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【アークナイツ】ドッソレスホリデーのストーリーの根底にあるテーマを噛み砕いてみたお話

一周どころか二周程ドッソレスホリデーのストーリーを咀嚼して、個人的に胸に滾って思ったこと、感じたことを、熱が冷めない内にここに書き留めておこうと思います。

何というか今回のお話……時系列的に仕方ないというか。
2周年の節目でアークナイツを始めた最近のドクター達にとって、このドッソレスホリデーで語られたエピソードを「本当の意味で理解することができないだろう」、っていうのが残念で仕方ないです。
いい意味でも悪い意味でも。

登場キャラクターもゴージャスだし、全体的なノリもアッパーだし。歓楽都市で起きた事件をドカーンと解決して、龍門ハニーと浜で社交ダンスよろしく、みんなで仲良く水着でレッツバカンス!っていう雰囲気で楽しめないこともないんですよ。

ただ、今回はやっぱりあのチェンにメインスポットが当たっているわけで。

"レユニオン編であるメインストーリー第8章までクリアして、遊龍チェンをゲットして回想秘録まで読んで、初めてワンセットでドッソレスホリデーのストーリーに深みが出てくる"

そういう仕掛けになっていると思うんですよね。

ここから先はドッソレスホリデーはおろか、メインストーリーの核心的ネタバレも含めて書くので、まだ地雷を踏みぬきたくないって人は要注意です。

【ドッソレスホリデーのストーリーに感じたテーマ”変化すること/許容すること”】

■ドッソレスという複雑な歓楽都市に変化をもたらすこと

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テラの西端に位置するボリバルの一都市でありながら異彩を放ち、他国からも一目置かれる歓楽都市、ドッソレス。
ボリバル自体が度重なる植民地時代や内紛を経て、貧富格差の激しい国家様相を呈している中、女性市長カンデラの手腕によって一躍歓楽都市へと発展し、法治的にも独自の自治体となり、金と軍事力と観光エンターテイメントが混在した都市が今のドッソレス。
その金回りの動きたるや、「働いて金を得るならドッソレスで軍人のバイトをする」「手早く富豪になるならドッソレスウォリアーチャンピオンシップで一攫千金を得る」とまで現地人に言われる始末。
また、人が集まることで産業も独自進化し、コーヒーや酒類等の嗜好品が他国へ輸出されることも、ドッソレスが認知される要因の1つにもなっている。このへんの事情は、ストーリー中でもテキーラが語ってくれています。

そしてボリバルの紛争地域のど真ん中にありながら、金の動きと嗜好品を独占して他国を翻弄し、ドッソレス自体に翻弄される母国ボリバルに憤って爆破テロを起こしたのが、かつて「トゥルーボリバリアン」のメンバーだったパンチョ・サラス。今回のボスですね。

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ボリバル原理主義者ともいえるパンチョは、自分が革命を起こすことで民衆の意識に変化を期待したわけですよ。ド汚い金と犠牲の上に成り立っている今のドッソレスの現状を見ろ、と。
手口やテロ後の処理のビジョン等含め、全てが雑で中途半端だった感は否めないけど。

この変化を促した先が、現ドッソレス市長であるカンデラ・サンチェスだったわけだけど、もう彼女の方が1枚も2枚も上手だったんですね。

そりゃ植民地時代の圧政と紛争に塗れたボリバルの一都市ドッソレスを、独自の采配で強力な地盤へと変えて、ガラパゴス進化させた張本人ですよ。
パンチョが変化を促す前に、カンデラ自身はそれ以上の変化をボリバルや周辺諸国にもたらしていたわけで、ある意味で古臭い考えに帰納しようとしているパンチョのテロ行為なんて、食らっても微塵も痛くないわけですよ。

まぁカンデラにしてみれば、ドッソレスという都市自体が彼女の権威と存在を作り上げる「手段」の1つにしかないのかもしれないけれど。
健全な都市かどうかはさておき、このまま先細る未来しかないボリバルからドッソレスを一歩抜きん出た存在にすることで、カンデラは龍門やカジミエーシュ等の列強国に、対等かそれ以上の位置から渡り合おうと考えているのがわかります。その点で言えば、龍門のウェイと並んで、カンデラはテラにおいての権力行使者としての資質があるかもしれません。

■テキーラの変化と許容、或いは諦め

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ドッソレスホリデーのストーリー中で複雑を煮染めた象徴と言えるのが、パンチョ・サラスの息子であるエルネスト・サラスことテキーラでした。

テキーラは今のドッソレスを愛している。退廃的で美しく、金さえあればずっと遊べる。でもトゥルーボリバリアンだった親父の境遇もわかるし、親父には指導者的資質の欠落があるのもわかっている。

彼なりの義理なのか、テキーラは親父の側について、ある意味で変化に期待をしていたわけです。その対象はもちろん、自分の心境やパンチョも含まれるだろうし、義妹のラ・プルマに対してもそうでしょう。

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その一方で、自分の選択が間違っていた、そのことがわかる瞬間が訪れることすらも期待しており、ある意味で自虐的な諦めの境地にいることもわかるんですね(ドッソレス特設サイトに掲載されたテキーラが書き残した英文の手紙より)。

"チームBは失敗した。彼らの事後処理に一日費やしてしまった。また新たな作戦を考えなければならない。
俺はカンデラさんを甘く見てはいけないと何度も言った。バーや公園を乗っ取るだけだと思っていたようだけど、それは間違いだった。ドッソレスは、純粋な娯楽を目的として作られたものじゃない……いや、ありえない。ボリバルの地は、そんな単純な人物が長く生き残れるような場所じゃない。
親父の執着心とその手先の無能さには耐えられなくなってきた。時々、カンデラさんの味方をした方がいいんじゃないかと考えるときもある。だけど……少なくとも今回は、親父の壮大な計画のために、俺は親父の側に立つことを選ぶことにする。
これが正しい事だといいが。それとも……自分が間違っていればいいのだが……。"


※アークナイツ 白Wikiより抜粋

柔軟で頭が回り、誰にでもコミュニケーション能力を発揮して友好的に交流できるテキーラが持つ負の側面。この負の側面すら受け入れてくれる器を、どこかに期待しているかのようです。
少なくともテキーラを受け入れる器は、騒動が終わった後のドッソレスやカンデラではなかったようで、結果的にロドス・アイランドにチェンの紹介で訪れたことによって、彼自身に新たな変化が生まれていくことになりそうですが、それはまた別のお話。

■チェン・フェイゼの変化の物語

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レユニオンがもたらしたチェルノボーグでの一連の騒動を経て、半ば離反という形で龍門近衛局を去ったチェンが見てきたものは、メインストーリー第8章をクリアしたドクターであればご存知の筈。

警察機構という近衛局の立場がなくなり、自分自身も1人の感染者であるという事実を受け入れたことで、テラを取り巻く事象や文化に対するチェンの見解にも変化が生じています。
要は人間として角が取れて丸くなったんですよね。他人に対しても、組織に対しても。そして家族に対しても。

融通が利かずに石頭で頑固者だった近衛局時代からの束縛がなくなった部分もあるとは思うんですけど。思考が柔らかくなって多角的な視野を持つようになり、まだ模索の段階ながらも、許容と諦めの落下地点を見極めるのが上手くなったように見受けられます。

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近衛局を離反した際にホシグマと対峙した時のことがモロに響いているご様子。己の正義を振りかざす一方で視野が狭くなりがちな"正義マンキャラ”にあるあるな更生パターンなんだけど、じっくりとメインストーリーから尺を取って見せてきたことで、まだ未完全ながらもチェンの成長を思わせる出汁が効いています。

遊龍チェンの回想秘録では、変化を模索しているチェンが、かつての部下でありバディでもあったホシグマと共に、これから彼女達が歩む道について語らいます。

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お願いだからこの回想秘録は是非読んで欲しい。
特大級のホシチェンなので。

限定キャラの回想秘録にイベントストーリーの後日談、引いてはメインストーリーから地続きのキャラの成長譚を仕込むのは、なかなか商売上手な手段だとは思いますが。

ともあれ、チェンの心境や変化に関しては前述の通り、「メインストーリー8章までのクリア前提と回想秘録込み」でワンセットです。
膨大。容量がクソデカすぎる。

故に自分はこの回想秘録を読み終えた時に、「これがチェンの描きたかった物語なのかーー」と膝から崩れ落ちてしまったとさ。

まだメインストーリー未クリアの人は、第8章までクリアすれば、チェンがドッソレスで行った立ち振る舞いを理解することができます。やったぜ。

それを踏まえると、ドッソレスホリデーはチェンや彼女らを取り囲む龍門組の心境変化や友情を楽しめる、とてつもなく贅沢なエピソードになっていると思います。

現場からは以上です。



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