出勤7割削減なんて無理

 安倍首相は、企業に対して、出勤者を最低でも7割減らすように要請しました。

 しかし、基本的に、テレワーク化することで出勤者を減らせるのは、専ら情報を作成し、加工し、伝達し、媒介する業務に従事している人たちだけです。

 これに対し、物(有体物)を作成し、加工し、輸送し、交付する業務は、基本的にテレワーク化することができません。また、物理的な存在としての人を相手にする業務も、基本的にテレワーク化することができません。医療介護だけではなく、人を運ぶ業務や、侵入してくる人を取り押さえる業務も、現在の技術水準では、人が現場に行かないと遂行できません。もちろん、動植物を育てる業務も、基本的にテレワーク化できません。動物園で出勤する従業員を7割減らしたら、おそらくかなりの動物が死にます。

 古市憲寿氏は「今はもうほとんどのことがスマートフォンでできるじゃないですか。」と言ったそうですが、私たちの生活は、未だスマートフォンでできない仕事によって支えられているのです。

 政府等による外出自粛要請や「Stay at Home」キャンペーンに対する違和感の1つは、そういうテレワーク化できない業務に従事している人びとの存在が多分に無視されているところにあるように思います。平時には日本の「物づくり」を自画自賛していた人々が、緊急時には、頭の片隅から「物づくり」に従事する人々のことを消し去ってしまっていることに違和感を覚えるのです。

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