見出し画像

【ショートショート】命乞いする蜘蛛#毎週ショートショートnote

(読了目安2分/約1250字+α)


「ボクを見逃してくれたら良いことがおきますよ」
 壁に貼りついたクモが、トイレットペーパーを構える私に話しかける。

「例えば?」
「ほら、朝見るのは縁起が良いっていうじゃないですか」
「夜中の三時だけど」
「もう朝です」
「私これから寝るし」
「生活を改めた方が良いですよ」
「クモに言われる筋合いないから」
「ああ、待って待って。益虫なんですよ、ボク」
「エキチュウ?」
「ほら、他のハエとかダニとか食べるから人間とWinWinです」
「ああ、大丈夫。自分で殺すから」
「ええとじゃあ、ほら。ハロウィーンの飾りつけはおまかせください」
「まだ春だし」
「それまで一緒に暮らしましょうよ」
「やだよキモイ」
「見逃してくれたら、アナタが地獄に落ちた時にクモの糸を垂らして助けてあげますよ」
「フィクションだし。垂らしたのはお釈迦様だし。地獄行くつもりないし」
「それだけ虫を殺していたら地獄行きですよ。出ないとボクらが浮かばれません」
「私が地獄だとして、アンタ天国行けるの?」
「それはもちろん。益虫ですから」
「そういうこと自分で言っちゃうやつって信用できないよね」
「そこは信じていただくしか」
「天国から地獄までクモの糸って伸ばせるの?」
「そこも信じていただくしか」
「登りきれる気がしないんだけど」
「そこはがんばっていただくしか」
「うん。やっぱいいや。殺す」
「いやいやいやいや! ダメですよ、そういう短絡的なの」
「あ、もうちょっと下りてきてよ。そんな上まで行ったら手ぇ届かないじゃん」
「下りたらそのトイレットペーパーで掴まれて流されちゃうじゃないですか」
「うん。もう早く寝たい」
「あああ、ダメですよ。壁を叩かないでください。ここ賃貸ですよ。何時だと思ってるんですか」
「朝でしょ」
「夜中の三時です」
「さっき朝って言ったじゃん」
「まだ寝てる人もいますから」
「夜グモは縁起悪いらしいよ」
「夜中の三時は朝方ですけどまだ寝てる人もいるんです」
「アンタ、他からメンドクサイやつだとか言われない?」
「社交的な好青年だと言われます」
「そういうこと自分で言っちゃうやつって信用できないよね」
「あ、そうだ。実はボク、真実の愛を見つけたら魔法が解けて王子様に戻れるんです」
「どこの王子?」
「……大通りの向かいです」
「ウソだね」
「ウソじゃないです」
「近所に王子がいるなんて聞いたことない」
「身分を隠して住んでいたんです」
「じゃ王子だったとしてよ。身分を隠したり、クモだったりしたら、王子のメリット無くない?」
「だから真実の愛を見つけたら戻れるんです」
「来世でがんばって」
「あああ! だから壁を叩かないでください! 非常識ですよ」
「クモの常識なんて知らない」
「人間の常識の話です」
「もう、わかったよ。じゃあ今は見逃してあげる。はやくウチから出てってよ。大通りの向かいの家にでも行って」
「さすがに遠いです」
「天国から地獄までクモの糸は垂らせるのに?」
「大通りの向かいよりは近いんです」
「天国と地獄ってそんなに近いの?」
「はい」
「はあ、なんかクモの糸、登れる気がしてきた。そんときはよろしくね」

<消灯>



たらはかに(田原にか)様のいつもの企画への参加です。

今回のお題は【命乞いする蜘蛛】。珍しくまともなお題なので書いてみたら全然400字じゃなかった。
なおトップ画像は、「蜘蛛の文字は耐えられるけど画像はダメ」っていうnoterさんがいらっしゃったので全然違う絵にしました。

Huluを1か月だけ観ようと思って登録したら色々気になるやつがあって1日5時間くらい観てます。書く方そっちのけでミステリーばっかり偏食中。多分食べ過ぎて気持ち悪くなったらまたムズムズと書きたくなるので、それまで暴食します。


よろしければサポートをお願いします!サポートいただいた分は、クリエイティブでお返ししていきます。