「フェミニズムから離れていく若い女子」は何を考えているか?
こんにちは。来殿ベルです。
2019年、社会学・ジェンダー研究者で武蔵大学他非常勤講師の高橋幸氏が『「フェミニズム離れ」する若い女子が抱いている違和感の正体』と題した論考を現代ビジネスオンラインで発表でしました。
高橋氏は、2021年にもほぼ同趣旨の主張をシンポジウムで繰り返しています。(こちらのページから氏が作成・使用した資料がダウンロードできます。)
興味深いテーマですが、私自身、まさしく「フェミニズム離れ」を起こしている若い女子(20代女性であれば入ります……よね?)として、この論考では最も重要な「フェミニズム離れの原因」が書かれていないと感じました。その点を今回のnoteで明らかにしたいと思います。
高橋氏は、若い女子のフェミニズム離れは「フェミニズムの誤解」によるものであり、「本当は手を取り合える」としていますが、結論から申し上げますと無理です。
まず、私は「胸の大きな女性当事者」で、「萌え文化の愛好者」です。
少なくともSNS上でフェミニストを名乗る人たちは、上の2つを積極的にバッシングの対象としてきました。
胸の大きな女性へのバッシング
具体的には、茜さやさんがフリー素材として配布していた画像が、広告に使われた時、プロフィールに「ジェンダー平等」「男女差別撤廃」などを謳うフェミニストから恒例のバッシングが起きました。「胸を強調していて不適切」「企業が使うべきでない画像素材」(何を基準に?)だそうです。
ですが、見て分かる通り、露出もなく、「強調」というより、単にご本人の胸の大きさが自然と分かるだけです。普通に外を出歩いていても、何の不思議もない服装でしょう。
これについて茜さやさんは、一部フェミニストの言動について「多様化を受け入れようとして多様化を潰してない……?」と疑念を提示しました。
当事者としての、ごく穏当な疑念、意見表明です。汚い言葉を使っている訳でもなく、フェミニストを過剰に責め立てた訳でもありません。
しかし、そんな茜さやさんに寄せられたバッシングは酷いものでした。中には、「手術で胸を小さくすることだって出来るのにそうしないのは性を売り物にしてる」「(茜さや氏は)牡蠣をよく食べているからパパ活をしている」など、胸の大きな女性への差別と、悪質な言いがかり以外の何物でもないツイートもありました。
さらに騒動からしばらく経った後にも再燃し、茜さやさんには「典型的なちんよし名誉女」「男性の性欲を利用して利益を得よう」としている、等々の罵詈雑言が投げつけられました。
フェミニストと自称・他称される人々のうちの少なくない部分が、こうした胸の大きな女性へのバッシングに直接的・間接的に加担しているという実情があります。
直近では、ハートクローゼットの黒澤社長への誹謗中傷問題もあり、それに関しては私の最初のnoteで書かせて頂きました。
さらに、この騒動の少し前に話題になった「宇崎ちゃん献血ポスター」に紐づけて、岩渕潤子氏が「巨乳は奇形」「知的障害を連想」などと発言しており、実在の胸の大きな女性から大きな抗議の声があがっています。
彼/彼女らが「本物の」「真の」フェミニストかどうかは、この際問題ではありません。フェミニストと認知されている人々による発言であり、大手フェミニストとみなされているアカウントからの批判もない(むしろ肯定することが多い)ことが分かれば、フェミニズムから離れていく理由としては十分です。
萌え文化に対するバッシング
フェミニストがバッシングする対象には、萌え文化があります。どうやら「萌え文化」=「男性文化」という認識が特に年配層で根付いていて、「安心してバッシングできる対象」とみなされているようです。
しかし、萌え文化は、創作者・消費者ともに数多くの女性が参加しています。
まず、イラストレーターの7割は女性です。
また別調査になりますが、イラストレーターの年代別男女比は次のようになっており、20代~30代の若い女性が多いことが分かります。
漫画家の7割が女性だというデータもあります。加えてアダルトコミックに関しても500名以上の女性作家が確認されており、アダルトコミック作家全体の6割程度を占めるのではないかと言われています。
萌え文化のファン層について男女比を網羅的に調査したデータは見つけられなかったのですが、『ラブライブ!』や『アイドルマスター』といった「男性向け」とみなされがちなゲームにかなり多数の女性ファンがついていることが分かります。
もちろん、作家さんの全員が「萌え」的な作風で活躍されている訳ではないでしょうし、部分的な調査であることは割り切らなくてはなりません。
しかしながら、「萌え文化の創作者・消費者の女性というのは、ごく稀で例外的な存在だ」とは言えないでしょう。
特に「フェミニズム離れ」を起こしているとされる若年女性の中にこそ、「萌え文化」に関わる多くの創作者・消費者がいると考えるのが合理的だと思われます。
つまり、萌え文化にバッシングを加えることは、ほとんど直接的に彼女らへの攻撃となります。
フェミニストは、「ゾーニングしろ、TPOをわきまえろと言っているだけで、禁止しろと言っているんじゃない」と主張します。しかし、ゾーニングされるということは、活躍の場がそれだけ減るということです。作家さんの経済基盤を脅かし、その方の作品を楽しみにしているファンをも脅かします。
ゾーニングは、あくまでもやむを得ない場合の最終手段です。ある程度、クリエイター業界の事情を知っている人であれば、ゾーニングは穏当な手段でも何でもないことを知っています。明らかな18禁描写などに限定して慎重に運用されるべきものです。
「やむを得ない理由」が十分合理的に説明されるのならいいでしょう。ですが、実際にバッシングされたのは、「宇崎ちゃん献血ポスター」や「ラブライブみかんポスター」のようなほとんど肌の露出さえも無いものです。
その攻撃する範囲の広さが分かれば、「萌え文化」に関わる女性クリエイターや女性ファンは表現規制型フェミニズムの主張を支持などしません。
「フェミニズム離れ」の理由
私の個人的な話を繰り返しさせて頂きます。
私は胸の大きな女性当事者で、萌え文化のファン当事者です。
フェミニズムが実績として確実にバッシングしてきた、まさにその肉体的特徴を持ち、萌え文化のファンである者です。
胸の大きな女性や萌え文化に対して行ってきたバッシングのうち、一体何が高橋幸氏の言うような「誤解」なのでしょうか?
「誤解」も何も、「事実」ではありませんか。
ほとんどすべてのログが残っています。また、フェミニストとして公的に知られる学者や議員が、苛烈なフェミニズムによるこれらのバッシングをやめるよう呼びかけたという事も、私の知る限りはありません。
むしろ「名誉男性」「ちんよし女」呼ばわりをも暗に明に肯定しながら、女性当事者のバッシングに加担してきたというのが実態でしょう。
「若い女子」がフェミニズム離れを起こす理由は簡単です。
反対すべき理由があり、賛同すべき理由がないからです。
私たちの利益を代弁していないからです。
私たちの楽しみを奪うからです。
最後に、もう一度、高橋幸氏のシンポジウム資料を引用しましょう。
他にもあるかと思いますが、最低でも【4】女性当事者が多くいる領域でバッシングを行っていると認知されてきているからの追加は必要です。
それでは、ここまでお読み頂きありがとうございました。問題認識が広まってほしいため、よろしければ記事のスキ&シェアをお願い致します。
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