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母音

書道家の米早食です。
日本は母音が少なく、それが英語や外国語の習熟に時間がかかる要因であると言われておりますが…
こと文学においては母音の少なさはプラスに働いていると言えるでしょう。

同音異義語が多くヒアリングが弱いとも言えますが…表記も音と文字が同じで、漢字かな混じり文は読みやすく読み書きに最適化した文化を創ったとも言えます。
日本の識字率の高さの原因もそこにあるのかもしれません。

音楽においては日本語の歌詞と英語の歌詞と比べてみると入れられる情報に制限があります。
アナと雪の女王では多国語での違いなどが取り沙汰されましたが、わたしが注目しているのは情報量の違い…

Let it go, let it go
Can’t hold it back anymore
Let it go, let it go
Turn away and slam the door

もういいわ、これでいい
これ以上は抑えられない
もういいわ、これでいい
背を向け、ドアを閉めるの

と言ったところでしょうか??

この部分…日本語訳の方は…

ありのままの姿見せるのよ
ありのままの自分になるの

となっており、日本語の歌詞の方が情報量は少なく、より抽象的であることがわかります。

英語では文字を繋げて発音するためにレット・イット・ゴーはレリゴーに聞こえるというのがありますが…その分歌詞を詰め込むことができるのです。

日本語の歌詞では「私はあなたを愛しています」を「愛している」だけで表現するなど省略するという形が多く見られます。
読み手によって意味が変わってしまう可能性があるのです…日本人が空気を読むことを美徳としたのもこの辺が原因なのかもしれません。

しかし、この制約は芸術にとっては良い方向に進んでいると言えます。
できるだけ短い言葉で沢山の意味を伝える…ひとつの作品を読み手の解釈に委ねることで作品を見る人がいることで完成させる…

書道も同じく…1つの言葉にも関わらず出来るだけ多くのことを伝えること…
弱々しく「強」という文字を書くだけでも、ああ、最大限に強がっているのだな…等、状況を伝えなくても一瞬でその作品の意図を示すことが出来るのです。

日本の母音よありがとう…
母音はまさしく芸術です…日本の文学はまさに母音が生み出した息子たちなのです…
母音よ…これからも優しく息子を包み込んでください…

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