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掘る


書道家の米早食です。
私は学生時代トンネルを掘るアルバイトで生計を立てていました…
このアルバイトは命がけで…穴を開けてはそこを爆破して残骸を穴の外に出してはまた爆破してという繰り返し…

我々、学生の掲示板によくアルバイトの募集が掲載されていて…「こんな山の中を通らなくても潔く迂回すればいいではないか…」とぶつくさ言いながらも日当2万円の報酬に釣られて穴を掘ったものでした。
今考えると命がけの仕事にも関わらずヘルメットもつけずよく頑張ったものだなぁ…と思います…

トンネルも中腹まで掘り進めるとガスの発生や、土砂崩れなど、さらに危険が増すのですが…仕事が終わり皆がらトンネルの外に出る間、私は少しそこに残って真っ暗な穴の中で山と一体になったかのような不思議な安心感と暗闇の孤独感、事故が起きてしまうかもしれないというスリル…複雑な感情を味わっていました…

最後の発破が終わり明るい日が差したときには「ああ…遂に貫通してしまったのか…もう…掘ることはできないのか…」と感動とともに悲しみに似た感情を覚えました…
今でも私が初めて掘ったトンネルは忘れられません…

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