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“痴漢”って実は犯罪じゃない?


「痴漢」

この言葉を見ると、どうも
女の人に触る、どうしようもない行為を
指すイメージが湧きますね。

でも漢字の成り立ちから
考えると、どうにもおかしいんです。

「痴」の成り立ち

「痴」はそもそも「癡」の略自体なんです。

なので上記の篆文文字は
「癡」のものとなります。

「疒」は病台を指し
「匕」は左右に分かれる道
「矢」は杖を持ったおじいさん
「マ」は角
「疋」は足を指します。

総合すると、
「左右に分かれる道に立ったおじいさんが
足を止めてしまった」様子と
「病台に伏した人間」が合わさったことで

「前に進めず立ち止まった
愚かなおじいさん」を意味しています。

これが「痴」となっているので

決して、性欲に忠実なおじいさんではなく
むしろ“愚かなおじいさん”の意味合いが
強いんですよね。

実際に辞書を引いてみると

女にみだらないたずらをしかける男。
みだらないたずらをすること。痴漢行為。「—をして逮捕される」
ばかな男。おろかもの。しれもの。

https://dictionary.goo.ne.jp/word/痴漢/

と出ます。

どちらかといえば
3の方が成り立ちに則しています。

「痴(し)れ者」とか「痴(おろ)か」
仏教用語の三毒を表す「貪瞋痴(とんじんち)」も
3の意味合いが強いんです。

仏教由来の言葉「愚痴」も
無知で愚かな様を表しています。

では、どうして現在使われている
1や2の意味が強まったのでしょう?

「痴漢」が淫らな行為を示すようになったワケ

上記のサイト様に
その推測がなされているので
特にその部分がわかる箇所を
引用させていただきます。

 そういう目で見ていくと、他にもそのような戦前の例がある。岡本綺堂の『郊外生活の一年』というエッセイがそれだ。この文章が書かれたのは1925年である。

 「わたしの家の女中のひとりが午後十時ごろに外から帰って来る途中、横町の暗いところで例の痴漢に襲われかかったが」

ここでの「痴漢」も一見、女性にみだらな行為をする男のようにも読み取れるが、「例の」と言っているのは、不良仲間の窃盗犯のことなのである。つまりこの例も、そのような者を、愚か者、ばか者といっているように私には思える。

Japan Knowledge 第476回 「痴漢」が性犯罪になったのはいつ? 2022年2月21日

ここから推測できることですが

もともと、「愚かな男」として
痴漢という言葉が使われていた。

「愚かな男」がする代表的なことが
窃盗や淫らな行為だった。

特に、よくない事をする人は
自分より弱い人、
つまり女性を狙いやすい。

女性を襲う痴漢は
不良ではあるが、そこでやることは
大抵“淫らな行為”だった。

痴漢=淫らな行為をする男
というイメージが定着した。

こんなことではないか
と思います。

意味の変遷は納得いったんですが
少し疑問が残るんですよね…

それは

一体なぜ「癡」→「痴」になったのか?

「疑」と「知」に込められた想い


「疑」と「知」は、現在でも
それぞれよく使われている漢字です。

ですが、音読みも訓読みも違います。

なーんか、代替できる漢字じゃない気が
するんですよね〜…。

その疑問を解決するために
それぞれの成り立ちに
注目していきたいと思います!

「疑」「知」の成り立ち

まずは「疑」の方から
見ていきましょう♪


「疑」って甲骨文字で
古くから存在するんです!

で、見てみると…

めちゃめちゃ
「杖持ったおじいちゃん」にしか
見えない!!

実は、
「右に進もうとする人が
後ろを振り返り杖を立てて
進退を決めかねている様子」を
指しているんです。

これが小篆文字になると
色々つけ加わりまして…


「疑」小篆文字

人が後ろを振り向いている様子は
左側で、右上には子供が、
右下には足が加わりました。

どうやら、「疑」は子供を探して
ウロウロし立ち止まっている様子
に変化した模様。

「匕」と「矢」で
後ろを向く人を表した感じですね。

では、「知」はというと…


こちらは会意文字で
「矢」と「口」が
合わさった漢字です。

どうやら
「矢を神器に置いて神意を知る」
意味になったらしいのですが…

なんだ!矢を置いて知るって!
祭祀や儀式で知るのでは!?

と思いまして、

というより「矢」の部分が
人にしか見えないんですよね。

そこで先ほどの「疑」を
思い出してほしんです。

甲骨文字や小篆文字から
推測すれば

「矢」の部分は人の形を表す符号
なんじゃないか?という話。

こう考えると、
「矢」→人の様子
「口」→話す
と置き換えられます。

人というのは読み書きより先に
話すことでコミュニケーションをとり
物事を知りました。

それを如実に表すため
こちらの方が納得しやすい…

また、こちらのサイト様は
このように考えておられます。

矢は形態的にはまっすぐで短い直線状をなす。機能的には物に当てる。具体は捨象して「まっすぐ」「当てる」というイメージだけが取られる。口はくちや言葉と関わることを示す限定符号。したがって知は物事の本質をずばりと言い当てる状況を暗示させる図形と解釈できる。これは図形的意匠であって意味ではない。物事の本質をずばりと理解する、あるいは、意識を対象にまっすぐ向けてそれが何であるかが分かるという意味を表そうとするのである。これこそ知の意味である。

「知」を、
「物事の本質をズバリ言い当てる状況」
を表す符号だとすると

「疑」は、
「物事の本質に対し
キチンと向かえず迷っている状況」
を表している符号と捉えられます。

これだけ見れば
「疑」と「知」は成り立ちから
全く意味が異なります。

しかし「知」に「疒」をつけると
病台に伏して動けない状況がプラスされるので
「知」本来の意味が弱まるorマイナスに
なりますね。

ズバリ本質を言い当てられない。
だから、「痴か」なんだ、と。

こう考えると
「癡」≒「痴」≒「疑」に
ニュアンスが近くなる…

「癡」の方は
二重に意味がかかっており
より“ウロウロ迷う状況”と
なっています。

だから略字として
「癡」は、より画数の少ない
「痴」に変えられたのかもしれません。

まとめ


・「痴漢」は愚かな男。
・愚かな男は窃盗や不良をしでかす
→そういう人は自分より弱い存在、女性を襲う
→女性を襲うということは淫らなことをする場合が多い
→「痴漢」に“淫らな行為”のイメージがついた。

・「癡」→「痴」になったが、
「知」に「疒」がつくことで
「疑」や「癡」のニュアンスが出てくるため
略字になっても問題なかったと推測できる!

ということです!


ただ、「痴漢」を
本来の“愚かな男”として
会話の中で使うのは無理ですね。

A「昨日さ〜帰りに痴漢を見たよ」
B「え!?」
A「コンビニでさ、箸をつけるかどうか
聞かれて、“いらないに決まってるだろ💢”
って怒鳴ってたよ。ほんと痴漢だよね。」
B「????」

絶対、混乱させてしまう…。

教養として知っておきましょう♪

では、また👋

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