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祖父が死んで、祖父の家族に嫉妬する

先週、父方の祖父が死んだ

何年も会っていなかった。
前に会ったのがいつだったか思い出せないくらいだから、ずっと前だろうね。
棺に入っていたその顔は見覚えがなかった。こんな顔だっけ。
昔見た顔と違う気がする。
そのくらい祖父は私にとってどうでもいい存在だった。

父方の親戚とは全く交流がなかった。
父方の家族は絆とか、関係が本当に薄いと思っていた。
私は祖父から愛情を感じたことがない。
大人になってから母から聞いた話だが
私の父は、小さい時に祖母が家を出て行方知れず、祖父からはひたすら放っておかれていたらしい。
少し納得はした。でもそれで終わり。
今まで気にしたことなかったし、どうでもよかった。興味なかった。

でも、もう、どうでもいいとは言えない。
今は祖父が憎い。
愛されなかった理由を目の当たりにしたからだ

祖父には家族がいた

祖母が出て行った後、祖父には愛し合った女性がいた。
この女性をS子さんと呼ぶことにする。
籍こそ入れていないが、S子さんと常に一緒に過ごしていたらしい
S子さんの兄弟や子、孫が祖父の葬式に来た

祖父の思い出話をたくさん聞いた
祖父は歌が得意らしい
祖父は酒が好きらしい
祖父はとても愉快な人らしい
どれも私の知らない祖父、私は思い出話なんか一つも思いつかない

あたりまえだ
血の繋がりは無くとも、S子さん一家の一員として迎え入れられて家族になっていた
祖父にとっての家族は、私達ではなく、S子さん達だった

遺族とは何だ

S子さん一家の存在は知識としては知っていたし、S子さん個人とは2度ほど会ったことがある
その当時は何も感じなかった。
今はもう見せつけられてしまった。

S子さんの孫は葬儀で泣いて悲しんだ。
血縁の孫であるはずの私は涙なんか出なかった。

骨壺に祖父の骨を入れた後、S子さんの娘が鞄から風呂敷を取り出した。
余った骨を風呂敷に包んで持ち帰っていた
家族だけでお別れをするのだろうな

傍から見ても、あちらの方がよっぽど遺族らしい
だったら あちらが喪主をやればいいのに
何で私はS子さん一家へお茶を出しているのだ
お客さん扱いしているのだ
母と湯呑みの片付けをしているのだ
楽しいことだけ搾取して、面倒事だけ押し付けられたような気になってしまう。

祖父が憎い

今までは何とも思っていなかったのに
もし孫として可愛がられていたら?という馬鹿馬鹿しくてあり得ないただの妄想が、別の人にとっては現実だったから

血の繋がりなんて関係ない
結婚だってしなくてもいい
愛情さえあれば他人でも家族になれる
とっても美しいおとぎ話のような世界を実現させた、愛で結ばれた家族たち
よかったね。祖父はさぞかし幸せだったろうね。

死んだ人のことを死をきっかけに憎むようになるなんてみじめだね

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