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番組クレイジージャーニーと沈香木の香りのカクテル。

クレイジージャーニーの今回の題として
鹿山のやりたい事が叶い
『最高の一杯』を求め造り上げる旅。

前回書いた記事はインドネシアの伝統薬草ドリンクであるジャムウ(Jamu)のお話し。



もう一つ気になっていたのが香木。


香木でカクテルを作りたいなぁって


選んだのは
【沈香】

沈香で日本でも有名なのは正倉院に保管されている蘭奢待。

時の権力者である足利義満、織田信長、明治天皇などが切り取り使用もされている国宝級




沈香と言ってもピンとこない人もいるかもしれないので簡単にどんな用途でどんな香りなのかと言うと
お線香の原料にもなる木。寺社仏閣などの礼拝でも使われたり、日本人にとっては馴染み深い香り。香りを聞けばすぐに分かるだろう。
おばぁちゃん家の仏壇の部屋の香りだ。



それくらい日本の文化に馴染み深い沈香であるけれども日本には沈香木は自生しない。

沈香木は英語名【agarwood】
熱帯アジア原産
ジンチョウゲ科ジンコウ属の常緑高木。
日本に出回ってる沈香は遠い東南アジアから時間をかけて日本へやってくる。
それはベトナムやカンボジア、タイ、インドネシアetc....
また沈香木は木自体に香りがあるわけではない。

沈香ができる過程は沈香木に病気、害虫、もしくは人工的に木部を侵食させ沈香木はその防御策としてダメージ部の内部に樹脂を分泌、蓄積、その後硬化したものが沈香となる。
そしてその沈香となる木片を削り取ったものが沈香。熱を加えるとあのお仏壇の香りとなるのだ。

沈香木



BenFiddichでは9年前にも
『香道カクテル』と題した似たような事をやっていたんだけど扱え切れなかったのだろう。今ではお蔵入りになったカクテル。
9年前の記事を見て欲しい↓


そして9年が経過した今
改めて香木そして沈香について向き合える機会をクレイジージャーニー様に番組を通して機会をもらえた。

それは沈香木が
①どのような環境で生育しているのか?
②どのように伐採、収穫するのか?
③根、樹皮、葉、枝、全て使えるのか?
④収穫したての香りはどんなのか?

それらを踏まえて現地の風土を感じながら現地でカクテルを作ってみたい。
という事で
インドネシアには沈香木のプランテーションが国家戦略として盛んなので沈香農園に突撃

場所はジョグジャガルタから車で2時間
クトハルジョという沈香の村。

のどかな農村



ここでは沈香木の育成から伐採、削り出しまで一貫工程をやっている。

丁寧に沈香部分を削り出す村の人。
沈香木の農園



インドネシアではタニ沈香と言われる天然の沈香が数多く自生していたが中東や中国方面からの需要に耐えられず天然沈香はほぼ枯渇状態。
数十年前からインドネシア政府の国策としても人工の沈香栽培は推奨されておりクトハルジョの村にあるこちらでも20年前から沈香木を栽培している。
しかしながらただ沈香木を栽培しても意味がなく、沈香木を意図的に刺激させ沈香木が本能的に防御策として分泌する液体を凝固、硬化したのが商品になるわけで全ての木が上手くいくわけではない。ちょっとしたギャンブル性のある商売でもあるとは思う。

この蟻が混入して浮かんでる謎の液体を木に注入して沈香を人工的に作り上げるこちらの秘伝の液体。

こちらの沈香木農家の当主のトトさん↓
トトさん『他の沈香農家は安価なケミカルな薬を注入したりして品質の悪い沈香を生産してるんだ。ん?俺?俺は天然の原料でしか使わないんだぜ。
これは秘伝のレシピなんだ


その後秘伝と言いながらも教えてくれた。
①腐ったバナナ
②米
③茹でたじゃがいもの水
④パームシュガー
を混ぜ合わせて発酵。酢のような感じだ。



そして小さい沈香木を伐採させてくれた。

伐採体験
このチューブに秘伝のタレを混入。
そして切った表面の黒ずんだのが沈香の香木になる部分となる。そこを削りとるのだ。


そしてみんなで元気よく作業して
黒い部分を削りとるのだ

作業は夜遅くまで。
この黒い部分が沈香の香木となる。


番組では究極の一杯を作りたい。


現地で育ぐくまれた素材を
現地で加工して
現地で飲むという嗜好品。

という事で沈香をアルコール浸漬し
蒸留してみた

ウォッカで沈香を1日浸漬
翌日になると色が変わる。
右がアルコール浸漬
左が水浸漬。
抽出度合が違う
そして野焼き蒸留
ポタポタ
沈香の葉も混入。
沈香の葉はお茶にもなる
そしてカクテル造り。
蒸留した沈香ウォッカ
熟れたグァバ、レモングラス、パームシュガー、
インドネシアの柑橘
どぉーん!こんな感じ
グァバの果実感に沈香の寺社仏閣の味わいが交わった何というか、押入れの中でフルーツをムシャムシャしてる味わいのカクテルだ。




こちらのカクテルは当主のトトさんと奥さんに進呈。
(写真は撮り忘れたのでクレイジージャーニーの番組では素敵に振る舞ってます)

番組スタッフと沈香農家の関係者
ありがとうございました。



カクテルの素材として気になってた沈香。

その沈香が
どのような環境で育つのか?
どのように伐採、収穫するのか?
加工したての味わいと香りはどうなのか?

それを知り間近で見る事で
『沈香木』への素晴らしさを
バーテンダーとしてBenFiddichの素敵なお客様へお伝えしてゆけたらなぁーって思います。

知るって楽しいなって。

これからも色々なものを見て
影響され
素敵なカクテルを作りたいなって思ってます


BenFiddich 店主

鹿山博康

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