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語学書の著者のコラム

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ベレ出版語学書の著者による、本を書くこと以外のお仕事の話、教えること、ことばにまつわること、言語について。
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#フランス語

映画字幕の舞台裏はこんなに楽しい!-7-

吉田 泉 (仏文学者) ヌーヴェル・ヴァーグこそフランス映画 またお会いしましたね。あなたは映画が好きですか? ヌーヴェル・ヴァーグ(Nouvelle Vague「新しい波」)という言葉をご存知ですか? 1960年あたりを中心として起こって来た、フランスの一連の若い映画監督たちの創造した、映像を通じての新しい華々しい芸術的運動です。フランス映画と言えばこのヌーヴェル・ヴァーグを連想する人も多いのではないでしょうか。 さて私は今回、ヌーヴェル・ヴァーグの映画の数々を思

映画字幕の舞台裏はこんなに楽しい!-6-

吉田 泉 (仏文学者) 第6回 青春そのもの『太陽がいっぱい』 またお会いしましたね。あなたは映画が好きですか? 『太陽がいっぱい』(1960年ルネ・クレマン監督 フランス・イタリア映画)をご存じですか? この映画の登場のころに多感な青春時代を過ごされ、克明にこの映画のシーンの数々を記憶していらっしゃる方々も多いのではないでしょうか。 私もそうでした。『太陽がいっぱい』が私の青春に大きな影響を与えました。特にあっと息を飲むラストシーンは映画史に残る極めてキレの良い終

映画字幕の舞台裏はこんなに楽しい!-5-

吉田 泉 (仏文学者) 第5回 時を経て独り歩きする映画の話 みなさんは映画が好きですか? こんな書き出しで前回ベレ出版のコラムを連載したのは2020年11月でした。新型コロナ感染症を中心として、あのときから現在まで世の中も様々に変容を遂げたようにも感じられます。 しかし世相は変わっても、なかなか変わらないのが私たち人間でもあります。 「映画字幕の舞台裏…」 ―― このタイトルでの私の話に興味をもってくださった方々に感謝します。そして再びこのコーナーに出させていただける

映画字幕の舞台裏はこんなに楽しい!

吉田 泉(仏文学者) 最終回 フランス映画とは?みなさんはフランス映画に対してどんなイメージを持っていますか? ロマンス、ファッション、エレガンス? 確かにそういう要素も大いにありますが、私にとっては、フランス映画はなんといってもリアリズムです。つまり、現実らしくないものは映画ではない、とフランス映画は暗に言っていると思います。私が字幕を手がけた往年の名画『巴里の空の下セーヌは流れる』『死刑台のエレベーター』『太陽がいっぱい』『過去を持つ愛情』『情婦マノン』『ヘッドライト

映画字幕の舞台裏はこんなに楽しい!

吉田 泉(仏文学者) 第3回 歌詞を変えて歌う?古い話で恐縮ですが、かつて歌手の山口百恵さんが彼女の大ヒット曲「プレイバックPart2」をNHKで歌うときは、その歌詞の中で本来「真っ赤なポルシェ」となっているところを「真っ赤なクルマ」と変えて歌っていました。それを初めて聞いた時、当時の多くのファンは仰天したのではないでしょうか。 私は逆に、にんまりしてしまいました。ああ、やっぱりここにも同じ苦労があるんだなと。つまりNHKでは商品名は放送法によって使ってはならないと定め

映画字幕の舞台裏はこんなに楽しい!

吉田 泉(仏文学者) 第2回 秒数で決まる字幕の文字数「映画の字幕って、だいたいどれも瞬間的なのに、なぜ読み切れるんだろう」って思ったことはありませんか? そのはずです。すべての発話は秒数が計られているからです。その秒数に応じて訳語の文字数を決めます。 今回はこういった、字幕制作の現場を少し詳しくお話ししたいと思います。 NHKでは原則、1秒につき、2文字~3文字は読めると決められています。つまり登場人物が3秒間発話していたら、6文字~9文字の日本語がその字幕に使える

ことば屋さんのまいにち 第4回

高橋美佐(英語・仏語・伊語フリーランス通訳、コーディネーター) ――通訳や翻訳という商売は、なにを売る商売かというと、「ことばを使ってできるサービス」を売っているのです。ベレ出版さんは本を作って売っていらっしゃるので本屋さんですね。だから、私は、ことば屋さん。わたしのお店に並んでいる品物は、英語と、フランス語と、そしてイタリア語です。 毎日、いろんな注文が飛び込んできます。「無理な注文」もときどきあります。でもだいたいのところは、なんとか、売ることができています。いったいど

ことば屋さんのまいにち 第3回

高橋美佐(英語・仏語・伊語フリーランス通訳、コーディネーター) ――通訳や翻訳という商売は、なにを売る商売かというと、「ことばを使ってできるサービス」を売っているのです。ベレ出版さんは本を作って売っていらっしゃるので本屋さんですね。だから、私は、ことば屋さん。わたしのお店に並んでいる品物は、英語と、フランス語と、そしてイタリア語です。 毎日、いろんな注文が飛び込んできます。「無理な注文」もときどきあります。でもだいたいのところは、なんとか、売ることができています。いったい

ことば屋さんのまいにち 第2回

高橋美佐(英語・仏語・伊語フリーランス通訳、コーディネーター) ――通訳や翻訳という商売は、なにを売る商売かというと、「ことばを使ってできるサービス」を売っているのです。ベレ出版さんは本を作って売っていらっしゃるので本屋さんですね。だから、私は、ことば屋さん。わたしのお店に並んでいる品物は、英語と、フランス語と、そしてイタリア語です。 毎日、いろんな注文が飛び込んできます。「無理な注文」もときどきあります。でもだいたいのところは、なんとか、売ることができています。いったい

ことば屋さんのまいにち  第1回

高橋美佐(英語・仏語・伊語フリーランス通訳、コーディネーター) ーーー通訳や翻訳という商売は、なにを売る商売かというと、「ことばを使ってできるサービス」を売っているのです。ベレ出版さんは本を作って売っていらっしゃるので本屋さんですね。だから、私は、ことば屋さん。わたしのお店に並んでいる品物は、英語と、フランス語と、そしてイタリア語です。 毎日、いろんな注文が飛び込んできます。「無理な注文」もときどきあります。でもだいたいのところは、なんとか、売ることができています。いったい