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#4 目利きのひと

テレビやマンガ、ゲームなどを禁止されて育った小学生時代。娯楽は、図書館で借りてくる本(青い鳥文庫)と、親に内緒で買っていたファッション誌しかなく、マンガとは縁のない生活を送っていました。
そんなわたしが最初にマンガを読んだのは、多分小学6年生の時。たまたま友人に借りて読んだのがきっかけでした。友人はりぼんっ子で、吉住渉先生の『ミントな僕ら』や高須賀由枝先生の『グッドモーニングコール』、藤井みほな先生の『GALS!』、松本夏実先生の『聖♡ドラゴンガール』などなど、たくさん読ませてもらったのがとても懐かしい。

企画メシ第4回のゲストは、小学館Cheese!の編集長、畑中雅美さん。青木琴美先生『カノジョは嘘を愛しすぎてる』相原実貴先生『5時から9時まで』などの編集を担当されている、凄腕の方です。
ちなみにわたしは青木琴美先生の作品の大ファンで、『僕は妹に恋をする』『僕の初恋をキミに捧ぐ』『カノジョは嘘を愛しすぎてる』はすべて単行本を持っており、映画も全部見ていたので、お話を伺う前からずっとそわそわしていました。(僕キミは中学生の頃ハマりすぎて少コミ本誌も買っていたし、コラボした仁和寺のクローバーのお守りを買うべく仁和寺まで足を運んだりしていました。笑)

「エンタメとは何か?」

幼少期から本やマンガをたくさん読める環境にいたという畑中さん。おうちにある本棚に置ける本の冊数が限られていて、幼いころから少しずつ"良いものを選別する"能力が磨かれていっていたといいます。
「エンタメ」に関する考え方で、特に印象的だったのがこのフレーズ。

物語には二種類あって、「現実直視型」と「現実逃避型」がある。
多くの人は「現実逃避型」のフィクションを求めている。

現実直視型というのは、東村アキコ先生の『東京タラレバ娘』のような、現実味のある、現実でも起こりうる物語。きっとわたしの好きなおかざき真里さんの『サプリ』や『&』もこれなんだろうな~。
対して現実逃避型というのは、少女マンガお決まりの、「普通のどこにでもいる平凡な女の子」が「王子様」に出会って~というタイプのシンデレラストーリー。現実に起こりえないフィクションだからこそ、それによって救われる人がいる。
この発想に辿りついたのは、海外で教会に集まってくる人たちを見た時なんだそう。宗教は「壮大なフィクション」であり、それに救いを求めて集まってくる人がいると言っていて、納得しました。

編集者に必要な能力とは?

「編集者とは、目利きができる人のことである」と畑中さんは言います。

 ①目利き(おもしろい・売れるか)ができる
 ②どこが原因(おもしろくないか)がわかる
 ③改善策(どこをどんな風に改良したらいいか)がわかる

うまくいってない人は、①の段階で躓いているそう。膨大な読書量・知識量に裏打ちされた「目利き」の力があるからこそ、数々のヒット作を生み出しているんだな、と思いました。

この「目利き」の力は後に企画メシメンバーでも話題になり、わたしも何の目利きになれるか・なりたいかを模索している最中です。

真面目な宣伝=「真面目な作品」という印象

そんな畑中さんからの課題はこちら。

『虹、甘えてよ。』の宣伝を考えて下さい。

虹、甘えてよ。』は、青木琴美先生の最新作。現在、3巻まで発売中です。読んでもらったらわかると思うのですが、ちょっと普通じゃない三角関係で、宣伝を考える際にすごく悩みました。
LGBTについての考え方を取り入れ、それと宣伝を絡めてポスターにし、中学校・高校に貼って知名度を上げるのはどうか、と提案しました。自分の職場でもある"学校"と"教育"とを虹甘と掛け合わせる形で作成して、自分なりに教育的効果(LGBTの認知度を高めること)と宣伝効果(マンガそのものを知ってもらうこと)を兼ね備えているつもりでした。
そこでFBいただいたのが、「真面目な宣伝」=「真面目な作品」というイメージを持たれてしまう、ということ。社会問題を扱う、小難しい作品として敬遠されてしまう可能性があることに気付かされました。前述の「エンタメに救いを求める」「現実逃避型の作品が求められている」というところからズレてしまうと、読者は離れてしまう。
畑中さんが何度か仰っていたフレーズの中で印象的だったのが、

"清少納言(=インテリ層)が枕草子内で賞賛していた作品はひとつも残っていなくて、バカバカしいと思っていたとんでもフィクションの落窪物語や源氏物語は残っている"

ということ。確かに落窪も源氏も入試頻出の物語として、最近演習で解いたばかりで、とんでもフィクションとして生徒たちの間でも反応が良い作品なんです。(随筆や日記はつまらない、と言う子が多い)
編集は"マス"に届けられる役割を担っているから、インテリ層にこねくり回されるようなものではなくて、もっと広い世界の人たち(例えば大学に行かないような世の中の半分の人たち)にも届くような作品を、という心掛けがとても新鮮でした。

他の企画生のアイディアも面白いのが多くて、"美容室に虹甘1巻を置く"とか"自分だけの虹甘エピソードを投稿"とか、すぐにできそうでいいなと思いました。
また、男女によって全然捉え方が違ったところも面白かったです。確かに、絵柄からとっつきにくいとか、感情移入できるキャラクターがいないとか、「読まれにくさ」にどうアプローチしていくかは今後の課題でもあるよな、と。"興味がある人のことしか応援できない、応援してもらえない"から、主人公を好きになれるかがとても重要であるという名言は、どの作品でも日常生活でも当てはまることだなあと思いました。

「エンタメとは何か?」「目利きになるには?」を強く考えさせられることになったこの畑中さんの回、自分の強みを見つけるためのヒントがたくさん散りばめられていました。企画メシも残すところあと4回、焦りばかり募っている今日この頃です。

最後にイベントの告知を!

『企画でメシは食っていけそう?』

わたしも参加している、『企画でメシを食っていく』の報告会があります!
登壇者は、モデレーターの阿部さん×企画メシ4期生(くろやなぎてっぺいさん、ヤギワタルさん、折田拓哉さん)
企画メシで学んだこと・気づきや普段のお仕事の話まで様々、刺激を受けること間違いなしです。
気になる方は、こちらから。

『企画でメシは食っていけそう?』
日時:2018年9月1日(土)15:00~17:00
場所:本屋B&B(東京都世田谷区北沢2-5-2 ビッグベンB1F)


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