神などいないと思った3.11【第3話】
3月に、沿岸で雪が降るなんて・・・・・。
しかもこんな状況に追い打ちをかける様に。
今、考えても不思議なタイミングだった。
そんな中、しばらく津波が家の中を滅茶苦茶にする光景を黙って見ていた。
そして、私と父の関係を壊してしまうキッカケになる出来事が起こる。
まだ、津波な押し寄せている最中なのにも関わらず、商売道具のトラックを高台に上げてこいというのだ。
私は耳を疑った。
この状況下で、危険を冒してまですることなのか。
「俺の命は?」
そう思った。
今思えば、あの時は、皆おかしくなっていたのかもしれない。
近所のおばさんは、家が津波で流されていたのを見ていたはずなのに、家に戻ろうとしていた。
皆、現実を理解できていなかったのかもしれない。
父もそうだったのかもしれない。
私の家の家族関係は、父が絶対的な存在だった。誰も逆らえない昔ながらの家柄だった。
父に無理を言われたことで、意地になり、私はトラックに走った。
トラックは、海水を少し被っていたが、古いトラックだったため、コンピューターが搭載されていないタイプだったのが良かった。
エンジンはかかった。
でも、前輪と後輪の間に丸太が入り込んでいた。
前進したり、バックしたり、津波が見えている状況で、焦りながら抜け出そうと必死にもがいた。
「ガダン」
と、丸太を何とか乗り越えられ、高台に煙を吐き出しながらトラックを運転していった。
あの時、私は怒りしか感じていなかったのを覚えている。
「ひどい奴だ」
そう思った。
高台からふと景色をみると、先ほどより津波の水位が上がっていた。
高台にいても、不安になる位だ。
私は、身の危険を感じ、家族に、
「もっと高台に移動しよう?」
と、言ったが、賛同したのは弟だけだった。
私は、高台に弟と向かうことにした。その道中に悲惨な光景を見ることになるとも知らずに・・・・。
第4話に続く。
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