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ChatGPT で特許拒絶理由をらくらく分析して応答案を作成?!

1.はじめに

本稿は、ChatGPTの活用シリーズ第2弾であり、ChatGPTで特許拒絶理由をどこまで分析して応答案を提案できるかを記載したものです。ChatGPTの出現により、弁理士は、その役割を終えてしまうのでしょうか。なお、使用したのはChatGPT4(有料版)です。

2.対象案件の選択基準

 対象とした案件は、拒絶理由通知を受けた後に意見書と補正書を提出し、特許査定を受けたものを選択しました。特許査定を受けた案件の応答案は、正しい応答であったと推認できます。このとき、拒絶理由通知に基づいてChatGPTが提案した応答案と、実際の応答案とを比較しました。

3.特願2009-024418

(1)請求項

 本事例は、ガラスに関するパラメータ発明で、かつ36条の拒絶理由を受けたものです。

【書類名】特許請求の範囲
【請求項1】
車外側ガラス板、中間膜、赤外線反射膜付きプラスチックフィルム、中間膜、車内側ガラス板の順に積層された車両用窓に用いられる断熱合わせガラスであって、
(1)車外側ガラス板の日射透過率が85%以上であり、
(2)車外側ガラス板と赤外線反射膜付きプラスチックフィルムとの間に用いられる中間膜の日射透過率が85%以上であり、
(3)赤外線反射膜付きプラスチックフィルムの日射反射率が20%以上であり、
(4)赤外線反射膜付きプラスチックフィルムと車内側ガラス板との間に用いられる中間膜の日射透過率が75%未満であり、
(5)車内側ガラス板の日射透過率が75%以下であであることを特徴断熱合わせガラス。
【請求項2】
断熱合わせガラスの可視光線透過率が70%以上であることを特徴断熱合わせガラス。
【請求項3】
赤外線反射膜が、高屈折率の酸化物膜と低屈折率の酸化物膜とを交互に積層してなる多層膜であることを特徴とする請求項1に記載の断熱合わせガラス。
【請求項4】
赤外線反射膜が、屈折率の異なる2種類のポリマー薄膜を交互に多数積層してなることを特徴とする請求項1に記載の断熱合わせガラス。
【請求項5】
赤外線反射膜が、金属膜であることを特徴とする請求項1に記載の断熱合わせガラス
【請求項6】
赤外線反射膜付きプラスチックフィルムより車内側に配置される中間膜が、赤外線の吸収材として導電性酸化物の粒子を含有してなることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の断熱合わせガラス
【請求項7】
車内側ガラスが着色ガラスでなることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の断熱合わせガラス。

特願2009-024418の請求項

(2)起案日 平成24年8月21日 拒絶理由通知書

  以下の拒絶理由通知書の要点を太字で記載しました。

1.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
2.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
3.この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
4.この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

      記   (引用文献等については引用文献等一覧参照)

1.理由1、2について
理由1・請求項:2、6、7
   ・引用文献:1
理由2・請求項:1-7
   ・引用文献:1
・備考:
(請求項2、6、7について)
 引用文献1の請求項1、8、段落【0001】、【0012】、【0015】、【0016】、【0037】、実施例1、2、7、表1参照。
 引用文献1には、中間膜を介して少なくとも2枚以上のガラスを積層した車両用の合わせガラスで、車内側(熱源反対側)のガラスとして、着色ガラスたるグリーンガラスを用い、該合わせガラスの可視光透過率Tvが70%以上のものが記載されている。また、引用文献1には、導電性酸化物であるSbドープ酸化錫(ATO)、Inドープ酸化錫(ITO)等の微粒子を、赤外線遮蔽性微粒子として前記中間膜に含ませることも記載されている。
 したがって、本願請求項2、6、7に係る発明と引用文献1記載の発明との間に差異は見出せない。

(請求項1、3-5について)
 引用文献1には、上記「(請求項2、6、7について)」で指摘した事項に加え、前記中間膜が、日射反射率10%以上の反射膜を有し、熱線反射プラスチックフィルムが2枚のポリビニルブチラール、エチレン-酢酸ビニル共重合体等からなる中間膜間に挾まれたものであること、該反射膜が多層光学干渉樹脂フィルム、金属及び/又は金属酸化物の単層ないし多層膜であることが記載されている(特許請求の範囲、段落【0012】-【0016】、【0019】-【0028】、【0033】-【0035】参照)。そして、引用文献1の実施例には、車外側(熱源側)ガラスの日射透過率Te、車内側(熱源反対側)ガラスの日射透過率Te、反射膜の日射反射率Reがいずれも本願請求項1の規定を満足するものが記載されている(表1参照)。
 一方、引用文献1には、熱線反射プラスチックフィルムを挾む2枚のポリビニルブチラール、エチレン-酢酸ビニル共重合体等からなる中間膜の日射透過率Teについて、具体的記載はない。
 しかしながら、引用文献1に開示される合わせガラスは、車外側(熱源側)に高透過率、車内側(熱源反対側)に低透過率のガラスを積層したものであり、これにより、車外側(熱源側)へ反射された日射がガラスに吸収されるのを抑え、車内側への赤外線の放射を抑制し、車内への熱の侵入、温度上昇を防いでいる(請求項1、5、6、段落【0012】、【0015】、【0041】-【0044】参照)。
 してみると、引用文献1記載の発明において、上述の効果を確実に得るため、熱線反射プラスチックフィルムを挾む2枚の中間膜の日射透過率Teを、隣接するガラスの日射透過率Teと同程度とし、車外側(熱源側)中間膜は高透過率、車内側(熱源反対側)中間膜は低透過率のものとすることは、当業者が容易になし得る事項と解される。

2.理由3について
・請求項:1、2、5、6
(請求項1について)
 請求項1の「~であであることを特徴断熱合わせガラス。」という記載は、「~であることを特徴とする断熱合わせガラス。」の誤記と解される。

(請求項2について)
 請求項2の「~であることを特徴断熱合わせガラス。」という記載は、「~であることを特徴とする断熱合わせガラス。」の誤記と解される。

(請求項5、6について)
 請求項5、6の「~に記載の断熱合わせガラス」という記載は、「~に記載の断熱合わせガラス。」の誤記と解される。

3.理由4について
(1)段落【0086】(実施例2)の「実施例2と同様の誘電体の多層膜」、「この赤外線反射膜付きプラスチックフィルム12の熱収縮率」との記載は、それぞれ「実施例1と同様の誘電体の多層膜」、「この赤外線反射膜付きプラスチックフィルム22の熱収縮率」の誤記と解される。
(2)段落【0087】(実施例2)の「~他は、全て実施例2と同様にして」との記載は、「~他は、全て実施例1と同様にして」の誤記と解される。
(3)段落【0103】(比較例1)の「赤外線反射膜付きプラスチックフィル12」との記載は、「赤外線反射膜付きプラスチックフィルム12」の誤記と解される。

特願2009-024418 起案日 平成24年8月21日 拒絶理由通知書

(3)ChatGPTの分析

ChatGPTのプロンプトに、「請求項と拒絶理由条文と引用文献の対比表を、請求項順に作成してください。」と指示しました。

ChatGPTによる対比表

 請求項3-5、請求項5,6、請求項6,7のように纏めて記載している部分がありますが、この記載は寧ろテーブルを圧縮できてよいという考えもあります。
 なお誤記の指摘は、明細書に対するものなのですが、「請求項全体」と誤解しています。

・次にChatGPTのプロンプトに、「請求項と、新規性と進歩性に係る拒絶理由条文と引用文献の対比表を、請求項順に作成してください。明確性とサポート要件は不要です。」と指示しました。

ChatGPTによる対比表

 上記対比表のうち、請求項1,3-5の「対応する引用文献の部分」欄に「特許請求の範囲」が抜けています。更に、請求項1、5、6、段落【0012】、【0015】、【0041】-【0044】の記載も抜けています。このようにChatGPTは、細かな部分がいきなり抜ける場合がありますので注意が必要です。

 次に、ChatGPTのプロンプトに「請求項と、誤記に係る拒絶理由条文の対比表を、請求項順に作成してください。」と指示しました。

ChatGPTによる対比表

 次に、意見書を作成するよう指示しました。なお、最初に意見書を作成させたとき、誤記の指摘に対して補正無しに反論しようとしていたので、誤記を補正するようにプロンプトに追記しました。

理由1・2について
請求項:2、6、7
引用文献1に関連するとされる請求項2、6、7ですが、文献1には確かに中間膜を介して2枚以上のガラスを積層した車両用の合わせガラスが記載されています。しかし、私の発明には引用文献1には記載されていない独自の要素が含まれています。その詳細な差異は特許出願書に記載しておりますので、再度確認いただきたくお願い申し上げます。

請求項:1-7
引用文献1には中間膜の日射透過率Teについて具体的な記載がありません。私の発明では、この日射透過率Teについて独自の工夫を加えています。これは当業者が容易になし得る事項ではなく、独自性と新規性があると考えます。

理由3について
請求項:1、2、5、6
確かに指摘された通り、請求項に誤記がありました。これは明らかな打ち間違えであり、本来の意味するところは問題なく伝わると考えます。この点に関しては、修正書を提出する予定です。

理由4について
文書内の各段落で指摘された誤記は、確かに誤記であります。しかし、これは明らかな瑕疵であり、修正することで発明の本質に何ら影響を及ぼさないと考えます。この部分に関しても、修正書を提出する予定です。

ChatGPTによる応答案

・請求項2,6,7に対する理由1・2の反論
 「私の発明には引用文献1には記載されていない独自の要素が含まれています。」とは、随分と含みのある記載です。具体的な記載は知らないけどあとは任せたと言わんばかりです。
・請求項1-7に対する理由1・2の反論
 「私の発明では、この日射透過率Teについて独自の工夫を加えています。」との記載も同様です。具体的な記載についてはプロンプトからは取得できないので、提案できないのでしょう。
・理由3の反論
 「補正書を提出する予定です。」として、拒絶理由に承服しています。これはプロンプトの指示とおりです。

(4)起案日 平成25年 5月30日 意見書と手続補正書

 以下に、上記拒絶理由通知に対する現実の手続補正書の要点を示します。誤記と指摘された箇所を補正しているのみで、実質的な補正なしです。

  【書類名】特許請求の範囲
  【請求項1】
車外側ガラス板、中間膜、赤外線反射膜付きプラスチックフィルム、中間膜、車内側ガラス板の順に積層された車両用窓に用いられる断熱合わせガラスであって、
(1)車外側ガラス板の日射透過率が85%以上であり、
(2)車外側ガラス板と赤外線反射膜付きプラスチックフィルムとの間に用いられる中間膜の日射透過率が85%以上であり、
(3)赤外線反射膜付きプラスチックフィルムの日射反射率が20%以上であり、
(4)赤外線反射膜付きプラスチックフィルムと車内側ガラス板との間に用いられる中間膜の日射透過率が75%未満であり、
(5)車内側ガラス板の日射透過率が75%以下であることを特徴とする断熱合わせガラス。
  【請求項2】
断熱合わせガラスの可視光線透過率が70%以上であることを特徴とする請求項1に記載の断熱合わせガラス。
  【請求項3】
赤外線反射膜が、高屈折率の酸化物膜と低屈折率の酸化物膜とを交互に積層してなる多層膜であることを特徴とする請求項1に記載の断熱合わせガラス。
  【請求項4】
赤外線反射膜が、屈折率の異なる2種類のポリマー薄膜を交互に多数積層してなることを特徴とする請求項1に記載の断熱合わせガラス。
  【請求項5】
赤外線反射膜が、金属膜であることを特徴とする請求項1に記載の断熱合わせガラス
  【請求項6】
赤外線反射膜付きプラスチックフィルムより車内側に配置される中間膜が、赤外線の吸収材として導電性酸化物の粒子を含有してなることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の断熱合わせガラス
  【請求項7】
車内側ガラスが着色ガラスでなることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の断熱合わせガラス。

起案日 平成25年 5月30日 手続補正書

 そして、意見書の要旨は以下です。最初に引用文献1における論理構成の矛盾について指摘しています。

 しかしながら、引用文献1の表1から実施例3、14を抜粋して記載した下記表2に示したように、実施例14においては、反射膜の日射反射率が16.2ではあるものの、熱源側ガラスの日射透過率Teが52.1と、反対側ガラスのTe57.3より低透過率になっているにもかかわらず、得られた合わせガラスでは、Teは38.1と低く、温熱性能も良好で、◎の評価となっている。この実施例14の合わせガラスの性能は、表2から明らかなように、反射膜及び反対側ガラスの構成を実施例14と同様として、熱源側ガラスにTeが87.7の透明フロートガラスを用いた実施例3で得られた合わせガラスの性能と同等ということができる。
 すなわち、実施例14は、「a)少なくとも2枚以上のガラスを積層した合せガラスにおいて、b)その中間膜に日射反射率が10%以上の反射膜を有し、」の構成要件は満足するが、「c)2枚以上の積層ガラスが日射透過率で5%以上の差を持ち、かつ、熱源側に高透過率、反対側に低透過率のガラスを積層したこと」の構成要件は満足しない。実施例14は、「熱源側に低透過率、反対側に高透過率のガラスを積層した」構成となっているにもかかわらず、得られた合わせガラスは【0010】【発明の効果】に記載されているように、「表1に示すように、本発明の実施例においては、可視光透過率が70.0%以上と高い値を示すにもかかわらず、裏面温度は大きく低下した。」という効果を示したのである。
 したがって、引用文献1は、独立請求項1の構成要件a)、b)、c)のうちのc)を満たさない合わせガラスであっても、目的を達成し得るものがあることを開示しており、引用文献1は特許法第36条第6項第1項、第2項の規定を満たさないものであり、引用文献1に開示された発明から、発明の効果を達成させるための構成は何であるかの技術的な教示ないし示唆を得ることは、当業者にとって、極めて困難であると思料する。

特願2009-024418 起案日 平成25年 5月30日 意見書
拒絶理由通知書に添付された表

 ここで出願人は、引用文献1には論理構成の矛盾があり、発明の効果を達成させるための構成は何であるかの技術的な教示ないし示唆を得ることは、当業者にとって極めて困難であると主張しています。
 更に、以下のように、引用文献1の構成と、本願の請求項1と対比しております。

 よって、赤外線遮蔽微粒子を中間膜に加えたとしても、「Al蒸着膜を形成した熱線反射プラスチックフィルムの日射反射率」を阻害しない少量となるはずであり、当業者といえども、引用文献1の特許請求の範囲、明細書の記載からは、本願の新たな請求項1の限定「(4)赤外線反射膜付きプラスチックフィルムと車内側ガラス板との間に用いられる中間膜の日射透過率が75%未満であり、」すなわち「中間膜2の日射透過率を75%未満とする」ことに想到し得ないと確信する。

引用特願2009-024418 起案日 平成25年 5月30日 意見書

 実際の意見書でもChatGPTと同様に、本願の中間膜の日射透過率をSTF(特別な技術的特徴)として、先行技術に対する差異としています。これは、ChatGPT の提案通りと言ってよいのではないでしょうか。
 本願では、上記の意見書と手続補正書により特許査定を受けています。

4.特願2014-169132

(1)請求項

 本願はインクジェットプリンタに関する発明です。特願2014-169132の審査対象の請求項を示します。なお、出願人は、出願審査請求と共に自発補正していますので、当初請求項とは異なります。

  【書類名】特許請求の範囲
  【請求項1】
 廃インク回収容器と、
 前記廃インク回収容器の第1の廃インク導入口に接続された第1の合流チューブと、
 第1のヘッドユニットのインクノズル面を覆う第1のキャップと、
 前記第1のヘッドユニットと異なるインクを吐出する第2のヘッドユニットのインクノズル面を覆う第2のキャップと、
 前記第1のキャップと前記第1の合流チューブとを接続する第1のチューブと、
 前記第2のキャップと前記第1の合流チューブとを接続する第2のチューブと、
 前記第1の合流チューブを経由して前記第1のキャップ内および前記第2のキャップ内を吸引する第1の吸引ポンプと、を備え、
 前記廃インク回収容器は、容器本体と、前記廃インクを吸収するインク吸収材と、前記第1の合流チューブが接続される第1の廃インク導入口および該第1の合流チューブとは異なるチューブが接続される第2の廃インク導入口と、前記容器本体の内壁面に形成され、前記第1の廃インク導入口および前記第2の廃インク導入口から導入されたインクが流れ落ちる流路と、を有し、
 前記インク吸収材は、前記流路との間に隙間を空けて配置され、前記第1の廃インク導入口および前記第2の廃インク導入口から導入されたインクは、前記廃インク回収容器の底部に到達する前に前記流路に設けられた合流部で合流することを特徴とする廃インク回収ユニット。
  【請求項2】
 前記廃インク回収容器に接続された第2の合流チューブと、
 第3のヘッドユニットのインクノズル面を覆う第3のキャップと、
 前記第3のヘッドユニットと異なるインクを吐出する第4のヘッドユニットのインクノズル面を覆う第4のキャップと、
 前記第3のキャップと前記第2の合流チューブとを接続する第3のチューブと、
 前記第4のキャップと前記第2の合流チューブとを接続する第4のチューブと、
 前記第1の吸引ポンプと独立して駆動され、前記第2の合流チューブを経由して前記第3のキャップ内および前記第4のキャップ内を吸引する第2の吸引ポンプと、を備え、
 前記廃インク回収容器は、前記第1の廃インク導入口と、前記第2の合流チューブが接続される前記第2の廃インク導入口と、を有することを特徴とする請求項1に記載の廃インク回収ユニット。
  【請求項3】
 前記第1のヘッドユニットはブラックインクを吐出し、前記第2のヘッドユニットはイエローインクを吐出し、
 前記第1の合流チューブで、前記ブラックインクと前記イエローインクが混合されることを特徴とする請求項1に記載の廃インク回収ユニット。
  【請求項4】
 前記第3のヘッドユニットはシアンインクを吐出し、前記第4のヘッドユニットはマゼンダインクを吐出し、
 前記第2の合流チューブで、前記シアンインクと前記マゼンダインクが混合されることを特徴とする請求項2に記載の廃インク回収ユニット。
  【請求項5】
 前記第1の混合インクは、ブラックインクとイエローインクを混合させたものであり、前記第2の混合インクは、シアンインクとマゼンダインクを混合させたものであることを特徴とする請求項4に記載の廃インク回収ユニット。
   【請求項6】
 第1のヘッドユニットおよび前記第1のヘッドユニットと異なるインクを吐出する第2のヘッドユニットを備えるインクジェットヘッドと、
 前記第1のヘッドユニットのインクノズル面を覆う第1のキャップと、
 前記第2のヘッドユニットのインクノズル面を覆う第2のキャップと、
 廃インク回収容器と、前記廃インク回収容器の第1の廃インク導入口に接続された第1の合流チューブと、前記第1のキャップと前記第1の合流チューブとを接続する第1のチューブと、前記第2のキャップと前記第1の合流チューブとを接続する第2のチューブと、前記第1の合流チューブを経由して前記第1のキャップ内および前記第2のキャップ内を吸引する第1の吸引ポンプと、を有する廃インク回収ユニットと、を備え、
 前記廃インク回収ユニットの前記廃インク回収容器は、前記第1の合流チューブが接続される第1の廃インク導入口および該第1の合流チューブとは異なるチューブが接続される第2の廃インク導入口と、前記第1の廃インク導入口および前記第2の廃インク導入口から導入されたインクが流れ落ちる流路と、を有し、
 前記第1の廃インク導入口および前記第2の廃インク導入口から導入されたインクは、前記廃インク回収容器の底部に到達する前に前記流路に設けられた合流部で合流することを特徴とするプリンター。
  【請求項7】
 前記廃インク回収ユニットは、
 前記廃インク回収容器に接続された第2の合流チューブと、
 第3のヘッドユニットのインクノズル面を覆う第3のキャップと、
 前記第3のヘッドユニットと異なるインクを吐出する第4のヘッドユニットのインクノズル面を覆う第4のキャップと、
 前記第3のキャップと前記第2の合流チューブとを接続する第3のチューブと、
 前記第4のキャップと前記第2の合流チューブとを接続する第4のチューブと、
 前記第1の吸引ポンプと独立して駆動され、前記第2の合流チューブを経由して前記第3のキャップ内および前記第4のキャップ内を吸引する第2の吸引ポンプと、を有し、
 前記廃インク回収容器は、前記第1の廃インク導入口と、前記第2の合流チューブが接続される前記第2の廃インク導入口と、を有することを特徴とする請求項6に記載のプリンター。
  【請求項8】
 第1のヘッドユニットのインクノズル面を第1のキャップで覆い、且つ、前記第1のヘッドユニットと異なるインクを吐出する第2のヘッドユニットのインクノズル面を第2のキャップで覆う第1ステップと、
 第1の吸引ポンプを駆動して、第1のチューブを経由して前記第1のキャップ内を吸引し、且つ、第2のチューブを経由して前記第2のキャップ内を吸引し、前記第1のキャップ内から吸引した第1の廃インク、および、前記第2のキャップ内から吸引した第2の廃インクを前記第1のチューブおよび前記第2のチューブが合流した第1の合流チューブ内で混合させた第1の混合インクを、第1の廃インク導入口から廃インク回収容器に回収するとともに、前記第1の混合インクとは異なるインクを第2の廃インク導入口から前記廃インク回収容器に回収する第2ステップと、
 前記第1の廃インク導入口から回収された第1の混合インクおよび前記第2の廃インク導入口から回収された前記第1の混合インクとは異なるインクを、前記廃インク回収容器内に設けられる流路により前記廃インク回収容器の底部に到達する前に合流させて混合する第3ステップを行うことを特徴とする廃インク回収方法。
  【請求項9】
 前記第1ステップでは、
 第3のヘッドユニットのインクノズル面を第3のキャップで覆い、且つ、前記第3ヘッドユニットと異なるインクを吐出する第4のヘッドユニットのインクノズル面を第4のキャップで覆い、
 前記第2ステップでは、
 前記第1の混合インクを前記第1の廃インク導入口から前記廃インク回収容器に回収するとともに、
 第2の吸引ポンプを駆動して、第3のチューブを経由して前記第3のキャップ内を吸引し、且つ、第4のチューブを経由して前記第4のキャップ内を吸引し、前記第3のキャップ内から吸引した第3の廃インク、および、前記第4のキャップ内から吸引した第4の廃インクを前記第3のチューブおよび前記第4のチューブが合流した第2の合流チューブ内で混合させた第2の混合インクを、前記第2の廃インク導入口から前記廃インク回収容器に回収することを特徴とする請求項8に記載の廃インク回収方法。

特願2014-169132 請求項

(2)拒絶理由通知書

     記   (引用文献等については引用文献等一覧参照)
●理由1(進歩性)について
・請求項6-9
・引用文献等1-2
・備考
 引用文献1には、廃液タンク38(本願発明の「廃インク回収容器」に相当する。以下同じ)と、廃液タンクに接続する複数のインク廃棄管37(「第1の合流チューブ」、「第2の合流チューブ」)、それぞれ異なるインクを吐出する複数のインクジェットヘッド(「第1のヘッドユニット」-「第4のヘッドユニット」)と、前記インクジェットヘッドをそれぞれ覆う複数のキャップ(「第1のキャップ」-「第4のキャップ」)と、複数の前記キャップと1つの前記インク廃棄管とを接続する複数のインク吸引管35(「第1のチューブ」-「第4のチューブ」)と、それぞれのインク廃棄管にポンプ(「第1の吸引ポンプ」、「第2の吸引ポンプ」)を備えて、複数のインクジェットヘッドを同時にメンテナンスする(段落[0059]に「メンテナンスを要する複数のインクに係るインクジェットヘッドを同時にメンテナンスすることが可能」と記載されている)インクジェットヘッドのメンテナンス装置(「廃インク回収ユニット」)の構成が記載されている(段落[0020]-[0060]、図1-6等参照)。

 したがって、請求項6-9に係る発明が、第1の合流チューブが接続される第1の廃インク導入口および第2の合流チューブが接続される第2の廃インク導入口と、前記第1の廃インク導入口および前記第2の廃インク導入口から導入されたインクが流れ落ちる流路と、前記第1の廃インク導入口および前記第2の廃インク導入口から導入されたインクが廃インク回収容器の底部に到達する前に前記流路に設けられた合流部で合流する廃インク回収容器を備えているのに対して、引用文献1に記載された複数のインク廃棄管および廃液タンクがそのような構成を備えていない点で相違し、その他の点で実質一致する。

 しかしながら、上記相違点について、引用文献2には、吸引チューブで吸引された廃インクを、廃インク集積部(「合流部」)で合流させてから廃インクタンク5(「廃インク回収容器」)に集積させる構成が記載されており(段落[0023]-[0032]、図3-6等参照)、複数のインクジェットヘッドから発生する異なるインクを、吸引によってひとつの廃インクタンクに回収するという点で作用、機能が共通するから、引用文献1に記載された発明に、上記引用文献2に記載された発明の構成を適用して、請求項6-9に係る発明のような構成とすることは、想到容易である。
 よって、請求項6-9に係る発明は、引用文献1-2に記載された発明に基づいて、当業者であれば容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることが出来ない。

●理由2(明確性)について
・請求項1-5、9 
・備考
 本願の請求項1には「前記廃インクを吸収するインク吸収材と」との記載があるが、この記載よりも前に(「廃インク回収容器」の記載はあるが、)「廃インク」の記載が無く、「前記廃インク」が何を指し示しているのかが不明確である。
 よって、請求項1および請求項1を引用する請求項2-5に係る発明は明確でない。

 本願の請求項5には「前記第1の混合インクは、ブラックインクとイエローインクを」および「前記第2の混合インクは、シアンインクとマゼンダインクを」との記載があるが、この記載よりも前に「第1の混合インク」および「第2の混合インク」の記載が無く、「前記第1の混合インク」および「第2の混合インク」が何を指し示しているのかが不明確である。
 よって、請求項5に係る発明は明確でない。

 本願の請求項9には「前記第3ヘッドユニットと異なるインクを」との記載があるが、この記載よりも前に「第3ヘッドユニット」の記載が無く、「前記第3ヘッドユニット」が何を指し示しているのかが不明確である(「第3のヘッドユニット」の誤記であると思われる)。
 よって、請求項9に係る発明は明確でない。


             <引用文献等一覧>
1.特開2009-285868号公報
2.特開2002-019149号公報

特願2014-169132 拒絶理由通知書

(3)ChatGPTによる分析

 ChatGPTのプロンプトに「請求項番号順に、進歩性に係る拒絶理由条文と引用文献の対比表を作成してください。」と指定しました。作成した対比表は以下です。特に誤記等はないようです。

ChatGPT による対比表

 次に、ChatGPTのプロンプトに「拒絶理由に対する意見書を作成してください。但し、明確性の拒絶理由は解消するための補正を行うこととしてください。」と指定しました。但し以降を指定しないと、ChatGPTは、現状の記載で問題ないと強弁するためです。

拒絶理由の概要:
請求項6-9に係る発明が、引用文献1(特開2009-285868号公報)および引用文献2(特開2002-019149号公報)に基づいて容易になし得たものであるとされています。

引用文献1との相違点:
引用文献1には、廃液タンク、複数のインク廃棄管、複数のインクジェットヘッド、複数のキャップ、複数のインク吸引管、各インク廃棄管にポンプを備えるという要素は記載されていますが、「合流部」に関する記載がありません。

引用文献2との関連性:
引用文献2では、吸引チューブで吸引された廃インクを廃インク集積部(「合流部」)で合流させる構成が記載されています。

意見:
 本出願発明は、廃液タンクに接続された「第1の合流チューブ」と「第2の合流チューブ」によって導入されたインクが、廃インク回収容器の底部に到達する前に設けられた合流部で合流する構成を有しています。この特定の構成は、引用文献1と2を単純に組み合わせたものでは再現できません。引用文献1には「合流部」に関する記載が全くありません。
 引用文献2には合流部がありますが、その運用には特定の状況と条件が必要であり、単純に引用文献1に適用するという考えは非自明です。
したがって、請求項6-9に係る発明は進歩性を有すると考えます。

2. 明確性に関する拒絶理由(請求項1-5, 9)
拒絶理由に基づき、必要な補正を行う予定です。

ChatGPTによる応答案

 ChatGPTは、主引用文献に副引用文献を組み合わせた部分について反論していますし、具体的な中身までは未記載です。
 明確性を解消するための具体的な記載についても未記載です。

次に、請求項1-5をChatGPTに読み込ませたうえで、請求項1,5について、明確性の拒絶理由通知を解消する補正案を作成するよう指示しました。補正されている箇所を太字で示します。なお、請求項1-9をChatGPTに読み込ませると、文章が長すぎたせいでエラーになりました。

現行の請求項1と問題点
・「前記廃インクを吸収するインク吸収材と」が不明確であるとされています。これは、請求項中で「廃インク」が何を指しているのかが初めて登場する箇所であるためです。

補正後の請求項1
 廃インク回収容器と、
 この廃インク回収容器には、ブラックインク、イエローインク、シアンインク、およびマゼンダインク(以下、「廃インク」とする)を収集するため の第1の廃インク導入口が設けられており、
...

このように、「廃インク」が何を指すのかを明確にした後で、「前記廃インクを吸収するインク吸収材と」という表現を用います。

現行の請求項5と問題点
・「前記第1の混合インクは、ブラックインクとイエローインクを」および「前記第2の混合インクは、シアンインクとマゼンダインクを」とありますが、これが何を指しているのかが不明確です。

補正後の請求項5
 請求項4に記載の廃インク回収ユニットであって、
 前記第1の合流チューブで混合されたブラックインクとイエローインク(以下、「第1の混合インク」とする)であり、
 前記第2の合流チューブで混合されたシアンインクとマゼンダインク(以下、「第2の混合インク」とする)である
ことを特徴とする廃インク回収ユニット。

このように、「第1の混合インク」および「第2の混合インク」が何を指しているのかを明確にした後でそれに言及します。

ChatGPTによる応答案

 請求項1の補正案、請求項2の補正案ともに、あまり見かけない括弧書きで補正しています。これは、ChatGPTは日本特許の補正案をあまり学習していないためとおもいます。

(4)提出日 平成30年 6月8日の意見書と手続補正書

 補正前請求項1は、補正後の請求項1に対応します。先行詞として廃インクを記載するのではなく、「前記廃インク」を単に「インク」に補正していました。実務上はどちらを補正してもOKです。

  【請求項1】
 廃インク回収容器と、
 前記廃インク回収容器の第1の廃インク導入口に接続された第1の合流チューブと、
 第1のヘッドユニットのインクノズル面を覆う第1のキャップと、
 前記第1のヘッドユニットと異なるインクを吐出する第2のヘッドユニットのインクノズル面を覆う第2のキャップと、
 前記第1のキャップと前記第1の合流チューブとを接続する第1のチューブと、
 前記第2のキャップと前記第1の合流チューブとを接続する第2のチューブと、
 前記第1の合流チューブを経由して前記第1のキャップ内および前記第2のキャップ内を吸引する第1の吸引ポンプと、を備え、
 前記廃インク回収容器は、容器本体と、インクを吸収するインク吸収材と、前記第1の合流チューブが接続される第1の廃インク導入口および該第1の合流チューブとは異なるチューブが接続される第2の廃インク導入口と、前記容器本体の内壁面に形成され、前記第1の廃インク導入口および前記第2の廃インク導入口から導入されたインクが流れ落ちる流路と、を有し、
 前記インク吸収材は、前記流路との間に隙間を空けて配置され、前記第1の廃インク導入口および前記第2の廃インク導入口から導入されたインクは、前記廃インク回収容器の底部に到達する前に前記流路に設けられた合流部で合流することを特徴とする廃インク回収ユニット。

特願2014-169132 平成30年 6月8日の手続補正書の請求項1

 なお、補正前の請求項5は削除されています。
 補正前請求項9は、補正後の請求項9に対応します。拒絶理由通知書の補正の示唆のとおり「第3ヘッドユニット」を「第3のヘッドユニット」に補正しています。

  【請求項9】
 前記第1ステップでは、
 第3のヘッドユニットのインクノズル面を第3のキャップで覆い、且つ、前記第3ヘッドユニットと異なるインクを吐出する第4のヘッドユニットのインクノズル面を第4のキャップで覆い、
 前記第2ステップでは、
 前記第1の混合インクを前記第1の廃インク導入口から前記廃インク回収容器に回収するとともに、
 第2の吸引ポンプを駆動して、第3のチューブを経由して前記第3のキャップ内を吸引し、且つ、第4のチューブを経由して前記第4のキャップ内を吸引し、前記第3のキャップ内から吸引した第3の廃インク、および、前記第4のキャップ内から吸引した第4の廃インクを前記第3のチューブおよび前記第4のチューブが合流した第2の合流チューブ内で混合させた第2の混合インクを、前記第2の廃インク導入口から前記廃インク回収容器に回収することを特徴とする請求項8に記載の廃インク回収方法。

特願2014-169132 平成30年 6月8日の手続補正書の請求項9

更に、以下に実際の意見書の要旨を記載します。

 引用文献2には、吸引チューブで吸引された廃インクを、廃インク集積部で合流させて から廃インクタンに集積させる構成が記載されています。
 本願発明は引用文献1および引用文献2に記載のない「前記廃インク回収容器は、容器本体と、インクを吸収するインク吸収材と、前記第1の合流チューブが接続される第1の廃インク導入口および該第1の合流チューブとは異なるチューブが接続される第2の廃インク導入口と、前記容器本体の内壁面に形成され、前記第1の廃インク導入口および前記第2の廃インク導入口から導入されたインクが流れ落ちる流路と、を有し、前記インク吸収材は、前記流路との間に隙間を空けて配置され、前記第1の廃インク導入口および前記第2の廃インク導入口から導入されたインクは、前記廃インク回収容器の底部に到達する前に前記流路に設けられた合流部で合流する」こと、または「前記第1の廃インク導入口から回収された第1の混合インクおよび前記第2の廃インク導入口から回収された前記第1の混合インクとは異なるインクを、前記廃インク回収容器内に設けられる流路により前記廃インク回収容器内の底部に到達する前に合流させて混合し、該底部に到達した後に前記廃インク回収容器内に配置されるインク吸収材に接触させる第3ステップを行う」ことを特徴とするものです。

特願2014-169132 平成30年 6月8日の意見書

 本件の実際の意見書では、本願発明の合流部そのものではないにせよ、合流部の下流に係る構成である「該底部に到達した後に前記廃インク回収容器内に配置されるインク吸収材に接触させる」構成について、引用文献2との差異について詳細に記載しています。これはChatGPTの指摘した事項の範囲といってもよいのではないでしょうか。
 本願では、上記の意見書と手続補正書により特許査定を受けています。

5.特願2014-189733

(1)請求項

 本願はインクジェットプリンタに関する発明です。以下は、特願2014-189733の出願審査請求時の請求項です。なお、出願人は、出願審査請求と共に自発補正していますので、当初請求項とは異なります。

  【書類名】特許請求の範囲
  【請求項1】
 媒体に対して液体を吐出可能な複数のノズルを有するヘッドと、
 前記ヘッドを主走査方向に走査する走査手段と、
 前記主走査方向と交差する副走査方向に前記媒体を搬送する搬送手段と、を備え、
 前記副走査方向において、前記ヘッドの端部ノズルから所定距離のノズルまでの間を所定領域として、前記ヘッド、前記走査手段、および前記搬送手段を用いて一定量に媒体を搬送し、前記媒体に画像を形成させる際、
 前記所定領域に含まれる前記ノズルを使用してドット列を形成させる走査の回数は、前記所定領域に含まれる前記ノズルを使用しないドット列を形成させる走査の回数よりも多く、少なくとも3回であることを特徴とする画像形成装置。
  【請求項2】
 前記一定量は、前記所定距離の整数倍であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
  【請求項3】
 前記副走査方向において、一方の端部ノズルから所定距離のノズルまでの間を第1領域、他方の端部ノズルから所定距離のノズルまでの間を第2領域、前記第1領域と前記第2領域との間を第3領域とした場合、
 前記第1領域に含まれる前記ノズルの平均ノズル使用率は、前記第3領域に含まれる前記ノズルの平均ノズル使用率よりも小さいこと、を特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像形成装置。
  【請求項4】
 前記第2領域に含まれる前記ノズルの平均ノズル使用率は、前記第3領域に含まれる前記ノズルの平均ノズル使用率よりも小さいこと、を特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
  【請求項5】
 前記第1領域および前記第2領域に含まれる前記ノズルを使用しないドット列を形成させる前記ノズルの平均ノズル使用率は、前記第1領域に含まれる前記ノズルの平均ノズル使用率よりも大きく、前記第2領域に含まれる前記ノズルの平均ノズル使用率よりも大きいこと、を特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
  【請求項6】
 請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の画像形成を行う記録モードを含む複数の記録モードを備えていること、を特徴とする画像形成装置。
  【請求項7】
 複数のノズルを有するヘッドを主走査方向に走査し、媒体に対して液体を吐出する走査工程と、
 前記主走査方向と交差する副走査方向に前記媒体を搬送する搬送工程と、を備え、
 前記副走査方向において、前記ヘッドの端部ノズルから所定距離のノズルまでの間を所定領域として、前記走査工程、および前記搬送工程を用いて一定量に媒体を搬送し、前記媒体に画像を形成する際、
 前記所定領域に含まれる前記ノズルを使用してドット列を形成する走査の回数は、前記所定領域に含まれる前記ノズルを使用しないドット列を形成する走査の回数よりも多く、少なくとも3回であることを特徴とする画像形成方法。

特願2014-189733 平成29年 8月21日 自発補正書

(2)拒絶理由通知書

  以下に、拒絶理由書に要点を示します。

     記   (引用文献等については引用文献等一覧参照)

●理由1(明確性)について

・請求項 6
 請求項6に『請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の画像形成』と記載されているが、請求項1から請求項5に記載されている発明は、『画像形成装置』であって、『画像形成』ではない。
 よって、請求項6に係る発明は明確でない。

●理由2、3(新規性、進歩性)について

・請求項 1、7
・引用文献等 1
・備考
 引用文献1の段落0056-0059、及び図14-15には、5つのノズル(#1~#5)を有する印刷ヘッドを有するインクジェットプリンタ22において、2ドットピッチだけ搬送するオーバーラップ印刷を採用することが記載されており、2ドットピッチだけ搬送するオーバーラップ印刷は、『前記ヘッド、前記走査手段、および前記搬送手段を用いて一定量に媒体を搬送し、前記媒体に画像を形成させる』ことに相当する。
 下の図は、引用文献1の図15である。下の図において、『前記所定領域に含まれる前記ノズルを使用して』形成される『ドット列』に相当するラスタ(「ラスタX」と表記)と、『前記所定領域に含まれる前記ノズルを使用しない』で形成された『ドット列』に相当するラスタ(「ラスタY」と表記)と、を指し示した。ノズル#1が『前記所定領域に含まれる前記ノズル』に相当している。図14、15より、上記ラスタXが、ノズル#1、#3、#5により3回のパスで形成され、上記ラスタYが、ノズル#2、#4により2回のパスで形成されたことは明らかである。


・請求項 3-4
・引用文献等 1
・備考
 引用文献1において、ノズル#1が『第1領域に含まれるノズル』に相当し、ノズル#5が、『第2領域に含まれるノズル』に相当し、ノズル#2~#4が、『第3領域に含まれるノズル』に相当する。
 図15より、ノズル#1、#3、#5は、ラスタXにおいて3回に1回ドットを形成していると認められるから、これらのノズルの使用率は、33%である。
また、ノズル#2、#4は、ラスタYにおいて2回に1回ドットを形成していると認められるから、これらのノズルの使用率は50%とである。よって、『前記第1領域に含まれる前記ノズルの平均ノズル使用率』に相当するノズル#1の使用率(33%)、及び『前記第2領域に含まれる前記ノズルの平均ノズル使用率』に相当するノズル#5の使用率(33%)は、『前記第3領域に含まれる前記ノズルの平均ノズル使用率』に相当するノズル#2~#4の使用率の平均より小さい。

・請求項 5
・引用文献等 1
・備考
 引用文献1において、『前記第1領域および前記第2領域に含まれる前記ノズルを使用しないドット列を形成させる前記ノズルの平均ノズル使用率』に相当するノズル#2、#4の使用率の平均(50%)は、『前記第1領域に含まれる前記ノズルの平均ノズル使用率』に相当するノズル#1の使用率(33%)、及び『前記第2領域に含まれる前記ノズルの平均ノズル使用率』に相当するノズル#5の使用率(33%)より大きい。

●理由3(進歩性)について

・請求項 6
・引用文献等 1
・備考
 「媒体に対して液体を吐出可能な複数のノズルを有するヘッドと、ヘッドを主走査方向に走査する走査手段と、主走査方向と交差する副走査方向に媒体を搬送する搬送手段と、を備え、ヘッド、走査手段、および搬送手段を用いて媒体を搬送し、媒体に画像を形成させる画像形成装置」において、複数の記録モードで画像形成を実行可能とすることは例を挙げるまでもなく周知技術であり、引用文献1記載のインクジェットプリンタ22において、段落0056-0059、及び図14-15に記載の記録モードで画像形成を実行可能とするだけなく、他の記録モードでも画像形成を実行可能とすることは、当業者が容易になし得たことである。

<拒絶の理由を発見しない請求項>
 請求項(2)に係る発明については、現時点では、拒絶の理由を発見しない。
拒絶の理由が新たに発見された場合には拒絶の理由が通知される。

             <引用文献等一覧>
1.特開2004-195991号公報

特願2014-189733 拒絶理由通知書

(3)ChatGPTによる分析

 ChatGPTに本願の対比表を作ってもらいました。いわゆる許可クレームを含めて作ってくれています。

ChatGPTによる対比表

次に、意見書案の作成を指示しました。

請求項1および請求項7について(新規性、進歩性)

拒絶理由に関して、引用文献1(特開2004-195991号公報)は、オーバーラップ印刷やノズル配置について言及していますが、本発明が解決しようとする特定の技術的課題に対する独自の解決策は明示または暗示されていません。

また、引用文献1では、特定のノズル配置やオーバーラップ印刷について記述がありますが、本発明におけるような__[具体的な特徴または要素]__は一切開示されていません。したがって、請求項1および請求項7は、新規であり、また進歩性も有すると考えます。

請求項3-4について(新規性、進歩性)

引用文献1では、ノズルの使用率に関して言及していますが、本発明においては__[具体的な新しいアプローチまたは技術]を提供しています。この新しいアプローチによって、[技術的効果またはメリット]__が実現されます。この点は、引用文献1では明示または暗示されていないため、請求項3-4には新規性と進歩性があります。

請求項5について(新規性、進歩性)

本発明の請求項5では、__[具体的な新しいアプローチまたは技術]によって、ノズルの使用率の調整が行われます。この特定のアプローチは、引用文献1には一切開示されていないため、新規性があります。また、このアプローチによって[技術的効果またはメリット]__が達成されるため、進歩性も認められると考えます。

ChatGPTによる意見書案

 請求項1の減縮をすすめていますが、具体的な記載については何ら記載していません。許可クレームである請求項2の活用については提案がないようです。
 請求項3-4は、どのような「具体的な新しいアプローチまたは技術」については言及していません。
 請求項5は、ノズル使用率そのものではなく、ノズル使用率の調整方法に特許性がある旨を主張しています。具体的な調整方法については言及していません。

(4)ChatGPTによる自動補正

 許可クレームである請求項2で、独立項を限定する補正をChatGPTに指示しました。プロンプトは、「以下の請求項2の構成を、請求項1と7に組み込んでください。請求項2以降の請求項番号と引用を修正してください。」です。

【書類名】特許請求の範囲
【請求項1】
媒体に対して液体を吐出可能な複数のノズルを有するヘッドと、
前記ヘッドを主走査方向に走査する走査手段と、
前記主走査方向と交差する副走査方向に前記媒体を搬送する搬送手段と、を備え、
前記副走査方向において、前記ヘッドの端部ノズルから所定距離のノズルまでの間を所定領域として、前記ヘッド、前記走査手段、および前記搬送手段を用いて一定量に媒体を搬送し、前記媒体に画像を形成させる際、
前記所定領域に含まれる前記ノズルを使用してドット列を形成する走査の回数は、前記所定領域に含まれる前記ノズルを使用しないドット列を形成する走査の回数よりも多く、少なくとも3回であること
前記一定量は、前記所定距離の整数倍であること、
を特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記副走査方向において、一方の端部ノズルから所定距離のノズルまでの間を第1領域、他方の端部ノズルから所定距離のノズルまでの間を第2領域、前記第1領域と前記第2領域との間を第3領域とした場合、
前記第1領域に含まれる前記ノズルの平均ノズル使用率は、前記第3領域に含まれる前記ノズルの平均ノズル使用率よりも小さいこと、を特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第2領域に含まれる前記ノズルの平均ノズル使用率は、前記第3領域に含まれる前記ノズルの平均ノズル使用率よりも小さいこと、を特徴とする請求項に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第1領域および前記第2領域に含まれる前記ノズルを使用しないドット列を形成させる前記ノズルの平均ノズル使用率は、前記第1領域に含まれる前記ノズルの平均ノズル使用率よりも大きく、前記第2領域に含まれる前記ノズルの平均ノズル使用率よりも大きいこと、を特徴とする請求項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の画像形成を行う記録モードを含む複数の記録モードを備えていること、を特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
複数のノズルを有するヘッドを主走査方向に走査し、媒体に対して液体を吐出する走査工程と、
前記主走査方向と交差する副走査方向に前記媒体を搬送する搬送工程と、を備え、
前記副走査方向において、前記ヘッドの端部ノズルから所定距離のノズルまでの間を所定領域として、前記走査工程、および前記搬送工程を用いて一定量に媒体を搬送し、前記媒体に画像を形成する際、
前記所定領域に含まれる前記ノズルを使用してドット列を形成する走査の回数は、前記所定領域に含まれる前記ノズルを使用しないドット列を形成する走査の回数よりも多く、少なくとも3回であること
前記一定量は、前記所定距離の整数倍であること、
を特徴とする画像形成方法。

ChatGPTによる補正案

 ChatGPTは、許可クレームに限定する程度の簡単なものなら、ほぼ完璧に動作します。

 更に「以下の請求項2の構成を独立項に組み込んでください。そして請求項番号と引用を修正してください。」という汎用性の高いプロンプトで試してみました。これでも充分に動作します。出力ごとに微妙に表記が違うのはご愛敬です。

【請求項1】
媒体に対して液体を吐出可能な複数のノズルを有するヘッドと、
前記ヘッドを主走査方向に走査する走査手段と、
前記主走査方向と交差する副走査方向に前記媒体を搬送する搬送手段と、を備え、
前記副走査方向において、前記ヘッドの端部ノズルから所定距離のノズルまでの間を所定領域として、前記ヘッド、前記走査手段、および前記搬送手段を用いて一定量に媒体を搬送し、前記媒体に画像を形成させる際、
前記所定領域に含まれる前記ノズルを使用してドット列を形成する走査の回数は、前記所定領域に含まれる前記ノズルを使用しないドット列を形成する走査の回数よりも多く、少なくとも3回であること、および、
前記一定量は、前記所定距離の整数倍であること、
を特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記副走査方向において、一方の端部ノズルから所定距離のノズルまでの間を第1領域、他方の端部ノズルから所定距離のノズルまでの間を第2領域、前記第1領域と前記第2領域との間を第3領域とした場合、
前記第1領域に含まれる前記ノズルの平均ノズル使用率は、前記第3領域に含まれる前記ノズルの平均ノズル使用率よりも小さいこと、を特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第2領域に含まれる前記ノズルの平均ノズル使用率は、前記第3領域に含まれる前記ノズルの平均ノズル使用率よりも小さいこと、を特徴とする請求項に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第1領域および前記第2領域に含まれる前記ノズルを使用しないドット列を形成させる前記ノズルの平均ノズル使用率は、前記第1領域に含まれる前記ノズルの平均ノズル使用率よりも大きく、前記第2領域に含まれる前記ノズルの平均ノズル使用率よりも大きいこと、を特徴とする請求項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の画像形成を行う記録モードを含む複数の記録モードを備えていること、を特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
複数のノズルを有するヘッドを主走査方向に走査し、媒体に対して液体を吐出する走査工程と、
前記主走査方向と交差する副走査方向に前記媒体を搬送する搬送工程と、を備え、
前記副走査方向において、前記ヘッドの端部ノズルから所定距離のノズルまでの間を所定領域として、前記走査工程、および前記搬送工程を用いて一定量に媒体を搬送し、前記媒体に画像を形成する際、
前記所定領域に含まれる前記ノズルを使用してドット列を形成する走査の回数は、前記所定領域に含まれる前記ノズルを使用しないドット列を形成する走査の回数よりも多く、少なくとも3回であること、および、
前記一定量は、前記所定距離の整数倍であること、
を特徴とする画像形成方法。

ChatGPTによる補正案

(5)提出日 平成30年 9月11日の意見書と手続補正書

 実際の手続補正書は以下です。

  【書類名】特許請求の範囲
  【請求項1】
 媒体に対して液体を吐出可能な複数のノズルを有するヘッドと、
 前記ヘッドを主走査方向に走査する走査手段と、
 前記主走査方向と交差する副走査方向に前記媒体を搬送する搬送手段と、を備え、
 前記副走査方向において、前記ヘッドの端部ノズルから所定距離のノズルまでの間を所定領域として、前記ヘッド、前記走査手段、および前記搬送手段を用いて一定量に媒体を搬送し、前記媒体に画像を形成させる際、
 前記所定領域に含まれる前記ノズルを使用してドット列を形成させる走査の回数は、前記所定領域に含まれる前記ノズルを使用しないドット列を形成させる走査の回数よりも多く、少なくとも3回であり、
 前記一定量は、前記所定距離の整数倍であ
ることを特徴とする画像形成装置。
  【請求項2】
 前記副走査方向において、一方の端部ノズルから所定距離のノズルまでの間を第1領域、他方の端部ノズルから所定距離のノズルまでの間を第2領域、前記第1領域と前記第2領域との間を第3領域とした場合、
 前記第1領域に含まれる前記ノズルの平均ノズル使用率は、前記第3領域に含まれる前記ノズルの平均ノズル使用率よりも小さいこと、を特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
  【請求項3】
 前記第2領域に含まれる前記ノズルの平均ノズル使用率は、前記第3領域に含まれる前記ノズルの平均ノズル使用率よりも小さいこと、を特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
  【請求項4】
 前記第1領域および前記第2領域に含まれる前記ノズルを使用しないドット列を形成させる前記ノズルの平均ノズル使用率は、前記第1領域に含まれる前記ノズルの平均ノズル使用率よりも大きく、前記第2領域に含まれる前記ノズルの平均ノズル使用率よりも大きいこと、を特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
  【請求項5】
 請求項1から請求項のいずれか一項に記載の画像形成装置における画像形成を行う記録モードを含む複数の記録モードを備えていること、を特徴とする画像形成装置。
  【請求項6】
 複数のノズルを有するヘッドを主走査方向に走査し、媒体に対して液体を吐出する走査工程と、
 前記主走査方向と交差する副走査方向に前記媒体を搬送する搬送工程と、を備え、
 前記副走査方向において、前記ヘッドの端部ノズルから所定距離のノズルまでの間を所定領域として、前記走査工程、および前記搬送工程を用いて一定量に媒体を搬送し、前記媒体に画像を形成する際、
 前記所定領域に含まれる前記ノズルを使用してドット列を形成する走査の回数は、前記所定領域に含まれる前記ノズルを使用しないドット列を形成する走査の回数よりも多く、少なくとも3回であり、
 前記一定量は、前記所定距離の整数倍であることを特徴とする画像形成方法。

特願2014-189733 平成30年 9月11日 手続補正書

 実際の意見書の要旨は以下です。

 拒絶の理由を発見しない請求項に限定する補正を行いました。また、不明確とされてい た補正前の請求項6は明確となるように補正を行いました。従って、当該拒絶理由は解消 したものと思料致します。

特願2014-189733 平成30年 9月11日 意見書

 実際の応答案は、許可クレームである請求項2を、当初請求項1に組み込むというものでした。これは、ChatGPT の指摘した、引用発明1には記載されていない_[具体的な特徴または要素]_に対応するとも考えられます。
 本願では、上記の意見書と手続補正書により特許査定を受けています。

6.特願2014-127639

(1)請求項

 本願は摩擦攪拌接合に関する発明です。以下は、特願2014-127639の当初請求項です。

【書類名】特許請求の範囲
【請求項1】
 回転ツールを構成するプローブを所定の回転速度で回転させた状態で、鉄を主成分とする合金よりなる被接合部材に圧入させることで、該被接合部材を接合させる接合工程と、 前記接合工程後から次の接合工程を実施するまでの期間であるインターバル時に、前記被接合部材から前記プローブを離間させた状態で、前記所定の回転速度で回転する該プローブの周囲における酸化性ガスの濃度が0.1~5%の範囲内となるように、主成分であるアルゴンガスまたは窒素、及び前記酸化性ガスを含むシールドガスを連続的に供給するシールドガス供給工程と、
 を有することを特徴とする摩擦攪拌接合方法。
【請求項2】
 前記接合工程と、前記シールドガス供給工程と、を順次繰り返し行うことを特徴とする請求項1記載の摩擦攪拌接合方法。
【請求項3】
 前記シールドガス供給工程では、筒状とされた隔壁内に前記プローブを収容させた状態で、該プローブに前記シールドガスを供給させることを特徴とする請求項1または2記載の摩擦攪拌接合方法。
【請求項4】
 前記酸化性ガスとして、酸素または二酸化炭素であることを特徴とする請求項1ないし3のうち、いずれか1項記載の摩擦攪拌接合方法。
【請求項5】
 前記回転プローブの材料として、タングステンカーバイドを用いることを特徴とする請求項1ないし4のうち、いずれか1項記載の摩擦攪拌接合方法。
【請求項6】
 前記シールドガス供給工程では、前記プローブにシールドガス供給口が対向するように配置されたシールドガス供給ノズルを介して、前記プローブに前記シールドガスを供給することを特徴とする請求項1ないし5のうち、いずれか1項記載の摩擦攪拌接合方法。
【請求項7】
 回転プローブを所定の回転速度で回転させた状態で、鉄を主成分とする合金よりなる被接合部材に、前記回転プローブを構成するプローブを圧入させることで、該被接合部材を接合させる摩擦攪拌接合装置であって、
 ショルダ、及び該ショルダの一面から突出する前記プローブを含む前記回転ツールと、 前記回転ツールを収容する筒状の隔壁と、
 前記隔壁の延在方向に対して、該隔壁を移動させる隔壁移動部と、
 前記プローブの周囲における酸化性ガスの濃度が0.1~5%の範囲内となるように、前記プローブに、主成分であるアルゴンガスまたは窒素、及び前記酸化性ガスを含むシールドガスを供給するシールドガス供給源と、
 前記シールドガス供給源と接続され、前記回転ツールと前記隔壁との間に形成される環状空間を介して、前記プローブに、前記シールドガスを連続的に供給するシールドガス供給ラインと、
 を有することを特徴とする摩擦攪拌接合装置。
【請求項8】
 一端が前記シールドガス供給ラインと接続され、他端であるシールドガス供給口が前記プローブに対向するように配置されたシールドガス供給用ノズルを有することを特徴とする請求項7記載の摩擦攪拌接合装置。
【請求項9】
 前記酸化性ガスは、酸素または二酸化炭素であることを特徴とする請求項7または8記載の摩擦攪拌接合装置。
【請求項10】
 前記回転プローブの材料として、タングステンカーバイドを用いることを特徴とする請求項7ないし9のうち、いずれか1項記載の摩擦攪拌接合装置。

特願2014-127639 請求項

(2)拒絶理由通知書

●理由2(進歩性)について

・請求項 1
・引用文献等 1-3
・備考
 引用文献1には、回転ツールを構成するプローブを所定の回転速度で回転させた状態で、被接合部材に圧入させることで、該被接合部材を接合させる接合工程と、前記接合工程後から次の接合工程を実施するまでの期間であるインターバル時に、前記被接合部材から前記プローブを離間させた状態で、前記所定の回転速度で回転する該プローブの周囲にシールドガス(段落0112:空気)を連続的に供給するシールドガス供給工程と、を有する摩擦攪拌接合方法の発明が記載されているものと認められる(特に、段落0112-0121、図21-22を参照。)。
 そして、請求項1に係る発明と、引用文献1に記載された発明とを対比すると、以下の2点で相違する。

(1)請求項1に係る発明では、被接合部材が、鉄を主成分とする合金よりなるものであるのに対して、引用文献1に記載された発明では、被接合部材の材質について特段限定されていない点

(2)請求項1に係る発明では、シールドガス供給工程において、所定の回転速度で回転する該プローブの周囲における酸化性ガスの濃度が0.1~5%の範囲内となるように、主成分であるアルゴンガスまたは窒素、及び前記酸化性ガスを含むシールドガスを連続的に供給するものであるのに対して、引用文献1に記載された発明では、供給されるガスとして、空気を供給しており、プローブの周囲における酸化性ガスの濃度については、特段限定していない点

 そこで、以下、上記相違点(1)-(2)について検討する。
 まず、上記相違点(1)について検討するに、引用文献2には、被接合部材としてステンレス材を用いることが開示されている(段落0023)。また、引用文献3にも、被接合部材にステンレス鋼板を用いることが開示されている(段落0030)。
 そして、刊行物1-3は、いずれも、摩擦拡散接合における被溶接部材に関する技術を開示するものであるから、引用文献1に記載された発明において、被溶接部材として、引用文献2-3に開示されている事項を踏まえて、部材の材質を選択し、被接合部材として、鉄を主成分とする合金を用いることは、当業者にとって格別困難を有するものとは認められない。
 次に、上記相違点(2)について検討するに、引用文献2には、回転ツールの冷却を可能とするために、Arを含むガスをシールドガスとして用いることが開示されている(段落0020)。
 また、引用文献3には、摩擦撹拌接合で用いるシールドガスの供給量について、酸素ガス濃度について、0.5~2容量%とすることが開示されている(段落0030)。
 そして、引用文献1に記載された発明において、引用文献2-3に開示されている事項を適用し、シールドガス供給工程において、所定の回転速度で回転する該プローブの周囲における酸化性ガスの濃度が0.1~5%の範囲内となるように、主成分であるアルゴンガスまたは窒素、及び前記酸化性ガスを含むシールドガスを連続的に供給することは、当業者にとって格別困難を有するものとは認められない。
 よって、請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明と、引用文献2-3に開示されている事項とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

・請求項 2
・引用文献等 1-3
・備考

 引用文献1には、図21に示されるフローチャートを踏まえれば、接合工程と、ガス(空気)供給工程と、を順次繰り返し行うものであると考えられる。
 よって、請求項2に係る発明は、引用文献1に記載された発明と、引用文献2-3に開示されている事項とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

・請求項 3
・引用文献等 1-4
・備考

 引用文献4には、シールドガス供給工程において、筒状とされた隔壁(カバー3)内にプローブを収容させた状態で、プローブにシールドガスを供給させることが開示されている(特に、段落0018、図1を参照。)。
 そして、引用文献1、4は、いずれも、ガスを供給して溶接を行う技術に関するものであるから、引用文献1に記載された発明に対して、引用文献4に開示されている事項を適用して、シールドガス供給工程において、筒状とされた隔壁内にプローブを収容させた状態で、プローブにシールドガスを供給させることは、当業者にとって格別困難を有するものとは認められない。
 よって、請求項3に係る発明は、引用文献1に記載された発明と、引用文献2-4に開示されている事項とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

・請求項 4
・引用文献等 1-3
・備考

 引用文献3には、摩擦撹拌接合で用いるシールドガスについて、酸素ガスを含むことが開示されている。
 よって、請求項4に係る発明は、引用文献1に記載された発明と、引用文献2-3に開示されている事項とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

・請求項 5
・引用文献等 1-3、5
・備考

 引用文献5には、回転プローブ(回転ツール5)の材料として、タングステンカーバイドを用いることが開示されている(特に、段落0028を参照。)。
 そして、引用文献1、5は、いずれも、摩擦拡散接合におけるツールの技術に関するものであるから、引用文献1に記載された発明に対して、引用文献5に開示されている事項を適用して、回転プローブの材料として、タングステンカーバイドを用いるは、当業者にとって格別困難を有するものとは認められない。
 よって、請求項5に係る発明は、引用文献1に記載された発明と、引用文献2-3、5に開示されている事項とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

・請求項 6
・引用文献等 1-3
・備考

 引用文献1には、図22に示される空気噴射手段68の構成から見て、シールドガス供給工程において、プローブにシールドガス供給口が対向するように配置されたシールドガス供給ノズルを介して、プローブにシールドガスを供給することが開示されている。
 よって、請求項6に係る発明は、引用文献1に記載された発明と、引用文献2-3に開示されている事項とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

特願2014-127639 拒絶理由通知書

(3)ChatGPTによる分析

 ChatGPTに、上記の拒絶理由通知書を読み込ませて、対比表を作ってもらいました。ここでは請求項6で相違点が記載できていないことに注意すべきです。どうやらChatGPTは、約2500文字までしかプロンプトで取り扱えないようです。

ChatGPTが作成した対比表

 次に、ChatGPTに、拒絶理由通知に対する応答案を作成させました。

請求項1について
被接合部材の材質について、引用文献1は特段限定していないのに対して、当方の発明は鉄を主成分とする合金に特定しています。引用文献2、3はステンレス材とステンレス鋼板に言及していますが、鉄を主成分とする合金に対する特定の効果や機能は明示されていないため、この相違は進歩性を有すると考えます。

シールドガスの濃度について、当方の発明は0.1~5%の範囲で酸化性ガスの濃度を特定しています。引用文献3では、酸素ガス濃度が0.5~2容量%とされていますが、この範囲は当方の発明とは異なり、特定の効果や問題解決に対する手段として当方の範囲が必要であると考えます。

請求項2について
引用文献1には、接合工程とガス供給工程を順次繰り返すことが述べられていますが、当方の発明ではその手順や条件が特定されています。そのため、当方の発明は引用文献とは明確に異なると考えます。

請求項3について
引用文献4には筒状とされた隔壁内にプローブを収容する構造が開示されていますが、当方の発明ではこの隔壁の具体的な形状や材料、配置についてさらに詳細な特設があり、それにより特定の効果を達成しています。

請求項4、5、6について
それぞれの請求項には引用文献にない、独自の機能や効果を持たせるための特定の条件や手段が明記されています。これにより、当方の発明は引用文献とは異なる新規性と進歩性を有すると考えます。

ChatGPTによる応答案

・請求項1について
 ChatGPTは、鉄を主成分とする合金に対する特定の効果や機能で特許性を出す事を提案しています。これも具体的な提案は無しです。
・請求項2は、更に具体的な下位概念となる具体的手順で限定することを提案しています。
・請求項3は、プローブの収容構造の下位概念で限定し、その効果を主張することを提案しています。
・請求項4-6の提案は随分と投げやりです。請求項4-6の拒絶理由の説明は、ChatGPTが取り扱える文字数(トークン数)を超えている領域にあるため、充分に応答案が作成できないせいかもしれません。

(4)提出日 平成29年 9月15日 手続補正書と意見書

 以下に現実の手続補正書のうち、請求項1の部分を示します。なお太字部分は補正部分です。

【書類名】特許請求の範囲   
【請求項1】
 回転ツールを構成するプローブを所定の回転速度で回転させた状態で、鉄を主成分とす る合金よりなる被接合部材に圧入させることで、該被接合部材を接合させる接合工程と、
 前記接合工程後から次の接合工程を実施するまでの期間であるインターバル時に、前記 被接合部材から前記プローブを離間させるとともに、前記プローブが外気に直接触れない 状態で、前記所定の回転速度で回転する該プローブの周囲における酸化性ガスの濃度が0 .1~5%の範囲内となるように、主成分であるアルゴンガスまたは窒素、及び前記酸化 性ガスを含むシールドガスを連続的に供給するシールドガス供給工程と、
 を有することを特徴とする摩擦攪拌接合方法。

特願2014-127639 平成29年 9月15日 手続補正書の請求項1

 現実の意見書の要旨は以下です。なお太字は筆者が付与したものです。

 拒絶の理由2は、出願当初の請求項1~6に対して通知されていました。そこで今回の補正により、本願請求項1に係る発明では、シールドガス供給工程で、被接合部材からプローブを離間させるとともに、プローブが外気に直接触れない状態で、所定の回転速度で回転するプローブの周囲における酸化性ガスの濃度が0.1~5%の範囲内となるように、主成分であるアルゴンガスまたは窒素、及び酸化性ガスを含むシールドガスを連続的に供給することを明確にしました。これにより、インターバル時において、アルゴンガス、及び0.1~5%の酸化性ガスを含むシールドガスを連続的に供給させた際、プローブ42の周囲の雰囲気における酸素性ガスの濃度が所定の濃度から外れることを抑制できます(段落[0038])。その結果、本願発明では、プローブの靱性の低下を抑制した上で、プローブの表面を僅かに酸化させ、プローブの回転トルク抵抗を低下させ、接合工程時において、プローブに与える負荷を小さくすることが可能となるため、回転ツールの寿命を長くすることができます(段落[0018],[0019])。

特願2014-127639 平成29年 9月15日 意見書

 現実の手続補正書では、ChatGPTの提案とは異なり、プローブが外気に直接触れない限定を掛けており、現実の意見書にて作用効果を主張しています。
 ChatGPTは、本願発明の実施形態を知らないので、このような具体的な応答案は提案できません。将来、明細書の実施形態すべてをChatGPTに学習させることができれば、実際の応答案に近い応答案が提案できるようになるのかもしれません。

7.おわりに

 本稿は、いま流行りのChatGPTで特許拒絶理由をどこまで分析できるかを記載いたしました。ChatGPTは、許可クレームに限定すること、機械的に対比表を作ることと、補正の示唆とおりに補正することに使えますが、誤りもあります。但し、機械的な書類整形たけであったとしても、時間を掛けていた手作業が自動化できます。但し、ChatGPTは、プロンプトで扱えるトークンに制限があり、日本語で約2500文字を超えると動作しなくなるようです。
 また、ChatGPTは、応答案の概略方針についてはガイドしてくれますが、特許庁の審査に耐えうる具体的な応答案は作成できません。具体的な応答案を作成できるのは、弁理士や知財部員など専門家に限られると思います。つまり、ChatGPTなどの生成AIは、専門家が自身の作業方針を確認した上で、その作業を高速化するためのツールとして価値があるのだとおもいます。
 つまり、すべての意思決定をAIに委ねるのではなく、人間とAIが半々ずつ関与するスタイルで意思決定を行うことが望ましいのでしょう。
 古代ギリシャにおいて、馬に乗った東方騎馬民族のスキタイ人は、その戦闘力の強さから、半人半獣のケンタウロスとして恐れられたそうです。現代も同様に、生成AIを使いこなす弁理士や知財部員は、ケンタウロス型専門職として、戦闘力が高い人材となり得るとおもいます。

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