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ニューノーマル=企業と個人の新しい関係

コロナ禍のパラレルワールド

10年以上前になるが、村上春樹の「1Q84」を読み、いまだに私の中で「パラレルワールド」という概念が心を占めている。もしかすると、この世界と違う世界が隣り合う世界として存在し、2つの違う世界を意識しないまま行ったり来たりしているのではないか、そんな感覚を持っていた。

コロナ禍によって強制的に移行したテレワーク世界に慣れるに従い、ふっとその「パラレルワールド」の感覚が蘇ってきた。私がZOOMを通して2つの地域の方々とつながって打ち合わせをしているとき、リビングでは娘が40の地域の人たちとつながり授業を受けている。存在する空間と過ごしている時間は共有してるが、体験している世界は全く別である。これって、「パラレルワールド」かも…と思ったのである。

私の仕事空間はサイバー空間にあり、娘の授業空間もサイバー空間にある。しかしながら、仕事空間に身を置きながら、娘の授業空間で何が起こっているのか断片的に感じることが出来る。そう、2つの違う世界を意識しないまま行ったり来たりしているのである。

そして、それぞれの世界に行っていた意識が、PCを閉じた瞬間に自宅というリアルな空間に戻るのである。

コロナ前にもパラレルワールド

日比谷公園の会議室でセミナーを開催していたころ、公園にはスマホをかざした大人たちが集まっていた。彼らを縫うように歩きながら日比谷公園内の図書館へ足を運んでいたことがある。彼らの目には、図書館へ急ぐ私の姿は映っていない。スマホの画面を通して、私には見えないモンスターを探している。もっといえば、ポケモンの世界も人数分(端末分)の別の世界が展開されている。無数の世界が同じ空間に同居しているのである。

「個人の前提の差=企業の生産性の差」という世界へ

ニューノーマルをどのような前提にするかによって、同じ空間にいてもその人のつながる世界が違ってくる。例えば、同じ会議室で顧客へのプレゼン内容を議論しているとして、一方は客先へ出向いてプレゼンをすることを前提とし、一方はリモートでプレゼンすることを前提としたとする。

前者の前提だと、調整の時間も、プレゼン当日の時間も、そして移動コストも、後者よりも多く費やすことになる。仮に後者と前者が費やす時間やコストに2倍の差があると仮定すると、プレゼン先の前提が前者か後者かによって、この2社の取引は最大4倍の生産性の差になるのである。

前述の差は「テレワーク活用の差」であるが、テクノロジーの進化はさらに速度を上げていく。荒っぽい言い方だが、最新テクノロジーの導入を他社の導入状況を見てから考え始める企業はそれ自体がハンディとなる。取引相手の生産性を下げるからである。

最新テクノロジーの活用は生産性に直結する。今後、DXへの取り組みは一気に促進されることになるだろう。コロナによる「強制テレワーク実験」は、日本が1周遅れにならないための強制バージョンアップであり、最後の警鐘のような気がする。

最後の警鐘を活かすためには、以前の方が使いやすいからと旧バージョンに戻すことのないようにしていただきたい。テクノロジーは単体の機能アップだけではないのである。「バージョンアップすることでボタンの位置が変わった」などはどうでもよく、5Gを前提としたアプリを使えることに意味があるのである。

ニューノーマル=企業と個人の新しい関係

同じ職場、同じ空間にいても、個人の前提が違えば見えている世界が違っている。旧い前提に影響されないように、企業も個人も注意が必要である。

「企業」は社員が個人の前提をバージョンアップしやすくする環境をつくることが必要になってくる。つまり、最新バージョンの社員比率を上げることが生き残る道だと思う。自社で出来なければ自社にない環境でバージョンアップしてきてもらうのである。副業解禁はこういった側面も含んでいる

「個人」は、会社がバージョンアップしやすい環境を作れなくても、自ら個人の前提をバージョンアップしておく必要がある。また、会社はバージョンアップしやすい環境を整えることはできても、バージョンアップはしてくれない。自ら最新のテクノロジーにアンテナを立て、試してみる。試したら前提が変わる。これを繰り返していくのである。

新しいバージョンだから見える未来がある。見えた未来を提案しよう。理解されない環境なら、理解される環境を探してみよう。副業として、フリーランスとして、ボランティアとして。

「ニューノーマル=個人の前提をバージョンアップする社会=副業解禁+キャリア自律=企業と個人の新しい関係」

企業と個人が力を合わせて、人材の流動性を上げていく。パラレルキャリアを推進して、個人の前提をバージョンアップさせておく。これが、私の副業解禁、キャリア自律の相互作用的解釈である。

企業と個人の新しい関係を応援いたします!



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