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イラストで、学んで、遊んで・・[1]

すずきひろし(英語講師・イラストレーター)

4月新刊『語源とイラストで覚える理系英単語BOOK』のすべてのイラストを描いたすずきひろし先生の連載です。英語講師、著者でありながら語源のイメージをイラスト化するイラストレーターでもある、という特異な存在のすずき先生。第1回は、技術者として働いていたすずき先生が、どうして著者となりイラストレーターとなったのか、というお話です。

第1回 ふと描いてみたら描けたイラスト


こんにちは。ご存じの方もいると思いますが、私の著作の特徴はイラストが大量に使われていることです。なぜそんなに大量に載せられるのか?それはそのほとんどを私自身が描いているからです。
今回、4回の機会をいただきましたので、その中で「イラスト」についていろいろ書いてみようかと思います。
1回目はイラストを描くようになった経緯についてお話しします。

描いてみたら意外に簡単

機械メーカーで技術者として働いていた2009年頃だったと思います。ある時ふと「前置詞のイメージを図形で描いてみたら分かりやすいんじゃないか」と思い立ちました。すぐに、onやinのイメージを使い慣れたPowerpoint上の図形ツールを使って描いてみました。意外に簡単に描けました。調子に乗ってatやthroughなどをどんどん描きました。
前置詞がだいぶ描けてきた頃、こんどは英単語のイメージを描いてみようと思い立ちました。その頃私は、英単語の語源に興味を持っていて、それまでにこつこつと2000語くらいの英単語の接頭辞や語根や接尾辞をEXCELシートの中で整理してありました。そのデータを、接頭辞でソートしたり語根でソートしたりしていじっているうちに、接頭辞や語根のイメージがなんとなく頭の中に見えてきていました。前置詞と同様にそれをイラストで表してみたら面白いのではないかと考えたのです。最初に書いたのがcloseの仲間、つまりencloseやincludeなどです。これも意外にうまく描けて、それからどんどん描き進めました。

始めたときのイラスト

描き始めた当時のイラスト

未使用だった脳が活性化

 それらを描けば描くほど、前置詞や英単語のイメージが自分の頭の中で明確になってきました。訳語でとらえずイメージで捉えることがどんどん容易になって行きました。大量のパワーポイントスライドができましたが、「これは自分だけで持っているのはもったいない」と思い、ブログ(「日本語と英語をつなぐ」)を開設してそこで公開したり、電子書籍で販売するようになりました。それが2011年の終わりころのことです。イラストを描き始めて2年くらいたった頃です。
 ブログではこんどは英文法を図式化するようになりました。それまで教科書通りの理屈で考えて捉えていた時制や文型が、描くうちにどんどん感覚的に捉えられるようになってきたのです。たぶん脳の未開発だった部分が使われ始めたのだと思います。それが技術者時代です。

はじめての出版、そして転身

清水建二先生に初めてお会いしたのが2015年。そのときに先生に「先生の本は面白いけど、イラストが良くないですね。私なら『挿絵』でなく『図解』を描きますよ。」と、今思えばずいぶん失礼なことを言いました。すると先生は「そう、だからいっしょに本を書きたいんだ」と言われました。まさかと思いました。「いつか自分の本を出したい」というほのかな夢が私にはありましたから。
その本『イメージと語源でよくわかる 似ている英単語使い分けBOOK』がベレ出版さんから出版されるタイミングで技術者を辞め、個人英語塾で教えながら本格的に本の執筆を始めました。

「図解」としてのこだわり

これまで共著・単著で10冊くらい出版しましたが、一冊の本に1000点近いイラストを描きます。私がこだわるのは、「挿絵」ではなくて「図解」にするという部分です。言語で説明できないところをイラスト図解の中で表現しようとしているのです。しかも、読者が楽しく感じられるようなイラストで表現するということです。
おそらく、同じように「イラストで説明したい」と思う著者はたくさんいると思います。多くの人が挑戦していると思います。でもそれはなかなか成立しません。著者にとって明確なイメージを頭に思い描くことはなかなか容易ではなく、たとえそれができたとしてもそのイメージをイラストレーターに正確に伝達することが難しいからです。イラストレーターへの支払いも当然発生しますから経済的にも難しい面があります。私は着想からイラスト製作までを一人でやりますから、それが可能になるのです。

最近のイラスト

最近のイラスト 『語源とイラストで覚える理系英単語BOOK』から

 それともうひとつ、大量生産できる秘密が、私が使うツールにあります。それは3回目に書くことにします。

すずきひろし  神奈川県生まれ。英語講師でイラストレーター。外資系機械メーカーでグローバル製品の開発に技術者として20年以上携わり、現在は相模原市に開いた「おとなのための英語塾」やカルチャーセンターで初歩の英語やビジネス英語などの講座を持つ。英語の文法や単語の意味をイラストを使って楽しくわかり易く明示化することを得意とし、ベレ出版『使い分けBOOK』シリーズでは各々500カット以上の説明図解イラストを自ら作成したほか、『英単語の語源図鑑』(共著・かんき出版)や『50歳からの語源で覚えて忘れない英単語1450』(PHP研究所)では英単語の語源と意味をイラストで表現している。著書はほかに『やさしい英単語の相性図鑑』(ソシム)など。実務書用などのイラスト製作も手掛ける。


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