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語学書の著者のコラム

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ベレ出版語学書の著者による、本を書くこと以外のお仕事の話、教えること、ことばにまつわること、言語について。
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2020年9月の記事一覧

独語教師の独り言 第4回 ― 郵便の話

森 泉(ドイツ語教師) 西欧の風景に映し出された語学教師の心の風景、ことば、教育をめぐる私の独り言、4回にわたって思いつくままに語ります。 ホルンはドイツ郵便のシンボルで、このロゴは日本でも意外に知られている。古くヨーロッパで郵便配達夫が吹いていたホルンに由来し、郵便のシンボルとして使われているのはドイツに限らない。ドイツ滞在中はずいぶん郵便局のお世話になったので、このロゴを見ると懐かしい気持ちに襲われる。日本でも個人住宅のポストにこのマークが付いていることがあって、ドイ

独語教師の独り言 第3回 ― 二人の師

森 泉(ドイツ語教師) 西欧の風景に映し出された語学教師の心の風景、ことば、教育をめぐる私の独り言、4回にわたって思いつくままに語ります。 語学の師には随分恵まれたと思う。ここでは、その中でも教師となる上で教わることの多かった二人の師について書いてみたい。 素晴らしき英語の授業 S先生には高校時代に英語を教わった。当時50代半ば(と私は思っていたが実際にはもう少し若かったのかもしれない)、律儀な方で始業ベルと同時に教室に入られ、終業ベルが鳴ると説明の途中でも次回持ち越し

独語教師の独り言 第2回―母語の威力

森 泉(ドイツ語教師) 西欧の風景に映し出されたドイツ語教師の心の風景、ことば、教育をめぐる私の独り言、4回にわたって思いつくままに語ります。 列車で読書 ドイツに長期滞在中、パリの友人を訪ねたときのことである。ドイツから特急で4時間ほどの旅になるので、こういう場合の常として本を持参した。道中読む本であるから日本語の小説か、せめてドイツ語なら軽い読み物を持ってゆけば良いのだが、つい気張って読みかけていた哲学書を鞄に入れてしまった。ドイツ語としてそれほど凝った文体ではないが

独語教師の独り言 第1回―教師の発音

 森 泉(ドイツ語教師) 西欧の風景に映し出された語学教師の心の風景、ことば、教育をめぐる私の独り言、4回にわたって思いつくままに語ります。 良き発音は教師の条件 美しく魅力的な発音ができることは語学教師にとって実に大切な条件である、と言ったのは確かスラブ語研究者の黒田龍之介氏と記憶する。当たり前のことを言っているようだが、これがなかなか難しい。正しい発音をするだけでも苦労するのに、さらに美しく魅力的に発音しなければならないというのだ。要するに教室で教師の発する言葉を耳に