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ラムのカレー、いわゆるマトンカレーではない

今日、お昼に食べたカレーの話だ。初めて食べたカレーではない。大好きだからよく食べている。イマドキのJKなら、否、イマドキの人間なら写真をアップするところだろう。俺はしない。美味しそうなメシを目の前にして、それを即座に食べるのではなく、彼らは撮影という儀式を先に行わなければいけない。キリスト教徒が家族で手を取り合ってお祈りしてからメシに手をつけるように。

そんなストイックな真似は俺にはできない。すぐ手の届くところに美味いメシがある。食べる以外の選択肢はない。

カレーは小肥羊という火鍋料理屋のお弁当だ。きっとコロナ禍で鈍った客足を取り戻すための商品だろう。各店がテイクアウト商品を開発する中で、この羊のカレーはダントツでトップだ。日本一だ。間違いない。それくらいウマい。

インド料理屋に行くと、ほぼ確実にマトンカレーがメニューにある。羊肉のカレーだ。インドカレー独特のスパイスの風味に、羊の濃い香りが混ざっていて美味しい。

チキンカレーやグリーンカレーといった、「カレー」に修飾語をつけるのはインド料理店だけである。ルーは粘度が低く、ほぼスープ状のものだ。粘度の高い日本のカレーを修飾する特権は無印良品が独占している。(キーマカレーだけは日本で市民権を得た)

小肥羊のカレーはマトンカレーではなくて、ラムのカレーと呼びたくなる。インド料理屋で食べるマトンカレーとまるで違うからだ。

粘り気の強いルーであるにもかかわらず、羊肉の風味がしっかりと溶け込んでいる。羊特有の臭みは全くない。羊肉もジャガイモやニンジンも、溶けてしまうギリギリの柔らかさまで煮込んである。殊に肉は筋っぽさが全くない。火鍋料理専門店であるだけあって、辛味のスパイスも絶妙だ。

サックス奏者の右手の親指にはタコがあるらしい。楽器の重さを親指で支えるからだ。たくさん練習している人ほど大きなタコができる。その人がいいプレイヤーであることの証明は、親指を見れば十分であるそうだ。

マトンカレーではなくラムのカレーであることの証明は、福神漬けとらっきょうが添えてあることを見れば十分である。正真正銘、日本のカレーとして勝負に出ている。そしてその勝負で、(ルーキーにもかかわらず)圧巻の成績を収めているのだ。

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