見出し画像

夜の金木犀みたいな女になりたい

最近、毎晩散歩をしている。

先週はじめくらいまで、近所の金木犀が薫っていた。
毎年、いつの間にか現れては、ふと消えている。
普段は存在すら忘れているのに、急に秋を連れてくる彼女。

そう、わたしは金木犀を女性だと思っている。
二面性を感じるのだ。
朝の彼女は、柔らかい日差しに違和感なく溶けてやさしく薫る。
月明かりの下で出会う彼女は、濃密に甘ったるくしっとり絡みついてくるような気がする。

甘い薫りにわたしは酔ってしまった。

あの1週間、彼に恋焦がれる気持ちでわたしの中は満たされた。
もっともっと純粋に彼を思ってそれだけで生きていけたらいいのに。
そう思っていた。
火照るような自分を冷ましてから、子どもの隣で眠った。

あれは、きっと金木犀のせいだ。
人を狂わせるような甘い薫り。


夜の金木犀みたいな女になりたい。
姿をあらわさずに、わたしには見せない彼の姿を見ていられたらいいのに。
そのまま、わたしにとろとろ溶けてくれたらいいのに。
ひとときの夢でいいから。



サポート嬉しいです!新しい記事執筆のためシュタイナーの本購入に使わせていただきます。