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#57 男運を売ってくれる店を探しています

こんばんは。id_butterです。

人生で最高に不幸な時に恋に落ちた話 の57話目です。

今回は、何度か考えたことのある命題。
「父親は男か」
考えるようになったきっかけはある男性に言われた一言だと思う。

「思春期に入るとお父さんとお風呂に入らなくなるよね」と普通の話をしていたつもりだったけど、それ別に普通じゃないよ、そう言われた。

「女の子が思春期に入ってお父さんとお風呂はいらなくなるのは、そのお父さんが娘を女として見始めるからだよ」

全員そうだとは思わないのだが、一理あるとそのとき思った。
わたしは母親の影響を強く受けすぎていたので、よくある「お父さんくさい」とか「お父さんきたない」とか思ったことはない。
けれど、ちょっと気持ち悪いと思ったことはあった。

お医者さんでもたまにある。
気持ち悪くないお医者さんと気持ち悪いお医者さんが、たしかにいる。
マッサージではないけど、リハビリは何回かある。
言わないし、言えないけど、わたしは感じてしまう。

記憶は、小学校高学年のときまで遡る。
わたしが急に太ったことがあり、母親から言われた。
「なんか、お父さんがね、太ってみっともないから痩せさせろだって。」
体型に口を出してくることだけじゃなく、自分で言わないことにも腹が立った。その場にいた父は新聞で空気を遮り、聞こえないふりをしていた。

世のお父さんに聞いてみたい。
娘の体型って、気になりますか。
あのとき、父はなにを思っていたのだろう。

友達のお父さんは、全然気にしてなさそうだった。
そういえば元夫も、そうだった。
わたしが太ろうが何しようが、わたしのことがすきだった。
夫に父親を見ていたかもしれない。
どんなときもなにがあってもわたしをすきで見捨てないひと、だったはずなのにな。

それ以外にも、父親に違和感がある。
けど、言語化がいまいち追いついていない。
ひとつあるのは、父が内側に怒りを溜めていたことだ。
そして、それは時々爆発した。
殴ったりとかはなかったけれど、「大人のお説教」という体面を装った八つ当たりがわからない子どもはいない。
怒りだけじゃない、彼はいろいろな問題に向き合わず放置したままで、それは内側で腐っていく一方だった。

母とあまりうまくいっていない彼は未だにその怒りを秘めているのだろうか。

で、いますきな彼のことだ。

出会って数年、ただの上司だった彼に安心感を感じていたけれど、正直「男」としてみたことはなかった。
むしろ男を出してこないことに絶対の信頼を置いていた。
わたしに対してだけではなく、誰に対してもその態度を崩さない彼だから信じられた。

それを伝えてみたところ、彼は「僕は男のひとですよ」と抵抗していたけど、笑っていた。
でも、わたしのその感覚は「男」というより、「雄」特有の性欲を含んだ視線を警戒するアンテナなんだと「#47 おとこのひとに「雄」を感じるとき」を書きながら思った。

だから、わたしが「男のひとだと感じない」というそれは褒め言葉だった。
けれど、わたしはそんな風に感じるひとをすきになったことがなかった。
ややこしい。

彼は、わたしに色々なはじめてをくれるひとだ。

今回、わたしははじめて女性として男性をすきになれた、雌としてではなく。体からの「寝たい」という信号ではなく、心が彼を求めている。
ようやく人間になれた。

そんな彼を時々、お父さんにしてしまっているような気がする。
リアルな父親ではなく、理想のお父さん像を見る。
何か言いたそうなのに、あえて口を挟まないままわたしの意見を尊重してくれているときとか、後輩を怒るのではなく叱っているときとか、投げやりなわたしを逃さずにでもたしなめるときとかに。

男のひとだなぁと思うときもある。
仕事で理不尽なことがあっても一旦その場では口をつぐんだままやり過ごして、議論が始まってから柔らかな口調ででも自分の思い通りに持っていく姿とか、その戦い方がすきだ。
あるいは、普段わたしがどんないやな態度をとっても上司としての対応を崩さないのに、ちゃんとわたしのギリギリをみてくれて我を忘れて心配してくれるところとか。

男の子だな、と思うときもある。
わたしがちょっと泣いたくらいでオタオタしているところとか、部下を守ろうとするところとか、愛おしくなってしまう。
あまり打算的じゃないところ。

その彼の全部をめちゃくちゃ尊敬しているし、泣きそうなくらいすき。
彼は、自分の課題を理解していて、その課題に向き合っている。
そこから湧く悲しみや怒りを人に向けない。
当たり前だけど、有難い。

そんな彼が、リアルな父親に時々似ている。
性格とかではなく、ふとした瞬間に思う。

わたしが痩せるのを(バレてるんだけど)こっそり喜んでいるところ。
わたしのダイエット話になると、なぜかノリノリだなので不思議だった。
なんでかはわからない。
わたしのお腹がぷよぷよだろうと、あなたには関係がない、といつも思う。

なので、何回か本人にも言った。
「〇〇さんにはわたしが痩せようが太ろうが関係ないじゃん」
彼が
「いや、だって健康にもいいじゃん。。。」
とか、
「だって体力は必要でしょ、お子さんもいるんだから、、、」
とか、毎回言い訳みたいに答えながら声が小さくなっていくので吹き出しそうだった。

彼の好みは痩せているひとなのかな?
いっそ、そういえばいいのに。

彼はお父さんではないので、もしそういうことを考えてくれたなら嬉しい。
だって女としてみてもらっているということでしょ?

会えない時間が愛を育てる、ってほんとですね。
こんなにも彼のことばかり考えていて、脳内の記憶を反芻して、愛は育つ一方だ。

わたしがこんなにも女を拗らせた一因は父親にあると思っている。
「女の子がしあわせになれるかどうかはお父さんで決まる」という説があって、その理由はお父さん以上の男性じゃないとその子は満足できないからだそう。ともだちを見ていると、合っているような気がする。

だから、こんなにもすきな彼も、実はそんな大した男性じゃないのかも笑
うそ、そんなこと思ってない。
世界一かっこいいと本気で思っている、心から。

前回の「#56 男性遍歴」を書いていて思ったのだけど、わたしの男運の悪さは父のせいだとしか思えない笑
どこかに男運売ってたら、買ってしまうだろう。

男は父親か、じゃなかった、たぶん。
父親になれない男がいるだけだ。
お腹を痛めないから、とかじゃない。
女だって、産んだから母親になれるわけじゃないからだ。
わたしがこの年まで人間になれなかったのと一緒だ。

でも、素敵なお父さんにたぶん一生憧れる。


なんでか、この曲が思い浮かぶ。



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