見出し画像

衝撃と脱力の「箱事件」。

こんばんは、「腱引き」「つるた療法」の別府湯けむり道場です。

先週の半ばに起きた珍事件について、お話したいと思います。結論から申しますと、

「道場の玄関前に置かれた不審な荷物を警察へ通報したら、
その中身は二次元キャラクターグッズの山だった」

これ以上でもこれ以下でもないので、これで納得した方はこれから先を読む必要はありません。どういうことなのか詳細を知りたいなと思った方のみ、先をお読みくださればいいと思います。

発端

施術を終え、お客さんを玄関までお送りした時のこと。

「先生、玄関前に箱があるで」

お客さんにそう言われ、確認してみると。小さめの段ボール箱がたしかに置いてありました。これはなんだろう?

一目見て、運送会社さんからのお届け物ではないことはすぐに解りました。置き配のための宅配BOXはきちんと設置してますし、そうでなくともおなじみの配達員さんであれば玄関で「置いて帰りま~す」と一声かけてから置いて帰られることをすでに知っているからです。

では、誰がこれを置いて帰ったのか……?

昔の無謀なわたしだったなら、この箱を即座に開けて中身を確認したでしょう。

しかし今は違います。家族がいますし、万が一にも爆発物でも入っていたら仕事はおろか、下手すれば命すら無くなってしまう危険性。それが完全否定できない以上、軽はずみな行動は慎むべきでしょう。

悩んだわたしは同じく不気味がる奥さんと話した結果、110番通報を行うことにしました。

刑事さん(仮)登場

そしてやってきたのは、いつもの警察官の風体とは違う、もっとガッシリした感じの方々。いわゆる刑事さんだったと思います(これはあくまで推測ですので、以後は仮マーク)。一見、親しみが持てて愛嬌のある印象ですが、その耳は柔道で鍛えこんだのであろうことを雄弁に物語ってくれました。

刑事さん(仮)は本当にわたし(や奥さん)に覚えがないのか、荷物が届く予定が元々なかったのかなどを訊ねてこられ、わたしはそれぞれの質問に対して明確な答えを出して否定していきました。近所の方が忘れて帰ったり運送会社が間違えて置いて帰ってしまった物ではないか、とも思われましたが、刑事さん(仮)の聞き込みでそれもすべて無しの線に。

「開けてみましょうか…カッターを貸してもらえますか」

刑事さん(仮)はこう言い、段ボールにしっかりと貼られた布テープの切れ目にカッターを当てて切っていきました。

幸せ(?)な結末

そして出てきたもの……それが、先にtwitterやインスタグラムで掲載した次の写真のものであります。

玄関前に並べられたキャラグッズ
玄関前に広げられたキャラクターグッズ

当道場の看板娘「湯けむりユキちゃん」を手掛けてくださったイラストレーター・中津コンさんによるキャラを中心としたグッズ(タワーちゃんなど他の絵師さんによるキャラも)が大量に入っていたのでした。

アクリルスタンド、バッジ、ステッカー、etc…よくここまで集めたものだと本当に感心しました。

この過程でわたしは刑事さん(仮)に「一心寺さんというお寺が独自にキャラクターを作って知名度の向上をお図りになられていてですね云々かんぬん」という説明を余儀なくされました。でないと、なぜうちにこういうものを誰かが置いていったのか、話の糸口がまったくつかめないと思ったからです。

同封されていた手紙には「一身上の都合によりグッズを所持できなくなったので寄付します」という旨の文章が、当道場の今後の発展を祈る文言と共に記されていました。すごく礼儀正しい方です。しょうもないことを言わせてもらえれば、拝啓がないのに敬具があったことに違和感をおぼえてしまいましたが。

それに、メルカリやマンガ倉庫などに売りへ出さないあたりに苦渋の決断っぷりをうかがうことができました。通常であればそれを選ぶと思ってしまうのは、わたしの考えすぎでしょうか?

ともかく、わたしも刑事さん(仮)たちも呆気にとられてしまいました。危険なものと思いきや、それを180度裏切った形で大量のグッズが出てくるとは。爆弾物と思って身構えていたわたしの身体中から、ありとあらゆる力が抜けていくのがわかりました。

過去の自分に自信のないわたしだったなら、他人の目の前で爆発物だなんだと騒いだ挙げ句に2次元キャラクターのグッズを展開されてしまったことに対して、これ以上ないほどの生き恥をさらしてしまったなと思ったかもしれませんが……あいにく、良くも悪くも酸いも甘いもそこそこ知った大人になってしまいましたので。

とどめ

「もう、帰ってもよさそうですね……」

刑事さん(仮)たちは玄関前に並べたグッズを眺めながらそう言いました。これ以上はどうしようもないので当然でしょう。

「これは御自宅の敷地内に置いてあったので、処分はおまかせします」

というわけで、警察公認でわたしのものになってしまいました。

このグッズの山、どうするか。普通に考えれば飾るしかないのですが。そう考えていたところ、帰りかかっていた刑事さん(仮)が。

「ちなみに先ほど、そちらでもそういうキャラクターを作っているとおっしゃっていましたが、何という名前でしたかね?」

こういうのを改めて説明するのって、結構な恥ずかしさが伴うんですよね。一応警察立ち合いという緊張した場面でもあったので尚更です。

「はい、ゆ、ユキちゃんです」

「ユキちゃんですね(と言ってスマホで検索)、あ、出てきましたね。なるほど、これを見て『ここにならグッズを置いてもいい』と思ったのではないかと、そういうことですね」

「そうなんじゃないかと」

「わかりました!」

「どうも、お手数とご迷惑をおかけしました」

こうして珍事件は幕を閉じました。

手放した背景に思いをはせる

置き主の正体には興味がありません。本人もそれを希望するでしょう。ただそれでも、あのように大量なグッズをやむなく手放すことになった背景について考えずにはいられないのです。

家族や恋人、あるいは伴侶に放棄を促されたのか。単純に飽きたのか。突然むなしくなったのか(わたし自身よくそうなります)。

いろいろあるでしょうが、集めたグッズをその生が終わるときまで所持し続けることは、精神的にも物理的にもなかなか困難なのかもしれませんね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?