ドイツはやっぱりソーセージにじゃがいもなのだろうか
世界各国に暮らす物書き仲間がお送りするリレーエッセイ「日本にいないエッセイストクラブ」。早くも4周目である。
われわれベルリン酒場探検隊は、3周目は酒を飲んでいて不参加だったため、今回が3度めの参加である。テーマは「お腹が空く話」だが、さてベルリンの酒場でうまいものはあっただろうか……。しかしエッセイのバトンは、つなげねばならぬ。
前回走者と次回走者については、文末をご覧いただきたい。
「日本にいないエッセイストクラブ」これまでの記事は、マガジンにまとめられているのでこちらもご一読願いたい。
すっかりご無沙汰してしまった。みなさん、お元気でいらっしゃるだろうか。ベルリン酒場探検隊である。
本題に入る前に、ちょっとばかりお知らせがある。毎度この「ベルリン酒場探検隊レポート」を提出していた隊員久保田は、いま日本にいる。じつは生活の場を日本に移したのである。これからは日本酒や焼酎も飲み放題だ。
しかし、酒場探検隊は今後もベルリンと日本を行き来しながら活動を続ける所存だ。今後は日本の酒場も探検できる。さらに幅広い酒場レポートをお届けできることだろう。改めてよろしくお願い申し上げる。
レポート提出者:久保田由希
そもそも酒場に料理はない?
さて本題に入ろう。
今回のレポートは、冒頭にも書いたように「日本にいないエッセイストクラブ」リレーエッセイ企画のうちの一編でもある。お題は「お腹が空く話」。
のっけからなんだが、料理を出せる酒場は限られている。
われわれベルリン酒場探検隊が通常「酒場」と言っている店は、ドイツ語で言うクナイペ(Knepie)に当たる。クナイペは飲食店に属する一つの業態で、アルコール主体の店だ。料理メニューはないか、あってもごく簡単なものしかない。さらに喫煙可のクナイペは、料理を提供することはできない。
(写真:ここは喫煙酒場なので料理はない)
ちゃんとした料理を出す店がクナイペとしてガイドブックなどで紹介されていることもあるが、どちらかといえばレストランと言うほうがぴったりくるだろう。クナイペもレストランも飲食店には違いないので、一般の会話ではその境界線はあいまいだ。
酒場にふさわしいソーセージ
そんなわけで、お腹が空いた状態でベルリンの酒場に行っても、食べ物にありつけないこともある。クナイペで料理を注文している人を見かけることも少ない。お客はみな延々とビールを飲んでいる。
だが、クナイペらしい食べ物だってある。ソーセージだ。
ビールもソーセージも、紛れもなくドイツの名産品である。「名物にうまいものなし」と言われるが、ドイツに限っては当てはまらない。とにかくどちらもうまいのだ。さらにじゃがいももうまい。
ソーセージと聞くと、おそらくみなさんは焼きソーセージを思い浮かべるのではないかと思う。だが、クナイペで出すのは、茹でソーセージが主流だろう。
ソーセージの国ドイツでは、1700種類以上のソーセージがあるという。それぞれの種類ごとに焼く、茹でる、パンに塗るなど適した食べ方が決まっているのだ。
(写真:これは数あるソーセージの種類の氷山の一角)
酒場で出るソーセージは、ボックヴルストと呼ばれるソーセージが圧倒的に多い。お湯の中に放ち、温めて食べるが、冷たいままでも食べられる。これが皿に乗っかり、マスタードが添えられて出てくる。日本のソーセージと似ているので、初めて食べる人にも抵抗がないだろう。
(写真:茹でソーセージ(右)と焼きソーセージ(左))
ちなみに「ドイツ食品普及協会」のサイトによると、「ボックヴルスト(Bockwurst)は1880年代後半、ベルリンのクナイペ(=Kneipe:飲み屋)で、ボックビア(アルコール度の高いシュタルクビアの一つとして有名なドイツビール)と一緒に供していたことから、このヴルストをボックヴルストと呼ぶようになったと言われています。」とある。まさに酒場のためのソーセージと言えよう。
そしてイモだ
ソーセージと切っても切り離せないのが、じゃがいもだ。酒場でもそれは同様で、ソーセージの付け合せにじゃがいもサラダが付いてくる、あるいは一緒に頼むことがある。
じゃがいもサラダと言っても、ドイツのものは日本のポテサラとは様子が違う。茹でたじゃがいもを切って、ドレッシングに浸したものだ。ヨーグルトやマヨネーズを加えるバージョンもあり、ここは好みが分かれるところである。
(写真:これはマヨネーズ入りのじゃがいもサラダ)
(写真:これは汁気が少ないタイプ)
調理せず食材そのままがうまい
茹でソーセージにせよ、じゃがいもサラダにせよ「調理」というほどのものではない。ほぼ食材そのまま、という状態だろう。
しかし、ドイツではむしろそれがいい。レストランで凝った料理を食べるのももちろんいいのだが、日本人の肥えた舌には塩気が強すぎて合わないことがある。
だが、食材それぞれは確実にうまい。肉も野菜も素材自体の味がしっかりしている。日本では、ドイツと同レベルのおいしいソーセージを食べたことがない。
だからドイツでは、食材を単に茹でたり焼いたりしたものを食べるのが正解だ。ビールがうまいのは言うまでもない。このうまさは、日本で食べるおいしさとは、また方向性が違うのだ。
酒場ではビール。何か食べるならソーセージにじゃがいも。じつは酒場は、典型的なドイツだったのだ。
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前回走者はスイス在住のアリサさん。記事はこちら。
スイスと言えばチーズフォンデュだが、アリサさんはなんとワインの代わりにビールを使ったフォンデュを紹介してくれた。われわれベルリン酒場探検隊を思いやってくれたのだろうか?!
次回走者、イタリア在住・鈴木圭さんの前回の記事はこちらだ。
鈴木さんとともに旅をしたボロボロのリュック。確かにこういうのは捨てられない。ちなみに、ベルリン酒場探検隊の独断と偏見では、ドイツ人はリュック派が多数を占めている。
*お知らせ*
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