遠隔授業と著作権法

COVIT-19対策として、インターネットを用いた遠隔授業を行おうという動きがあるが、それが著作権法の壁によって阻まれているということが話題となっています。確かに、現行著作権法第35条2項では、その授業が行われている場所で直接その授業を受けている者がおり、かつ、その授業と遠隔授業とが同時に行われていることが、その著作権者の許諾を得ずに、その授業の過程における利用に供することを目的として、公表された著作物を遠隔地にいる受講者に送信するための条件となっています。このため、COVIT-19対策のために、全学生を自宅待機させたまま遠隔授業を行う場合、第三者の著作物を活用することがやりにくくなります。引用の要件を具備する範囲内での利用に留めるか、あらかじめ許諾を得ておくことが必要になります。

しかし、実のところ、平成30年改正で著作権法第35条は大幅な改正がなされており、改正法ではこの問題はだいぶ解消されます。つまり、その授業が行われている場所で直接その授業を受けている者がいなくとも遠隔事業を受けている者に対して公表された第三者の著作物を公衆送信することができることとなっています(教育機関の設置者が相当な額の補償金を著作権者に支払わないといけないのですが。)。

ただ、問題は、上記平成30年改正法が、改正著作権法の公布の日である平成30年5月25日から3年以内で政令において定める日から施行されることになっているところ、未だ施行日が決まっていないので、現時点では、直接授業を受けている者抜きでの遠隔授業では、第三者の著作物の活用が制限されてしまっているのです。

であれば、対策は、大きく二つに分かれます。

一つは、上記平成30年改正法の施行日を前倒ししてしまうということです。「平成30年5月25日から3年以内で政令において定める日」であれば良いので、例えば、令和2年4月1日を施行日とすると政令で決めてしまえば良いのです。実際には、補償金の関係で省令等を整備しないといけない部分があるので今から4月1日を施行日とすることは難しいかもしれませんが、多くの大学が授業の再開を表明している4月の後半までに間に合わせることは可能です。

もう一つは、一人または数人の学生に、受講生を代表して、教室に来てもらうという方法です。現行法では、授業が行われる教室で直接授業を受ける者がいないと遠隔地にいる受講生に第三者の著作物を公衆送信することができないのですが、授業が行われる教室で直接授業を受ける者の数については特段の規定がありません。ですから、代表者が一人授業が行われる教室にいて生で授業を受けていれば要件はクリアできます。更に言えば、授業が行われる場所は「教室」である必要もないので、教員が研究室内で授業をインターネット上で受講生に生配信する場合でも、その研究室内に受講生の代表が一人いれば要件はクリアできます。

講師と学生との間隔を2メートル以上話すとともに、講師はなるべく学生の方を向かずに話をするようにすれば、万が一その講師が感染していても飛沫感染する危険は少なくなるのではないかと思いますし。研究室が与えられたことがないので、どの程度換気が良いのか知りませんけど。


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