名誉毀損になる場合とならない場合

 さて,以下の表現のうち、A弁護士の名誉を違法に毀損したことになるのは、どれとどれでしょうか(ただし、特に言及がない限り、真実性の証明はなされていないものとします。)。

① 「A弁護士は、事務員をレイプした」

② 「A弁護士は、事務員をレイプしたらしい」

③ 「A弁護士には、事務員をレイプした疑いがある」

④ 「A弁護士、事務員をレイプ!?」

⑤ 「A弁護士の所属事務所の事務員Bが突然退職したという事実からすると、A弁護士は、事務員Bをレイプしたと推認される」

⑥ 「A弁護士の所属事務所の事務員は、A弁護士にレイプされたと言っている」

⑦ 「A弁護士の所属事務所の事務員が最近退職したとのことだが、仮にそれは本当だとしたら、それはA弁護士にレイプされたからだと思う」

⑧ 「男女間トラブルは良くない。A弁護士は直ちに謝罪して慰謝料を支払うべき」としたうえで、「A弁護士は、事務員をレイプした」という第三者の発言を引用形式で紹介(ただし、当該第三者の発言の存在と内容は立証された。)

⑨ 「A弁護士は、A弁護士の所属事務所の事務員Bをレイプした」(ただし、Aが弁護士であること、BがA弁護士の所属事務所の事務員であることは、真実性が立証された)

 実のところ、名誉毀損における下級審の運用はバラバラで、上記①〜⑨まで、どれも請求が棄却されても不思議ではありません。①とかどうやったって名誉毀損が成立するように見えますが、最近の下級審判決では、具体的な根拠が示されていない場合、単に意見・論評を述べただけだから、社会的評価が低下しないと認定するものが少なくないのです。


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