なぜ、感染した人を非難してはいけないか?人間行動の法則から解説する
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なぜ、感染した人を非難してはいけないか?人間行動の法則から解説する

松田壮一郎

つい先ほど、Yahoo!ニュースがTwitterで流れてきたので、読んでみた(4月11日時点)。

「ふむふむ...何て的を射た指摘だ...素晴らしいなぁ。」と僕は即座にリツイートをした。

・・・って、それで終わっちゃだめじゃん、自分!

と10分後ぐらいに自分で自分に突っ込みを入れた。

普段から「行動デザイナー」を怪しげに自称し始め、「行動デザイン研究室」を大学で立ち上げたにも関わらず、このタイミングでアクションを起こさないとは何たることぞ!子どもの寝かしつけが終わったからと言って、録画したドリームマッチ2020を見ようとしてる場合じゃないぞ!(これ書き終わったら見よう!4月11日時点。やっぱり山ちゃん大好き。4月15日時点。)

ということで、「行動変容」がプチ・バズワード?となっている現在、人間行動変容について大学で教えている私が、

「なぜ、感染した人を非難してはいけないか」

について、人間行動の法則から解説しようと思う。(4月15日時点)

1. 個人攻撃の罠:問題はそこじゃない

例えば、あなたは、Aさんがマスクもせずに繁華街へ出かけたことを知る。すると、日頃から情報収集を欠かさず、休業せざるを得ない周囲の人々のことや、生活を支える経済的基盤を失い絶望に包まれている人々、不安で公園にも行けなくなってしまった人々が、次々と脳裏に浮かんでくる。そして次の瞬間、怒りと憤りの感情があなたの体中を駆け巡り、こう叫び始めるのだ。「なんて意識が低いんだ!医療従事者がどれだけ頑張ってると思うのだ!そもそも危機感が足りない!Aは本当にしょーもない奴だ!」と。

その感情や思いは非常に共感できるし、あなたは周囲の人々への心配りを忘ず、義憤に駆られる素敵な人なんだろうと思う。しかし、この際に気を付けなければいけないのが、「意識の低さ」や「危機感の不足」を行動の原因として考えると、問題解決から遠のいてしまう、という事実だ。

個人攻撃の罠

図1:個人攻撃の罠

あなたは、Aさんが、「マスクせずに人が多いところへ外出する」という行動の原因として、「意識が低い、危機感が足りない」というAさんの「内面」へ焦点を当てる。しかし、「マスクをせずに人が多いところへ外出する」ところを見なかった場合、果たして、Aさんに対して、「意識が低い、危機感が足りない」と感じることはあっただろうか?

以上が、人間が日常的に陥りやすい、個人攻撃の罠の例である。この罠に陥ると、あたかも、「意識を高める」「十分な危機感をもつ」ことが問題解決の鍵の様に見えてしまう(本当は違う)。もしあなたが、そのカリスマ性を発揮して、Aさんの「意識を高め、十分な危機感を植え付ける」ことに成功したとして、どうやって、その事実は確認出来るのだろうか?(確認できない)。本当に、「意識を高め、十分な危機感をもつ」と、「マスクをせずに人が多いところへ外出する」ことは無くなるのだろうか?(無くならない)。つまり、「マスクをせずに人が多いところへ外出する」ということを、「意識が低い」「危機感が足りない」という、より抽象的・内面的な言葉へ置き換えただけ、なのである(それが悪いわけではなく、ほとんど多くの人間はそう考えてしまう)。

そう、意識が低かろうが、危機感を持っていなかろうが、「マスクをせずに人が多いところへ外出する」代わりに、「基本的に家にいる。生活に必要なモノを買う時にはマスクを付けて外出する」という行動を増やせば、上記の例における問題は解決するのである(注:ここでの「問題」は医学的な問題ではなく、社会的に不適切とされている行動問題、という意味)。

さて、それではどの様に、ターゲットとなる行動を増やしたり、減らしたりすることが出来るのだろうか。

2. 後続事象による行動の制御①:叱責は隠蔽をうむ

急に難しそうな単語が並んだが、要は、「行動の直後に生じる事象によって、その行動は増えたり、減ったりする」ということである。

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図2:後続事象によって行動は変容する(1)

例えば、あなたの子どもが学校から帰ってきて、100点中15点の答案を見せたとしよう。そして、あなたは「なんでこんな点数を取るんだ!普段からもっと勉強しなきゃダメじゃないか!」とか言って怒ったとしよう。あなたの子どもは、次回、悪い点数のテストをあなたに見せるだろうか?

例えば、あなたの部下が取引先から帰ってきて、持って行った見積書の数字が一桁間違っていたため、契約成立のチャンスを他社へ持っていかれてしまった報告を受けたとしよう。そして、あなたは「ふざけるな!桁を間違える奴があるか!馬鹿野郎!!」などと激怒したとしよう。あなたの部下は、次回、仕事上のミスをあなたに報告するだろうか?

上の2つの例では、きっと、テストの結果を見せたり、ミスを報告すること自体、少なくなることが予想される。叱責を受けることは、大抵の人にとって嫌悪的である。嫌悪的なことは回避したいのが人情である。つまり、結果として何が起こりやすくなるかというと、「叱責を回避するために、テストの結果や仕事上のミスを隠す」という行動の増加である(図3)。

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図3:後続事象によって行動は変容する(2)

テストの点数やミスを把握しない限り、今後、テストの点数やミスの回数が上昇/低下したかを知ることもできなくなってしまう。つまり、報告行為自体は積極的に増やしていかなければ、マネジメント自体、成立しなくなる。

3. 後続事象による行動の制御②:適切な行動を増やす

「報告する」という行為自体を積極的に増やしていく為には、「報告する」行動の直後に、ポジティブな後続事象を設定する必要がある。先ほどの例では、点数に関係なく、「テストの点を見せてくれて、ありがとう」ぐらいは言っておきたい。「ミスを報告してくれて、ありがとう」と言える上司は多くないし、口が裂けても言いたくない人が多数だと思う。せめて、「言いづらかっただろうが、ミスの報告無くては会社は成立しない。君のプロ意識に感謝する」ぐらい言ってみよう。言えないか。言えなくても怒るのはやめよう。

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図4:後続事象によって行動は変容する(3)

そもそも、問題とされていたのは、「テストで悪い点数を取ること」で、「テストでの悪い点数を報告すること」では無かったはず。問題なのは、「ミスをすること」で「ミスを報告すること」では無い。それでは、何をすれば、テストの点数が上がるだろうか?何をすれば、ミスをせずに契約を取れるようになるだろうか?

そこで、「勉強意識を高める」「仕事へのモチベーションを上げる」なんていう回答が出てきた人は、もう一度上から文章を読み直して下さい。もしくは(そして多分きっと)私の文章のせいなので、文末の参考文献でも読んで下さい。お願いします。ごめんなさい。

そう、テストで点を取るには、テストに直結する問題を解くなど、ミスを減らすには、営業先に向かう前にチェックリストを活用して書類を確認するなどの、具体的な行動を増やせば良いのです。どのような事象が後続すれば、増やせそうか、考えてみましょう(図5)。問題を解いたらゲームが10分出来る、でも良いですし、見積書確認をしたら、ファンファーレを同僚が吹くのでも良いですし...(冗談ですが、楽しいことが好きです、私は)

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図5:後続事象によって行動は変容する(4)

4. 感染した人を非難すると感染拡大リスクが高まる

ここまで読んだあなたは、もう既に理解しましたよね、そうです、

感染した人を非難すると、感染拡大リスクが高まる

ということなんです。それでは復習していきましょう。まず、感染者への非難は、感染者の報告行動を減らす可能性が非常に高いです(図6)。

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図6:感染者への非難は、感染に関する報告行動を減らす

更に、非難が続くと、感染自体を隠す行動や、感染経路についての詳細な情報を隠す、という行動が誘発される恐れが高くなります(図7)。

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図7:感染者への非難は、感染に関する隠蔽を増やす

5. お互いに労いあってやろう

そうなんです、「感染者への非難は、百害あって一利なし」。感染の報告それ自体は、今後の施策を決定していく上で、非常に重要なものなので、お互いに感謝していきましょう。「言いづらいけど、言ってくれてありがとな」マインドでいきましょう(図8)。

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図8:言ってくれて、ありがとな

それよりも、身の回りの、適切な行動を取っていること自体を、「当然じゃん」では無くて、もっとお互いに褒めあっても良いじゃないでしょうか(図9)。それは、適切な行動の維持・増加へ確実に繋がっているはずです。自分へのご褒美の設定も考えていきましょう。きっと、そっちの方が、楽しいと思うなぁ、私は。

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図9:頑張ってるよね、我ら

眠気まなこで一気に書いたので、文章中で人格が分裂している気がします。ここでは、科学的に厳密な説明よりも、分かりやすさを追求したので、より正確なことを知りたい方は、以下の文献をご覧ください。

(追記:目に余る誤字脱字やてにおはの修正(4/16))

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