ある日 僕はヤクザの事務所当番になった。

ある日学校をサボって 駅のベンチでボーっとしていたら、ちょっと悪ぶった先輩が声を掛けてくれて、暇なら良いところに連れて行ってやるよと言った。

駅から少し歩いたマンションの5階のエレベーターを降りると 通路の一番奥 ドアの前についた ドアホンを押す先輩の後ろで 高校生の僕は天井に付いていた やけに本格的はカメラを見て ここは普通の場所ではない気がした。案の定ドアを少し開け現れたのは いかにもな20代くらいの若いヤクザだった。おおよく来たな と先輩と僕に人懐っこい笑顔を見せて言った。

先輩は腰を低くして おはようございます といって中に入って行く 僕も後を付いて入って行くと 大きな額に家紋が飾ってある部屋に通され フカフカの革のソファーに座って 出されたアイスコーヒーを飲んだ。重厚感のある家具、鷹や、ウミガメの剥製など まるで映画の中のヤクザの事務所だった。先輩は若いヤクザに 僕を紹介すると

今日はこいつが当番しますんで と、なにかとんでもない事を突然言い出した オイオイと思ったが、もう逃げ出せない所まで来ていたので、僕はヘラヘラと笑うしかなかった、、

先輩はさっと立ち上がると じゃあ頼むと 逃げるように事務所を出ていった。

学生服の僕を見て 若いヤクザの彼はとりあえず掃除してな、掃除機かけて、雑巾してなと 優しく言うと どこかに電話を掛けて延々と話していた。

掃除機を見つけて各部屋に掛けたが、ある一室の前に来ると 走ってきてここは掃除しなくていいから、と表情を変えて言った。

雑巾がけを終えると、彼がじゃ次トイレな トイレな舐められるくらいキレイにしてなと笑顔で言った。掃除を終えたと伝えると若衆の彼がトイレを見て 本当に舐められるくらいだよ、お兄ちゃん と這いつくばってトイレを拭いてみせた。その姿が病的な感じもしたが、素直に再度這いつくばって拭き直した。タバコをくわてたらすぐ火をつける、灰皿は2本で交換。電話は愛想よく出るな太い声を出せなど、いろいろ指導を受けた、ご褒美にお昼に出前のカツ丼をごちそうになる。うまい!下の喫茶店からコーヒーも届く

午後になると、ぞろぞろと組員らしき人達が出入りし始めた、その時に思った事はヤクザはいかにもヤクザに見える人は少なくて、ホントに会社とか周りに居る真面目そうな働き者に見える人が結構いた事だった。

この人達は一見普通の人だが、人を落とし入れるテクニックをたくさん持っていて、ある瞬間に人を平気で殺せる人達だと思った、

ただし そういう人は薬をやっている 

戦争も兵士は薬をやっている。

しらふ では 人は人を傷付られないとのではと

ぼくは思っている。

その事務所当番はその後もう一度行かないと行けない状況になった、そして僕はあの部屋を、そっと開けた、、

先輩とはもう連絡も取っていない。

あの人達の 人懐っこい笑顔は 狂気と紙一重で、お付き合いは全くおすすめしない。

しかし これは 後に自分を危険から救ってくれる経験になった。

痛くて高い勉強代だったが、命は買えないので 良かったかなと思ってる。