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【ショートショート】ごはん杖#毎週ショートショートnote

 完璧な顔、プロポーション。美しく豊かな髪は女神そのものだ。

 俺は隣で眠る彼女を、飽きもせずに眺める。

 やがて、長いまつ毛を揺らし彼女の透き通るような瞳が俺を見て微笑む。

「おはよう。なんだか朝からお腹すいちゃった」

「いいよ、何でも言ってごらん。作ってあげる」

「じゃあ、クロックムッシュが良いわ」

 彼女のおでこにキスをすると、俺はキッチンへ向かう。

 俺は料理なんてしたことがない。だが、伝家の宝刀、ごはん杖がある。

 とある貴族の料理人をしていた父から病床で託されたものだ。強くイメージして一振りすると、まさにその料理が現れる。この杖のおかげで俺の家系は代々料理人として成功し、美人の妻を射止めている。

 クロックムッシュをイメージしてごはん杖を一振りすると、八時ニ十分の目覚まし時計が現れた。

「えっと、クロックムッシュって、どんなのだっけ?」

「あら? ホットサンドよ」

 もう一振り。カリカリのベーコンを挟んだ、熱々の目覚まし時計が二つ現れた。


(410字)



たらはかに(田原にか)様のいつもの企画への参加です。

今回のテーマは「ごはん」「杖」。
 実に一か月以上ぶりの参加でして、と言い訳がましく書いてから一ヶ月以上が経ちました……。

 ちなみに、私がイメージしていたクロックムッシュは目玉焼きが乗っていたのですが、それはクロックマダムというらしいです。へー。
 でも、文字通り考えると、クロックムッシュ=コグスワースではないかと。……つづりが違うんだろうなぁ。


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