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調剤薬局は儲かるのか?薬局経営の現状と上手に経営する方法をご紹介

薬局経営者の皆様、これから薬局を開業視聴と考えている皆様は、「薬局の開業・経営は儲かるのか?」「薬局を始めたいけど経営の実際はどうなのか」という疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか?

今回の記事では、調剤薬局が実際に利益がでる(儲かる)事業なのか、また利益を生み出すためにどうしたら良いのかといった具体的な方法について詳しく説明します。


調剤薬局は儲かるのか?


結論から言うと、年々厳しくなってきていますが、調剤薬局の経営で適切に利益を出す(儲かる)可能性は十分にあると言えるでしょう。

もちろん”経営”ですので、簡単ではないですし、リスクもあります。

しかし、病院勤務をやめて、自ら薬局を経営する薬剤師さんで、勤務薬剤師時代の何倍もの所得を得ている方も多くいらっしゃいます。

では、どの様にすれば適切に利益をだせる薬局を作ることができるのか、業界の流れから成功するための施策についてお伝えします。


調剤薬局の売上の構成

調剤薬局の売上の構成は、

患者単価 × 患者数です。

※もう少し詳細に分解すると、調剤技術料、薬学管理料、薬剤料、特定保険材料料などに処方箋枚数を掛け合わせたもので決まります。

しかし、単価は薬価で全国一律に定められており、薬剤師の一人当たりの1日平均処方枚数は40枚までとされています。

そのため、薬局の利益を増やすには、いかに多くの患者さんにきていただけるかと、いかにコストを抑えるかということが重要です。


●調剤薬局の利益率は5.5%
厚生労働省の調べによると、調剤薬局の利益率は、大病院の門前薬局が5.5%、クリニック敷地内薬局は11.5%であり、厚生労働省による「平成 28 年度 調剤医療費(電算処理分)の動向」から推計によると、平均で薬剤師一人当たりで年間売上6000万円以上を作ることができます。

特にクリニック敷地内薬局は利益率で10%以上を確保できると考えると、他業種と比較してもしっかり利益が出ると言えると思います。

調剤薬局を取り巻く外部環境
調剤薬局は、経営に影響する様々な外部環境の変化が起きています。薬局経営を考える上で重要な要素となりますので、解説していきます。

●診療報酬、薬価改定の影響
調剤薬局は、店舗ごとに薬の処方や価格を決められるわけではなく、医療保険制度の中で全国一律に定められています。

そして、社会保障費の増大が進む中、2年に1回行われる診療報酬の改定、薬価の改定(※)において年々報酬につながる部分が下げられて行っている現実があります。

表1、表2をご覧いただくとわかるように、診療報酬の改定ごとに、薬価が大きく引き下げられており、処方箋1枚当たりの調剤医療費が今後も減少することが予測されます。年々薬局の経営と言う観点からいくと厳しくなってきていると言えます。

表1診療報酬改定率の推移

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厚生労働省「診療報酬改定について」より作成

表2:処方箋一枚あたりの調剤医療費

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厚生労働省「平成 28 年度 調剤医療費(電算処理分)の動向」より作成

●大手グループの事業エリア拡大
先ほどお伝えした通り、調剤薬局は個人経営(パパママ薬局とも呼ばれる)の店舗が多く、その中で経営者が高齢化し、後継者がいない薬局をグループ薬局が買収するといったM&Aの動きも活発になっています


●異業種の参入
近年では、OTC医薬品販売が他業種に解禁されたことで、EコマースサイトやコンビニエンスストアなどでOTC医薬品を購入することができる様になりました。


薬局経営で患者さんを増やすための施策

先ほどもお伝えしましたように、薬局の収益構造は、患者単価×患者数であり、より多くの患者様に来ていただくことが重要です。

基本的に、薬局が患者さんを直接集めるための宣伝をすることは医療広告規制の関係上難しいことが多いです。そのため、患者さんに多くきていただくための施策としては下記が挙げられます。

・立地
・チラシ
・ポイント
・地域貢献活動(イベント)
・調剤薬局の経営の仕組み

しかし、患者さんからすると調剤薬局は「薬をもらうところ」というイメージが強く、サービスでの差別化を測りにくいため、基本的に集客の肝は「近いから」「かかった医療機関のそばにある」ことが来店の理由になります。基本的に集客に強い立地というのは下記になります。

そのため、調剤薬局として繁盛するためには、多くの患者さんがくる医療機関の門前に出すこと、が最も患者数を獲得するための重要な施策になります。

●住宅街で住民が多い立地を選ぶ
人気の医療機関の門前薬局という立地は、大手薬局やドラッグストアが豊富なコネクションを通じて独占していたりするため、個人の薬剤師では難しい部分があります。そのため、医療機関の蕎麦ではなく、住宅街などの人口が多い場所に構えることも良い戦略になり得ます。その際は、単に薬を渡す場所ではなく、健康相談に対応したり、OTCや物販を豊富に用意し、患者さんの健康のお悩みに親身になって答えられる体勢を構築することが大切です。

または、在宅へ力を入れることも住宅外にある薬局の戦略として有効と言えます。

しかし、立地に頼るだけでなく、後述する様なファン化するための施策出会ったり、チラシやポイントを採用することで固定客化することができれば、効果はありますし、地域イベントを開催する薬局も増えています。例えば、住民向け健康相談会や、講演会、地域住民向けの薬剤師体験など。または、地域のクリニックや病院が行うイベントに協賛することで認知度を高める方法もあります。

●単価を上げるための施策
薬価を変えることはできませんので、診療報酬に定められている加算を取得することで実現できます。診療報酬改定においては、2020年どの調剤報酬改定では、薬局の役割として「かかりつけ機能の強化」や「対物業務から対人業務へのシフト」がより求められるなど、より手厚く患者様への対応が求められる方向性となりました。

主な加算としては、後発医薬品調剤体制加算と地域支援体制加算の取得を目指すことで単価の向上につながると考えます。

●保険外(物販、OTC)の売上をふやす
近年社会保障費の増大により医療費削減が叫ばれており、薬価改定においても毎年の様に、引き下げが起こっています。

そのため、保険での報酬だけでなく、物販やOTCによる保険外で収益の柱を作っていこうと考える薬局も増えてきました。

しかし、多くの門前薬局様ではまだまだOTCや物販比率は低く、経営の柱にはなっていない印象です。

●ファン化するための施策
薬局は、積極的な広告活動に制限があるため、広告以外で患者さんに選ばれる様になる必要があります。

・店舗ないの環境整備
・患者さんが入りやすいと感じられる店構えか
・いつでも気軽に相談できる過ごしやすい雰囲気か
・清潔感のある店舗か
・感染対策がしっかりしているか

といった要素が重要になります。

●医療機関との連携
医療機関とのスムーズな連携ができているかどうかも重要です。処方内容に対する疑義照会や処方医へのフィードバック、処方への提案といった連携が取れていると患者様の信頼感が高まります。

この部分は、ハードルが高い部分ではありますが、医療機関との日頃からのコミュニケーションが大切です。

●待ち時間を削減する
待ち時間の削減は非常に重要な要素です。

多くの患者さんがクリニック受診で待ち時間を体感しています。診察の待ち時間、会計の待ち時間を含め、医院の滞在時間が2時間以上ということも当たり前にあります。

そして、さらに薬局でも「待たされる」という感覚を持ってしまうと、患者さんの足が薬局から遠のいてしまうと言えます。

「薬局で待たされるから院内処方のクリニックに行く」という流れができてしまうとクリニックの患者さんにも影響が出る可能性があるため、待ち時間削減は非常に最重要課題と言えます。

●スタッフの服薬指導・接客スキルを高める
「服薬指導」は薬局の最重要業務であり、患者さんの満足度に影響する研究でも最も満足度を高める要因として、「服薬指導」が挙げられています。

単に医療機関から処方された薬を処方するだけでなく、過去の処方歴など患者さんの状態を把握し、残薬管理や、ジェネリック医薬品のご案内、正しい服薬の仕方を指導する、といった患者さんへ適切な情報を提供できているかを常に意識することが大切です。

しかし、日々忙しい薬剤師がそういった対応ができる様にするためには、薬剤師の業務効率化が重要になります。在庫管理、ピッキング、お会計対応など薬剤師が本来やるべき業務でないものであれば、受付事務の採用をしたり、ITや機械に投資を検討すべきです。

また、スタッフの接遇が課題に上がる薬局では、外部講師を招いて接遇研修を行う薬局様も多くあります。しかし、スタッフに話を伺うと「忙しすぎてそれどころではない」という訴えをよく聞きます。ですので、スタッフの対応が悪いから、接遇の研修をしようと安易に行ってしまうと逆にスタッフの反発を買う恐れがあります。

そのため、

業務の見直し→業務の効率化(人、IT投資)→開いた時間で接遇を強化

という手順を適切に追って対策をしていく必要があります。


調剤薬局の支出を抑える方法

先ほどはより多くの患者さんに来ていただくことについて述べましたが、次は、いかに、支出を抑えるか、コストを抑えるかについてお伝えします。

一般的な視点ではなく私の独自の視点でお伝えしたいと思います。

まず、調剤薬局で最も大きな支出とはなんでしょうか?

ちょっと考えてみてください・・・

正解は人件費です。

令和2年度のTKC経営指標(要約版)を見ると、下記のようになります。

人件費率:23.6%
労働分配率:66%

他業種と比較しても圧倒的に人に関わる部分の支出が大きいことがわかります。

では、「人件費を減らすために、給与を抑えよう!」「賞与カットしよう!」という安易な洗濯をしてしまうと、人材の質の低下、職員採用が困難になり、さらには職員の定着も下がる可能性が高まります。

そのため、既存職員の人件費を抑制するのではなく、下記ような対策を行うことが良いと考えます。

●採用コストを削減する
調剤薬局は、薬剤師がいないと成り立ちません。そのため、薬剤師の採用に躍起になり人材紹介会社や採用媒体に多くのコストを費やすことになります。

人材紹介会社は、仮に採用できたとしても紹介フィーに、人材の年収の20%〜30%ほどかかってしまい、一人採用するのに、200万円ほどかかることも往々にしてあります。

そのため、人材紹介会社を使わなくても採用できる様、自社のホームページや学生からの採用といったダイレクトで採用できる仕組みを構築することが大切です。

●労働環境をよくする
職員が定着せず、せっかく採用したのに辞めてしまう、となってしまっては、採用コストを下げても意味がありません。そのためには、職場環境をよくし、職員が働きたいと思える職場環境づくりに注力する必要があります。

●IT・機械投資による生産性向上
生産性向上のシステムを導入して労働コストを削減する、という方法もあります。

先述した様に、人でなくてもできる仕事をITや機械に任せて、生産性をアップさせることができれば、残業代を削減できたり、就業時間以内により多くの処方を受けることができることで、コスト削減ができます。

例えば、勤怠管理システム、ピックアップ機、電子薬歴システム、自動精算機といったシステムは適切に導入できれば非常に業務効率化になるため、経営的にもメリットを享受できるでしょう。


まとめ

今回は、「調剤薬局は儲かるのか?」というテーマについてお伝えさせていただきました。

全国に6万件程度ある薬局ですので競合が多いことも事実です。しかし、業界の流れをおさえ、適切の立地や患者満足度を高める施策を行うことができれば、儲かる薬局を作ることは十分できると考えます。

特に、薬局のコアなサービスが薬剤師の「服薬指導」です。その部分で高い価値を患者様に与えるためには、積極的な業務効率化、IT化・機械化への取り組みを行う必要があると言えます。

弊社では、薬局のお会計業務をなくす」ことをモットーに、薬局のレセコンと連動した自動精算機(ファーマキューブ)をご用意しております。ホームページから詳細を知ることができますので、ぜひ一度ご覧になってください。

それでは。最後までお読みいただきありがとうございました。


〈参考〉

厚生労働省「平成28年度診療報酬改定について」
厚生労働省「平成 28 年度 調剤医療費(電算処理分)の動向」
平成 28 年度 調剤医療費(電算処理分)の動向
調剤医療費における技術料の動向について
調剤医療費の動向と調剤薬局の経営概況
(株)フォーバル/調剤薬局業界動向調査レポート
東京商工リサーチ「TKC経営指標」

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