安の方が先に立った。
「不安が先に立った。」蛯名騎手ですが、戦前に白旗を上げていたわけではなく、「わずかながら希望はあると思っていた。」と綴ります。
その根拠は、ウメノファイバーの人柄、いや、馬柄(?)。こう書いています。
血統やレースぶりから考えれば2400mは長い。反面、彼女は折り合い面での不安が少ないタイプでもある。乗り役の指示に、実に忠実に従う、素直でまじめな女の子だった。(中略)
彼女の性格の良さを上手に引き出せれば、距離はギリギリガマンできるかもしれないと思っていた。
・・こう考えた蛯名騎手がレースで心がけたのは、「ウメノファイバーのレースに徹する」こと。つまり、素直でまじめ、性格の良い女子高生に合ったレース(道中は慌てず騒がず周りに惑わされず、じっと力を溜めているイメージ?)に徹する。
いざレースでは、蛯名騎手は、潜在能力の高さがファンから支持され1番人気となったトゥザヴィクトリーを「一度も意識せずに」乗り、腹を括り、「思い切った直線勝負」に賭けます。
そのためには、何よりもスタートから最初の1コーナーまでを、いかに上手にこなせるか。ここでうまくリズムに乗れれば、その分、スタミナが温存できる。最後の直線勝負に賭けるためには、最初の直線こそが勝負だった。
そして、まさに最初の直線でリズムに乗れたことこそが、「最大の勝因」と分析しています。
・・このような蛯名騎手の心理を踏まえ見直してみましょう。(ウメノファイバーは8枠16番、トゥザヴィクトリーは3枠6番)。
蛯名騎手の直線での激しいアクション、それに応え軽やかに跳ねるように走るウメノファイバー。そして測ったかのような差し切り勝ち。トゥザヴィクトリーとの差はハナ差、わずか8cmでした。
なお、このレースについては、武豊騎手はこのように振り返っていました。
デビュー以来、最高の状態でこのレースを迎えることができました。
レースでは抜群のスタートから、内枠を生かして、馬場の内側4番手を追走。折り合いの難しい馬なので、大観衆が目の前になるスタンド前からのスタートは気になっていたのですが、前にいた馬を壁にして、何とか折り合うことができました。それでも、道中やや掛かってしまったところもあったのですが、全体的にスムーズにレースを運ぶことができたと思います。
最後の直線を向いてからの手ごたえも十分。難関の府中の坂を駆け上がり、他馬より2〜3馬身抜け出して先頭に立ったときは正直、
「やった!」
と思ったのです。(中略)
懸命に手綱をしごき、ゴールを目指したのですが、ウメノファイバーに差し切られてしまいました。
武豊騎手は、「会心の騎乗」と綴っており、「勝った馬にあんなすごい脚を使われては仕方がありません。」と振り返っています。
武豊騎手の「会心の騎乗」を上回ったこのオークスについて、蛯名騎手は「もう一度やれと言われても、できるかどうかわからない。」と語っています。
まさに名レースですね。
今年も、こんな素晴らしいレースを期待しています。
オークスはやはり、過酷なレース。
以下の本で、岡部幸雄さんがオークスについて書いている部分も参考になります。
![](https://assets.st-note.com/img/1652958298065-DB1jqJBXDT.jpg?width=800)
中央競馬の現在のレース体系では、3歳春の牝馬にとって2400mは特異な距離といえる。2000mでさえ経験したことがない馬が、2400mという長い距離を走るケースが多いわけだし、この距離を克服できるだけの体力がついていない馬がほとんどなのも実情だ。(中略)
はっきりいえば、今の日本でオークスを2400mで実施するのは苛酷だ。2000mあたりで行うのが理想だろう。その方がレースがエキサイティングになるのではないかとも思う。
実際のところ、2400m戦であっても、内容は2000m程度のレースになってしまうケースが多い。過去のレースのラップをみればわかる通り、オークスでは各騎手に、前半大事に乗ろうという気持ちが働き過ぎる傾向があり、ペースが遅くなるケースが目立つ。というわけで、スタミナの戦いになることは少なく、ポイントになるのは絶対能力と折り合いがつくかどうかという二点だ。
やはり、3歳春の牝馬にとっては2400mは過酷なんですね。
そして、ポイントは、「絶対能力」と「折り合い」の二点。
これに、蛯名騎手がウメノファイバーについて表現した、「素直」で「まじめ」で「性格の良い」馬を何とか探し出したいと思います。
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