自分の遍歴と失敗

雑文、失礼します


ここ最近は、照明関係の技術調査を進めているところです。

この会社は、画像機器展2020にも出展がありましたが、VISAメソッドによる光源技術に関心を持ちました。そこで、この会社が開催している某セミナーを受講中ですが、これが大学時代の専門とマッチしていて、非常に相性がよく感慨深い気分になっています。


私は修士課程まで大学院で学び、テラヘルツ領域と呼ばれる光の物性の研究に勤しんでいました。

今でこそ、”光学系の構築”や”光学特性の評価”と言った業務をやることはまずなくて、ほとんどプログラミングばかりしている気がします。

これは、並べようと思えばいくらでも理由が挙げられて・・・ですね

①私が元々高専の電子情報工学科を出ている関係で、コンピュータの仕組みやソフトウエアの開発プロセスについての知識がそれなりにあること
②光学系構築をやっていた割に、実験系での飲み込みが悪く、学習速度がとろいこと
③異様に手が不器用なこと
④運動神経が鈍く近視気味で太っていること
⑤理論的は得意だが、そもそも理論的な考察には誰も興味がないこと
⑥目的を理解していても、その目的を到達するプロセスに疑いがあれば、深追いして他の作業に目移りしてしまうこと

まあ、正直な話、④とか自己管理が出来ていないお前に問題があるだろう、とか、⑥とかそもそも社会人としての基礎がなってないのでは?とか、色々ツッコミを入れたくなるところでもあります。

①も一見ポジティブなように思うのですが、これって良くない部分もあるのです。これと②、③のせいで、「お前は実験系の研究室に向いていないぞ」と、現実を突きつけられるわけであります。

①があるせいで、実際物理系の研究室ではなく、情報系の研究室を友人からも推奨されました。「情報系の研究室で研究したい内容があるわけではないのになあ・・・」という心の声を抱きながら、こう考えていた記憶があります。

ただ、実験系の研究室に実際入った時に、⑤、⑥は結構な武器になりました。

⑤については、例えば光学定数を演算するにあたっては、多くの場合実験で得られた物理特性(私の研究室の場合は透過率スペクトル)と、その膜圧、波数の関係性を演算するには、陰関数法による数値計算の収束性を知っていないと、計算が出来ないのです。そういうのを扱うには非常に適してました。

⑥も、研究を進める上では非常に役立ちました。これがあるおかげで、「自分の視点」というものを大事にして、研究に臨み、例えば論文の輪読では、仮に自分が全部を把握していなくても、自分の関心を持った領域を考えて自分軸を作るのに非常に役に立った記憶があります。

社会人時代の失望

そして就職。就職自体は、大手企業で、コロナ禍以前では、様々なところでお声がかかる伸び盛りの企業でした。

(本音を言うと研究を続けたいと言う気持ちもあったのですが、いろいろ事情がありできなくなってしまいました。それについては、また別の機会に・・・)

しかし、私が本来武器としていた⑤〜⑥は、社会人時代において、それに拘ったために、失望してしまうことになります。


・元々手が不器用だから、正しい理屈が分かっていないから、という理由でハードの理解に時間がかかってしまい、実験をする仕事が与えられなかった。
・ソフトウエアを組ませた方が、マネジメント的には都合がよかった。
・しかし、アルゴリズムを組ませると、「画像が人レベルで認識できることは明らか」なのに、「想定している物理量の解析だとかをCMOSでやってしまったり、光学系の理解をして一つ一つ精査し始めるために、脱線してしまう」ことが多くなった。
→結果として、仕事ができない人間となってしまい、ソフトウエアのアプリ開発と評価の仕事しか与えられなくなった
(ちなみにソフト開発は、一人で相当な速度で対応してしまうので、実際にその分野では役立つと言われることはそれなりにあった気はします)
→コミュニケーションに難があるので、人と一緒に仕事をさせることに向いていない。一人で自己完結させる仕事を主にやることになった

典型的な仕事のできない人間のパターンにハマっていたように思えます。

確かに、仕事の勘所を理解できていない、という意味では私に非があると思います。

けれど、そもそも自分は「仕事の目移りがあり、理論的な考察をやってしまう」という性質を変えられないことが多かったです。これによって、周囲に対するストレスも増し、恨んだりすることも多いようでした。

6年経過した時点で、私は「一人で完結したソフトウエアの委託、開発、評価」のみしか与えられなくなっていました。もう長いこと経過していたので、自分の性質に抗うこともできなかった。

本当は、私は10年前に大学、大学院に入った時は、

「コンピュータのデジタル信号は、サンプリング定理や離散化によって打ち消されているから、どこまで突き詰めても、精度限界や縛られるS/Nが発生する。またその現象は人間が分かりやすくすることを前提にしているので、それによる前提条件も発生し、技術的な制約になる。これを打ち破るためには、アナログ信号処理を含めた知見が必要で、物理的な視点がなければそれを実現できない」

というなかなかしっかりした野望を持っていたのですが、方やそんな思いも、諦めていたところでした。


転職してみて、今

私は、とあるシステムインテギュレーターの会社に転職しました。そして、まずは今得意としている「ソフト設計」を中心にして仕事をもらっています。

実を言うと、仕事内容は、自己完結したものを作る、と言う観点では特に変わっていません。

しかし、今の上司が光学系の知見を持っていること、画像機器展での学び、今のセミナーでの知見が、少しずつハマり、少しずつですが光学系の構築をして、新たなビジネスチャンスを切り開けないか?と言うのを模索し始めるようになりました。

画像機器展での大半の展示は、AI系かハイパースペクトルカメラのようなあまり注目されていなかった(世間では)デバイスばかりが持て囃されており、こう言う照明に関して新たな着眼点を持つと言う発想は存在しなかった。

そして、、セミナーでは光物性の分野の内容がちょくちょく出てきたのもうれしかったです。誘電分散や金属の光吸収の議論は、本当に懐かしいな、と思いながらも、けれども今やっているマシンビジョンの領域でそれを理解する、と言う内容だったので、とても面白かったのです

また、私の過去の記事でもいくつか書いたように、CADによる分析、解読などの理解、精密工学的なアプローチもいくつか知っていたりして、最近はそれに近いことをやり始めていて、興味が再度元に戻ってきた、と言うのもあります。

世の中に出回っている光学デバイスの抜け穴を見つけていき、そこから別の視点で物事を考えてみて挑戦できることがあれば挑戦してみたいと私は考えています。









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