不同意わいせつ罪について──その2

第3号では、「アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること」により、同意しない意思を形成し 、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をする行為が犯罪とされます。

 現行法では、飲酒の影響により「抗拒不能」すなわち要求を断ることが物理的又は心理的に著しく困難である場合にはじめて準強制わいせつ罪が成立しますが、改正法では「著しく」の要件は付されていません。したがって、不同意わいせつ罪成立に必要な飲酒による判断力低下の程度は、準強制わいせつ罪成立に必要な飲酒による判断力低下の程度よりも相当緩やかであるものと思われます。

 問題はどこまで緩やかかです。

 飲酒は、少量であっても、脳の判断機能を低下させます。とりわけ、アルコールは、理性を司る大脳新皮質の活動を低下させ、その分、性欲等を司る大脳辺縁系の活動を活発化させますので、素面ならば受け容れないような性的接触を、酒に酔った状態では受け容れてしまう場合がしばしばあります。そのような泥酔に至らない脳の判断機能の低下による性的接触については強制わいせつ罪に含まれませんでした。しかし、改正法では、アルコールの影響により「同意しない意思を形成し 、表明し若しくは全うすることが困難な状態」になっていれば良いので、飲酒の影響で理性が低下した結果受け容れられた性的接触についても、不同意わいせつ罪が成立する危険があります。

 酔うとキス魔になる女性がたまにいます。酔っ払ってキス魔になっている女性のキスをありがたく受け容れた場合に、3号の不同意強制わいせつ罪は成立するのでしょうか。文言上は「同意しない意思を形成し 、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて」とありますから、性的な接触をすることを自ら積極的に持ちかけた側のみが不同意わいせつ罪に該当するようにもみえます。

 ただし、刑法には「不真正不作為犯」という解釈手法があるので、アルコール窃取の結果性的に奔放になっている女性からの性的接触要求を受け容れるべきでないとする何らかの作為義務を認めてしまえば、これに反してキスを受け容れた男性について、不同意わいせつ罪が適用される可能性は十分にありそうです。

 なお、3号の不同意わいせつ罪においては、「アルコール若しくは薬物を摂取させること」を実行行為に含めていますので、「あわよくば、素面では断られるような性的接触をしよう」という意図で女性に酒を飲ませようとして時点で、実行の着手が認められ、未遂犯として処罰されることになるのではないかと思います。

 なので、今後は、合コンは、処罰されるリスクの高い行為になったといえそうです。
(続く)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?