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大阪都構想で大阪市を廃止すると、市には戻せない

11月1日に実施される「大阪市を廃止し特別区を設置することについての住民投票」所謂「大阪都構想」について、Twitter上でこのようなツイートがあった。

投稿者は嘉悦大学教授の高橋洋一氏である。かつては大阪市特別顧問を務めた経験もある。

高橋氏が指摘しているように、大阪都構想によって大阪市が廃止され、特別区にされた後に、地方自治法で市に戻すことは可能なのだろうか。

国会答弁において明確に否定

実は、政府が国会において大阪市が廃止された後に、現行法では市に戻せないと明言している。

○尾立源幸君 そうすると、一旦この大阪市を廃止して特別区をつくってしまったら、後で失敗だったと、もう一回政令市に戻りたいといっても今の法律上ではできないということでよろしいですね。

○国務大臣(高市早苗君) そういうことになります。

第189回国会 参議院 総務委員会 2015年5月12日

○宮本(岳)委員 改めて、重ねて確認しますけれども、現状で、東京二十三区も含めて特別区というものが一般市や政令指定都市になる、そういう道、方法は法律上存在するんですか。

○時澤政府参考人 お答えいたします。
 現行法上、特別区を廃止し、その区域に新たに市町村を設置する手続は設けられておりませんで、大都市地域特別区設置法に基づき特別区を設置した後に、特別区が市町村に戻ることはできないことでございます。

第189回国会 衆議院 地方創生に関する特別委員会 2015年5月15日

このように、政府は現行法では特別区に移行後は、市に戻せないと明言している。高橋氏の地方自治法で市に戻せるという主張は、誤りである可能性が極めて高い。

隣接する自治体は分割をしない場合、住民投票を経ずに市議会の承認のみで特別区になる

先ほどの衆議院 地方創生に関する特別委員会でのやり取りには続きがある。

○宮本(岳)委員 法律がないんですね。やりようがないんです。一方通行なんです。特別区というのは、つくれば最後、その先の法的な規定はないわけですね。
 ですから、あさって投票で問われていることというのは、これだけ重大なことだということを申し上げなくてはなりません。後戻りできないと私たちが言うのに対しても、これは全部うそだという宣伝が大阪ではやられておりますよ。
 では、この二度ともとには戻れない大阪市廃止住民投票が賛成多数で可決されて、五つの特別区が設置された場合、その後に、大阪市に隣接する、例えば堺市や吹田市や八尾市などが分割せずに丸ごと新たな特別区になろうということになった場合、今回のような住民投票は必要でしょうか。

○時澤政府参考人 大都市地域特別区設置法によりまして特別区を設置した後に、追加的な特別区の設置により従来の市町村の区域が分割されない場合につきましては、同法十三条二項の規定によりまして、道府県に特別区を設置する手続のうち、住民投票を実施することは求められておりません。

これはどういうことかというと、大阪市を廃止し特別区に移行後、大阪市に隣接する市町村は住民投票をせずに特別区に移行できる。

実際に読売新聞によると、守口市長、八尾市長が特別区を目指す考えを持っている。
この場合、住民投票が行われるかは不透明である。少なくとも、現在の市を分割せずに移行する場合は、住民投票をする法的義務は存在しない。

都構想は大阪市のみの問題ではない。

このように大阪都構想は大阪市のみの問題ではない。最低でも隣接市を巻き込む問題である。

さらに、大阪市を廃止後に都構想が失敗に終わったとしても、市に戻すことは現行法上不可能である。

どうしても市に戻すというのならば、「法律を作る」という不確実で労力と時間のかかる手段しか残されていない。


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