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走らなかったのに

羽根の音ではなかった。
少しの雨なら走ってもよかった。
その日は心を挫くのに十分な量だった。

仕事がうまくいって
ひとつずつ過去を乗り越えられると
喜んだのも束の間
今日は重い知らせを受け取った。

次から次へと
試練が自分を狙い撃ちにして降りかかるような気がする。

「もうやだ」

子供みたいに
我儘を言いたくなる。

食欲もない。
残り少ない愛想を無理やり絞り出し
仕事をこなしやりきったけれど充実感はゼロ。

誰にも会わずに早く帰り
ソファに寝転がる

ため息しか出ない。
身体がムズムズする。

雨も止んで何人かの子供が校庭で倒れた話を聞く。

私も熱中症ならば、これからどうなるのだろう。

走りたい。

夜の公園をいつもより長く。
4kmを越えた。
苦しい時は胸を張れ。

暗い森の頭から星が見える。

ランナーズハイには
走っている時に達するものだと
思っていた。

走り終わって雨粒のような汗を頬や首筋に感じる。

走った。
走り切った。

遅くても
疲れても
私は走った。

ハイになるのは今。

NIKEのサイトでシューズを買った。
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ペガサス ターボ 早よ届け。

ターボの音を響かせるよ。



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