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海外保活経験者が語る保活の進め方

はじめまして、初投稿です。米国駐在員のべいちゅーと申します。

妻の日本での復職のため2020年4月入園に向けアメリカから3歳1歳の東京での認可保育園の保活をし、無事二人とも別園ですが認可保育園に入園できました。海外からの保活経験は稀と思い、僭越ながら経験とノウハウを共有したいと思います。初回は保活の問題点について触れたいと思います。

そもそも保活とは

保活とは、保育園に入るための一連の活動であり、子供の人口増加速度に対して保育施設の増加速度が追い付いていない社会バグです。それに人気区、人気園への集中も相まって、一部の地域では激化しています。2019年9月6日に厚生労働省から発行された「保育所等関連状況取りまとめ(平成 31 年4月1日)」を見ると、全国の待機児童は2017年の26,081人から2019年の16,772人に大きく減少しているものの依然としてかなりの人数です。

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(出所:厚労省HP 保育所等関連状況取りまとめ(平成31年4月1日)から)

2019年4月時点での全国の待機児童マップを見てみましょう。赤っぽい色が待機児童が多い都道府県です。東京・埼玉・千葉・神奈川・大阪等の大都市圏は直感的に理解できますね。兵庫は大阪よりも激戦です。2019年10月から幼保無償化が始まりましたが、兵庫県明石市ではそれに先駆けて2016年9月から第二子以降の無償化を進めていたため、保育園需要を喚起したちまち激戦区と化してしまいました。福岡は若い女性が九州・中国地方から集まる傾向にあるのでこちらも直感的に理解できます。
職があるのに子供が預けられないので働けない、働きたいのに子供が預けられないのに職が持てないなんて馬鹿げた話です。2016年に”保育園落ちた、日本死ね”で瞬く間に保活をめぐる熾烈な環境が認知されましたが、実は保活という言葉はまだまだ浸透していないように思います。2019年時点で私は子持ちの友人4人から保活って何?と質問されました。

保育園に入れたい親のスタンス

社会のバグを嘆くばかりでは何も解決しません。少しでも保育・初等教育をめぐる環境が良くなることに期待して、声を上げ、選挙に行き、社会を変えていこうではありませんか。
とはいえ、自分たちが保活をするこの瞬間が一瞬で劇的に改善され自分たちの保活が楽になることなんてありえません。私たちの声は先輩子育て世代としての、次の世代のためと言えるでしょう。では、いま保活を迎える親たちはどう向き合えばよいのか?決められたルールの中で戦う絶対に失敗できないゲームとして臨むほかないのです。保活は受験に似ていますが、子の努力・能力を必要としない点で異なります。

保活というゲームのルール

1. ゴール
以下の要素を満たす施設に内定すること
(1) 子供を安心して預けられる施設
(2) 現実的に通える距離にある施設
(3) 復職日までに入園可能である施設

2. ルール
(1) 大まかに分けて市区で選考を管理する認可保育園とそれ以外の認可外保育園に分けられる。両方に申し込んでも良い。
(2) 家庭の状況・子供状況で基本的な指数が決まる。多少調整余地あり。
(3) 居住する市区外への申し込みは減点となる。その他にも減点規定あり。

改めて振り返る保活のしんどさ

保活ってしんどいです。経験者の方はよくご存じでしょう。これから保活と言う方も色々大変な話を聞いたことがあるのではないでしょうか?以下、保活のプロセスに沿って私が感じる問題点を説明します。

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1. 情報収集が困難
認可保育園は区役所及び区のウェブサイトで募集人数等の最低限の情報を入手できます。認証保育園、無認可保育園は各園で独自の方針を持っているため、各園ごとに調べる必要があります。認可保育園の選考方法は保育指数を基準となりますが、認証保育園・無認可保育園はそれぞれです。ウェブサイトを訪問しても選考方法は公開されていないことがほとんどで電話で確認しなくてはなりません。先着順、抽選等、様々です。前年の最低内定保育指数すら公開していない不届きな区があります。また区長が特別と認めた場合は+30点という区もあります。なんだか如何わしい臭いがプンプンします。

(主なタスク)
・いくつか気になる保育園をウェブサイトや第三者評価等で調べる。
・市区の認可保育園入園の手引き(しおり、要綱とも)を熟読する。
・自分たちの保育指数を計算する。

2. 選考が熾烈
さて、頑張って保育園の情報を収集完了。努力の甲斐あって、良さそうな保育園をいくつか見つかりました。では、選考についても見てみましょう。 驚きました。認可保育園の人気園はフルタイム共働きの点数でも到底届きません。認証保育園では待ちは数十人。とても入れそうにありません。しかたなく自宅からの距離が離れたところも視野に入れ始めます。自宅から20分歩いた園でなんとかギリギリ戦えるレベル、、、こんな風に愕然とすることもしばしばです。

3. 保育指数の加点方法が限定的
愕然としたあなたは、保育指数で加点を狙う方法を調べます。ところが、そう多くはありません。きょうだい同一園にするための転園、きょうだい同時期の入園申し込み、育児休業の早期切り上げ、年齢上限のある保育施設からの転園、このあたりが主たる加点要素です(特別な支援が必要な場合、ひとり親、生活保護、障害、勤務先の倒産や勤務先からの解雇、等々は多くの場合大きな加点が得られ、保活においては有利に進められるためここでは割愛します)。どれもなかなか狙って取れるようなものではなさそうです。

(主なタスク)
・調整指数のうち、加点が得られそうなものの目星を付ける
・隣の市区の保育園が近ければそれも候補に入れるなど柔軟に考える。
・5歳児までの園だけでなく2歳児までの園なども候補に入れる。
・以上を踏まえて大まかな保育戦略を立てる。

4. 見学のアポ取りと見学が大変
それでも少しでも入園の可能性がある園を求めて、何園も見学しなくてはなりません。アポ取りだけで大変。子供一緒に歩き回ってさらに大変。もうこれだけでヘトヘトです。当然ですが、見学は入園を保証するものではないので内定につながるとは限りません。我が家は8月に一時帰国をして、AirBnBで宿を借り、妻と二人で手分けして3日で10園ほど見学しました。暑さと雨で辛かったです。見学が終わった4時過ぎに電車で宿に戻ろうとホームまで下りましたがすでに帰宅ラッシュが始まっており、子連れで電車に乗れる余裕などなく、、、駅員さんに説明して改札を通り抜けました。タクシーは電話で配車依頼しても満車で来てもらえず、諦めて宿まで30分以上歩いた時は涙が出ました。

(主なタスク)
・見学園の決定
・電話予約の時間確保
・スケジュール管理
・見学時間の確保
・見学内容のまとめ

5. 申し込みが煩雑、想定すべきケースが膨大
何とか現実的に戦えそうな園をいくつか絞って入園申し込みの準備を進めます。膨大な必要資料、保育課の入園のしおりが不明瞭で何度も確認が必要となります。区の担当者によって回答が変わることもしばしばあり、頭が混乱します。認証保育園からは専願申し込みだと有利だと言われるも、内定を保証するわけではないので判断が難しい。きょうだいで申し込む場合は、上の子が有利で下の子が不利で別園になりそう、、、その場合現実的に通えそうな園の組み合わせは、、、といくつものケースを想定しなければなりません。我が家はここが一番大変でした。

(主なタスク)
・見学内容を踏まえての希望園の優先順位付け
・市区の入園のしおりを再度熟読
・必要書類の確認、準備・手配、入園申込書の記入および提出

6. 結果通知までの待ち時間が不安
どうにか申込書提出までこぎつけました。お疲れ様です。安堵も束の間、刻々と迫る就業開始(復職)日。一方でまだまだ時間がかかる保育園の結果通知。勤務先にもハッキリとしたことが言えず、板挟みの状態。不安とストレスが募るばかり。この間に全施設で内定が出なかった場合のプランBを考えましょう(本当はプランBを踏まえた上で申し込みが出来ればなお良い)。区外の園、延長保育を実施している幼稚園を再度チェックしても良いですし、郊外に住む両親を頼れる場合は、通勤時間を犠牲にすれば(義)実家に居候して近隣の幼稚園に行かせることも候補に挙がるかもしれません。認可保育園の一次選考結果が出ると同時に二次募集の空き枠も公表されるので、それを確認してから入れそうな区に思い切って引っ越す等々、0ベースで考えましょう。母は絶対に復職しなくてはならないのです。

(主なタスク)
・プランBの検討

7. そもそも時間が取れない
ここまで約3000字ほど書きましたが、これらの作業は一体誰がするんでしょう?笑
とても一人で出来る作業量ではありません。当然、夫婦の協力が必要です。(注:ひとり親フルタイムの場合は選考ではかなり有利で、ここまで調べなくとも希望園に入れると思います。ですので以下、保活が大変な夫婦という想定で進めます)
おそらく多くの家庭において復職(あるいは就業)希望者である母(妻)が主に保活を行っているのではないでしょうか?しかし考えてみてください。母は乳幼児に付きっきりで保活のことを考える余裕なんてあろうはずがありません(変な日本語)。保活どころかまともに寝られないし、食べられないんですから。

”夫婦で協力して”って簡単に言うけど、、、

協力体制を築くのは簡単ではないですよね。夫婦でじっくり話す時間すら取れないかもしれません。巷では夫が全く手伝ってくれないなんて悲鳴がいくらでも聞こえてきます。夫側の不満は聞いたことがありませんが、毎日終電まで働いてその後から保活をする体力・気力なんてどこにもないという声も聞こえてきそうです。

保活は誰の課題か?

じゃあ夫婦でどちらが何をすればいいのか、と思われそうですが最適解はありません。家庭における育児の環境や夫の仕事の負荷・繁忙等で答えはそれぞれです。
では、視点を変えて保活は誰の課題か考えてみましょう。
夫が「妻の課題」と答えた場合、妻の皆さん。今すぐ離婚届をもらいに行きましょう。脱兎のごとく逃げ出してください。妻の復職を自分事の課題と捉えられないのであれば、おそらく今後の人生で遭遇するであろう保活より大きな問題を到底クリアできるとは思えません。
そうです、保活はいわば試金石。我々子育て世代は社会に試されているのです!
保活は言うまでもなく夫婦の課題です。異論は認めません。なぜなら保育園は最愛の妻の復職のための必要条件でありながら、大事な子供を預ける超重要な教育施設(ここでは保育園も教育とします)なのですから!
この点を理解してなければヤバいです。理解していてまだ妻に任せるとのたまうならもっとヤバいです。父になる気が0としか思えません。この先の学童問題、学区選び、学校でのトラブル、塾、進路、等、何一つ戦力になるイメージが湧いてきません。普通に脳みそを回転させたらこんな状況では妻は絶望することなど容易に想像できます。なのに手を打たないとなると、父どころか夫としての継続に疑義が生じます。ゴーイングコンサーンってやつです。

最後に

私は生憎、どうすれば夫婦で協力して保活に取り組めるのか?という問いの答えを持ち合わせておりません。夫婦で話し合いをしてお互いの気持ちを伝え合ってすり合わせしていくほかありません。
この記事が一人でも多くの保活夫婦の話し合いのきっかけに役立てば幸いと存じます。
次回はこれを踏まえて、海外からの保活特有の問題を説明します。



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