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シュガー・ラッシュ:オンライン -感想-

シュガー・ラッシュ:オンラインを視聴してきましたので、感想を長文で綴らせていただこうかなぁという雑記です。

【ネタバレ有りです!要注意】


〔総評〕
個人的に評価の高かった「シュガー・ラッシュ」の続編。「ファンタジア2000」や「くまのプーさん」を除けば、ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ(WDAS)の久しぶりの”れっきとした”続編ということで、公開まで非常に期待しておりました。本プロジェクトの構想がリリースされた当初は、嬉しさ半分と「スタジオって今更続編作るんや…」という驚きに近い困惑がありましたが、前作「シュガー・ラッシュ」の鮮やかなストーリー展開を考えれば、悪くはない構想かなぁ~と思っておりました。次回作として「Frozen2」も待ち構えていたので、鑑賞にあたって、個人的にはスタジオの将来を左右するシークエンス作品の第一関門という心構えでも観ていた節がありました。
ビジュアルや音楽は相変わらず文句なしの出来栄え。新登場のキャラクター設定には秀逸さすら感じました。多方面にネタが豊富で、観衆の興味と一致する要素が必ずどこかに散りばめられていた点では、やはり幅広い層の観客を想定していることが十二分に伝わってきました。
ただ、ネックになったのはやはりプロットだったか…。僕の理解力が足りないという要因も充分あり得ますが、後半20分間が本当に本当に本当に意味不明。
個人的には全体評価はそこまで高くないかなぁ~という作品です。ごめんね。


〔キャラクター〕
➢KnowsMore
いいキャラ出してきましたね~スタジオさん!これこれ!
ラルフたちが一番最初に出会うインターネット上のキャラクターということで、ストーリーの導入も兼ねたキャラクター設定が要求される場面でしたが、インターネットのあるある要素を最大限反映させて、共感を得ながら、インターフェースの向こう側は本当にあんな感じになっているんじゃないかと思わせるリアル感が楽しかったです。
キャラクターモデルシートを見る限り、初期の段階では薄い髪の毛がある設定のようでしたが、あのツルツルとした体表との相性を考えるとまぁ無くてよかったのではという感じです。学士帽子と黒縁眼鏡の二点で、外見のビジュアル設定は充分だったでしょう。
どうでもいいことですが、インターネット上のキャラクター全般、体表が蛍光色のように描かれているのは「インサイド・ヘッド」のキャラクターを想起させましたね。特に意味はないです。

➢Yesss
バズチューブで最初に登場した際に着ていたファーコートが光ファイバーでできていて、彼女の感情の起伏に合わせて光るという細かい設定、素晴らしい!
中に着ていた服も、おそらく電子回路がベースになっているデザインだったかなという感じで面白い!
どのスタジオのアニメーション作品においても、登場キャラクターの衣装は頻繁に変えたがりませんが(作品の短時間の中で不用意にコスチュームを変えているとキャラクター自身のアイデンティティが失われやすく、一貫性のない印象を与えてしまうためでしょう)、彼女の衣装は頻繁に変えてましたねぇ~。大手企業のチーフに相応しいスタイリッシュ感が最大限に引き出されておりキャリアウーマンの気質がしっかりと窺えました。作品中のあの短時間で髪型まで頻繁に変化していたのは、さすがに驚きではありましたが…。
性格について。バズるコンテンツ以外には興味がないという彼女の設定は、変化の激しいインターネット上の存在であることを考慮すれば至極全うな設定です。ラルフが複数のおもしろ動画を公開してバズった際に、彼女がラルフに好意的に対応してくれたのは理解の及ぶ範囲ですが、その後、ラルフの動画が伸び悩みトレンドから急落した以降も、度々ラルフに手を貸して友好的にふるまっていた点で若干の疑問を抱きました。シャンクの紹介というだけで現れたラルフに対して、そんなにもVIP待遇が望めるのかなとは思いました。が、が、が、作品後半のシーンで、インターネット内でラルフのウイルスが増殖した際に浮遊車で救済に来てくれたのがイエスでしたので、「あぁ~スタジオはラルフやヴァネロペに協力的なキャラをしっかり準備しておきたかったんだな~」ということが理解できて、投げやりではありますがもうどうでもよくなりました(笑)。

➢Double Dan
本音として、もう少しあのキャラクターを有効的に使ってほしかったなぁというのが鑑賞後の第一印象でした。奇妙な見た目からダークネットの恐ろしさを作り上げたかったというのは分かりますが、イマイチLittle Danを付け加えた設定の意図を汲み取れませんでした。もっとも、いとこのGordの立ち位置もよくわからず仕舞いだったかなという雰囲気です。せっかく彼らを登場させるならもう少しシーンを割いたり印象的なイベントを起させるのもよかったかなぁという気がします。
Double Danの初期コンセプトアート(皮膚がただれてみすぼらしい衣装をまとったものや、アースラーのような見た目のものもありました)を拝見してしまうと、作中のDouble Danの見た目には少しネガティブな評価を下したくなります。
ラルフが“Tumor”と“Rumor”を言い間違えるくだりや“Neck on the Face”の言い回しなども滑稽さはありましたが、ラルフにそのフレーズを言わせたいだけ感を抱いてしまいました。
他言語吹替がこの言葉遊びをどう翻訳してるのかがとても気になるところですね。お疲れ様ですとしか言いようがありません。

➢Shank
前作に引き続きヴァネロペは強気な一面があり、一人でも自信に満ちた立ち居振る舞いが清々しかったのですが、シャンクのようなお姉様キャラが出てきたのは斬新で面白かったです。最初にトレーラーが公開された際に、見た目だけで判断して「カルホーンの成り下がりか?」などと失礼なことを思ってしまったものですが、彼女らのキャラクター設定の差別化もしっかりと図られていたように感じます。カッコよくて強い女性っていいですね!
Slaughter Raceの中では、プレイヤーにとって彼女はある意味「悪役」ですが、そんなシャンクの運転の腕前にヴァネロペが惚れる展開は、いい意味でも悪い意味でも「おぉっ!」となりました。

➢プリンセス
プロモーションでも全面的にプリンセスを押し出していただけあって、作中での彼女たちの使い方はネタ満載で楽しませていただきました。トレーラーでも使用されていた楽屋でのシーンはブラックユーモアたっぷりで、スタジオが、自身の制作したプリンセスキャラクターを客観的に捉えなおす試みが窺えて面白かったです。それを惜しげもなくふんだんに作中に取り入れる気概もよかったのでは。特に“I don’t even have a mom.”“Neither do we!!”は皮肉すぎましたね…。しかし、WDASがこういう手法をとることに対しての違和感や不満を抱く方も一定数いらっしゃることも事実でしょうかね。賛否両論です。
あとあんまり関係ないですが、私服コスチュームのデザインのグッズで収益稼ぐのはズルすぎます!あんなの欲しいに決まってるじゃん!買っちゃう!


〔ミュージック〕
➢サウンドトラック
一番最初にインターネットの世界に飛び込んだ時や、バズチューブを訪れた際のサウンドトラック(おそらく一緒?)が気に入りました。スコア名は「A Whole New (Brave New) World」かな。後で調べて知ったのですが、前作に引き続きHenry Jackmanが手掛けてたんですね。言葉での表現は難しいですが、複雑なアルペジオの繰り返しと、低音で長く響くベースとの組み合わせのテクノの電子音サウンドで、世界観と合致していたように思います。

➢トレーラー
プロモーション用トレーラーでDaft Punkの楽曲を使用していたのは激アツでしたね。おそらく個人的に、一時期Daft Punkに凝ったのが大きいとは思いますが。


〔ストーリー〕
➢オープニング
ヴァネロペの外への野望が唐突すぎる。続編にありがちな苦心の新設定であることは分かるが…。時代設定「6年経過」に見合うヴァネロペの心の変化として設定できると考えたんでしょうか。

➢巨大ラルフ退治以降の結末
おいどうしたどうした??の連続でした。展開が全く分からず、終始頭からハテナマークが消えない終盤でした。あの展開で満足できた方々はそれで全く構わないのですが、僕はイマイチ腑に落ちませんでしたね…。
終盤で唯一楽しめたのは、落下するラルフをプリンセスが救うシーンと、悪役集会のドストエフスキー読書感想会のシーンくらいでしょうか…。
ヴァネロペがウイルスの巨大ラルフを諭す際に、自身の特技バグでを用いて瞬間移動しながら巨大ラルフに近づくシーンがありましたが、いや、初めからその技使って逃げようよ、と思ってしまいました。確かに、ヴァネロペのバグを多用すると便利アイテム化しすぎるのでよろしくないですが、いくらなんでもあのシーンで急にバグを使用するのは都合がよすぎます。
巨大ラルフのウイルスについて。「ヴァネロペとずっと一緒にいたいラルフ」と、「新しい刺激が欲しいヴァネロペ」との間に溝が生まれ、そんなラルフが自身の弱点と向き合おうとするシーンであることは分かります。しかし、ラルフの心の葛藤を、巨大ラルフを登場させて描くのがベストな手段だったのかな?という疑問は個人的に残りました。ウイルスの巨大ラルフの設定もイマイチ描写されず、ストーリー展開は自由勝手に行われていた印象です。KnowsMoreが助言してくれた2つのクローン退治の方法にも「ラルフが自身の弱さと向き合う」なんていうものは無かったので、ラルフが心を開いただけで巨大ラルフが消滅した展開は意味不明です。本当に幻滅。ストーリーのオチにもつながる重要なパートだっただけに、残念極まりないです。
自戒がテーマとして挙げられていると僕は解釈しましたが、多少大人向けのストーリー構成でしょうか。子供がホイホイ寄り付くようなプロットではないなと感じました。

➢プロットのエンディング
結局、ヴァネロペは以前の生活には戻らず、ラルフは尾を引いてましたね。ああいうエンディングにするならもっと感傷的なシーンを入れてくださいよ、スタジオさん!
ラルフの方を見ながらSlaughter Raceの階段を一段ずつ登るヴァネロペが、浮遊車が横切った瞬間にもう奥に消え去ってたって描写だけじゃ足りない!
シュガーラッシュのハンドルが無事に補填され、シュガーラッシュのキャラクターたちがかつての平和を取り戻すシーンがあまりにもあっけなく速い展開のように思われました。特にハンドルがアーケードに届く描写は数秒もありませんでしたので、ハンドルを購入しようとあくせくしたラルフやヴァネロペの苦労が、あっさりとしたエンディングでまとめられてしまった感が残りました。

➢ヴァネロペのミュージカルシーン
お前歌うんかい…の意外性で、推しのシーンです。
6年前にシュガー・ラッシュを鑑賞して、その後調べたサラ・シルバーマンの通常時の声と役作りの声とのあまりのギャップに驚いたものです。そんな彼女が歌うシーンでしたので、非常に興味深かったです。割と曲もキャッチ―なのでは?
このシーンはWDASの長編アニメーション作品にとって非常に重要な要素を含んでいるように思います。WDASの8割ほどは“Musical Animation”に大別されるほど、登場キャラクター歌う作品が多いスタジオですが、そんな中、印象深いのはやはりプリンセスの歌唱シーンでしょう。ヴァネロペが歌うこのシーンは、プリンセス歌唱曲のあるあるが最大限詰まった、いわゆる「セルフパロディ」のシーンだなぁと捉えました。
特に、「Slaughter Raceの鳩を手に乗せて語りかける」や「ラルフに似たクレーターの月を見た後、ヴァネロペはラルフに対するうしろめたさを思い出し、曲調も一瞬でゆっくりになり、自身の心の揺れを歌い始める」、「どこからともなく照明(楽屋でのアリエルも前述してましたね)」などは、「うわぁ~あるある!スタジオよくやるわ~そういう手法!」と一人で悶絶してました(笑)。
スタジオは自分たちの制作してきた作品のツボを把握したうえで、それを茶化して観衆の共感を得ていたように思います。まさしく「セルフパロディ」ですよ、コレは!いやぁ好きですね~。
茶番になりすぎない程度に制作されていたのもいい匙加減だったと思います。

➢オー・マイ・ディズニー
マペッツだ!ハンフリーや!スタンリーだ!ロンドンタワーや!とか思ってたらそれに神経をとられました。夢の共演シーンが次から次へと出てきて、いや~楽しいシーンです!個人的にはピーターパンの「影」が出演していたのは意外とポイント高めですかね!
ただオー・マイ・ディズニーには、前作「シュガーラッシュ」はアーカイブスとして記録されていない設定なのでしょうか?それは好都合な設定かなぁ。

➢時間軸
一回しか鑑賞していないので、理解しきれていない部分や設定を拾い切れていない可能性はありますが、時間軸がイマイチ汲み取れませんでした。
落札したハンドルの支払期限は24時間以内であり、eBoyは支払期限の8時間前と30分前にリマインドしています。つまり、ラルフたちは少なくても24時間はインターネットの世界にいたことになりますが、その間、リトワックさんのアーケードの「フィックス・イット・フェリックス」はラルフ不在のままだったの?と言いたくなります。ラルフ不在のままプレイされていたら即使用停止になりますよね?えっ大丈夫なの?
この日のアーケードは定休日だったとかいう設定があったのでしょうか?誰か教えてください。本当にわからない箇所です。HELP!!


〔その他〕
➢ナヴィーンが他の長編アニメーション作品の大スクリーンに映し出される日が来るとは思ってもいませんでした。僕もナヴィーンにキスされたい(されたい)。

➢割れたクッキーのメダル
フェリックスに直してもらえよ、そんなんで落ち込むなよ、のツッコミシーンでした。
まぁ、「クッキーのメダルが壊れた」ということが本質なのではなくて、「ヴァネロペに捨てられた」といういう事実が重要であるのは分かりますが、前作でフェリックスはお菓子のレーシングカーを直してるくらいですから、やっぱりフェリックスの顔は頭をよぎるよねっていう感じです。
作品終盤で、割れたメダルの片方をヴァネロペに渡して心温まるエンディングの雰囲気にもっていっていましたが、邪道かな…。

➢プロジェクトの初期ではマリオとトロンの出演が目論まれていたそうですが、結局後者だけでしたね。いずれにしろファンにはありがたいカメオ出演でした!でもマリオもお目にかかりたかったのは事実です。

➢前作で、リトワックさんのアーケードの常連だった、少しオタク臭を感じる眼鏡をかけた女の子のキャラが好きで、本作への登場を期待していたのですが流石に出演しませんでしたね。なにより時代設定が、しっかりと前作の6年後だった点に驚きました。てっきりインクレディブル・ファミリーのように、前作からの時間を空けない始まり方だと思っていたので(笑)。6年も経ってしまったらあの女の子もそう頻繁にはアーケードには来ませんよね~多分。

➢プリンセスが私服に着替えるシーンへの切り替え、聞いたことあるなと思ったらバットマンでしたか…。僕は利権や配給などには詳しくないので、よくこのサウンドを使用できたなぁ以上のことには頭が回りません(笑)。



以上、自己満足で冗長に記してしまいました…。
次回作や他スタジオの作品も期待です。

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