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BEEPBOY LAND誕生秘話 ~PCエンジンに眠るゲーセン遺伝子覚醒計画~
まず初めに言っておきます。
PCエンジンをギャルゲー専用機だとか
音がしょぼいゲーム機だと思うのは
ストップ!もうやめましょう。
PCエンジンは、ちゃんと使えばできる子なんです。事実、PCエンジンminiのnear arcade(グラディウス、ファンタジーゾーン)がそれを証明しています。
PCエンジンには1980年代前半のゲーセンサウンドを表現できる能力、すなわちゲーセン遺伝子があります。それを覚醒させるかさせないかの違いです。
私はチップチューンミュージシャンとして、その音で新しい作品を、夢の続きを作る活動をしています。
なぜそこまでして私がPCエンジンにこだわっているのか、聞いてみたいと思いませんか?
BEEPBOYは何者か?
私ことBEEPBOY(執筆時点で45歳)は1970年代に生まれ育ち、明るい未来が待ち望まれていた1980年代前半をリアルタイムで経験しました。
田舎育ちだったので、テクノポップはブームが過ぎ去った後に後追いしてましたが、ファミコンなどの8bitゲーム機もリアルタイムで経験しております。
自分では持っていませんでしたが。。。
そう、親に買ってもらえなかったのです。
私の父は当時、ファミコンの事は「欠陥コンピューター」だと批判していました。
PCエンジンを含むゲーム機が次々と登場するのを、私は指をくわえて見ていました。
チップチューン時代到来
それから約20後、レトロゲーム機の音を使って曲を作るチップチューンが
海外で盛り上がり、日本でも徐々に盛り上がりました。
私も2005年に、当時チップチューンの事は知らずに8bitPCの1つMSXを使ってアルバム「I say hello from Nishiazabu」を作ってリリースしました。
その後チップチューンサークルFMPSGに参加し、半年に1回1曲作るペースで活動していました。最初はMSXを使っていましたが、しばらくして限界を感じてファミコンに乗り換え、それでも限界を感じて次は自作音源やゲームボーイへと、環境を変えながら活動していました。
後にPCエンジンの音源がナムコやコナミのアーケードビデオゲーム機音源に近いことを知りました。
しかし当時、PCエンジンで曲を作るにはMML(というマクロ言語の一種)を書いてコンバートしなければならないという問題がありました。
MMLだと音ズレしたりして曲作りがしづらい事は、すでにMSXやファミコンで経験していました。それでもMMLを使っていたのは同時発音数の多さが目的でした。多い時はMSXで17音、ファミコンで27音鳴らしたこともあります。
それに比べて音数たった6音のPCエンジンのためにMMLを書こうという気にはなりませんでした。
2018年頭にDefleMaskというソフトの存在を知り、とうとうPCエンジンも視覚的に曲作りできそうだ!と、だんだんハマっていきました。
この年のM3からPCエンジンで曲を作りアルバム「Fruity boy」「カヴァーズラヴァーズ」「バブルレーザーミュージック」をリリースしました。
が、
PCエンジンの不都合な真実
PCエンジンの過去を改めて調べると、ファミコンやゲームボーイほど愛着が無いのでは?と首をかしげるような情報が次々と出てきました。
「PCエンジンはいかにもオタクっぽい人が所持している」
そういう人物像が、あるゲーム情報誌に掲載されていました。ときめきメモリアルなどの後期ラインナップから、そういう方向性に向かっていたことは理解はできます。
「PCエンジンは音がしょぼい」
これはファミコンやゲームボーイなどとの比較から来ていると考えられます。PCエンジンの音は「ポーン」という感じの音を鳴らした時、自然に消えていく感じです。
一般的なチップチューンと比べてEDMなど迫力ある曲を作るのが難しいからなのではと考えられます。(サイドチェイン効果を再現できない?)
「波形メモリ音源、という言葉が広く認知されていない」
当時の開発者やチップチューンアーティストの一部には通用するのですが、残念ながら一般リスナーへのアピールポイントにはならないようです。
個人的には、PCエンジンが不遇な運命に至った最大の原因は、同様の音源を使ったキラーコンテンツ移植がPCエンジンリリース初期に無かった事なのではと考えています。
ぶっちゃけた話、ナムコがマッピーを移植していれば
PCエンジンは「ゲーセンと同じ音が出るマシンだ!」と、もっと認知されていたかもしれません。
他の80年代前半の代表的ナムコ作品はというと、
・リブルラブルは16bitCPUを使っているため移植困難
・ドルアーガの塔は初期に移植可能だったと思われるが、制作サイドに強い思い入れがあったらしくPCエンジン後期にアップグレード移植された(これはこれで非常にありがたい話です)
ちなみに他社事例も含めると、
・初代グラディウスはMSX版移植スタッフがアレンジ移植した為アーケード版の音を再現していなかった
・ビックリマンワールド(ワンダーボーイ モンスターランド)は音を再現できていているが、PSGを2個鳴らしたような音なので凄さが伝わりづらい
一見マイナス要因だらけのPCエンジンでこのまま活動を続けていいのか疑問を感じていました。
扱う音源をゲームボーイに戻すべきなのか、それとも…
80年代ゲーセン経験者の少なさを把握してなかった
2019年9月にプライベートアルバム「n-kanドラフト版」を作り、ゲームレジェンドに初参加しました。他のブースを回っていた時、ある同人誌が目に止まりました。
「ナムコミュージックとの出会いと私」(滝平企画・作)
気になって1冊買って読みました。そこには私が意識していなかった事が書かれていました。
「当時、ゲーセンに行くことは悪とされていた時代。」
確かにそうだった。
「昔ゲーム機を指をくわえて見ていた」と書いたが、実はそれと同時進行で「ゲーム機を買ってもらえなかったからゲーセンに通ってた」のだ。
私にとってのアーケードゲームは、テレビの向こうで開催されている科学万博なんかよりもずっと身近にある、数少ない希望の1つだった。
だから、ゲーセンに不良がいようがタバコ臭い空間だろうが我慢することができた。
だから2019年まで客観的な歴史が見えなくなっていた。
…読み終わった私は、
「ゲーセンサウンドというコンセプトでは少数の人々にしか魅力を伝えられない!コンセプトを変えなくては!」と考えを改めました。
あの音が当時ほかにどこで鳴っていたのか振り返りました。その結果、
・遊園地
・デパートの屋上
・駄菓子屋
以上の場所でも聴くことができたことを改めて思い出しました。
ゲーセンから遊園地へ
私はテーマを変更し、次のアルバム「BEEPBOY LAND」に取り掛かりました。テーマは「チップチューンの移動式海上遊園地」。
ジェットコースター、スペースシップ、メリーゴーランド、ワンコインライド、次々と楽曲ができました。
チップチューンコンペ「PICOTRAX」参加曲や、音ゲーアプリ用に作った曲の別バージョンを収録し「BEEPBOY LAND」が完成しました。
それはゲーセンや遊園地で鳴っていたあの音を使って曲を作りアルバムにする、という活動の集大成でもあります。
私は数年前から「50歳になるまでに作曲スタイルを確立して、耳が悪くなっても生涯現役で曲作りできるようにする」という目標がありましたが、PCエンジンとの出会いで確立できつつあると感じています。
これからの課題
そんなPCエンジンチップチューンですが、他のゲーム機やPCに比べてやっている人がほとんどいません。
ライブ出演されている方ではHosotakeさん、Rophonさん、といったところです。
N16x、SCC、Chip32、Kamata、SANA 8bit VSTなどで曲を作って投稿される方はもう少しおられるかもしれません。
ですがこのままだと波形メモリ音源は私の世代と共に消滅するのではと懸念しています。
・いかに魅力的な曲を作り続けるか
・曲以外にも価値提供する方法はあるか
・どのように次の世代に技術継承していくか、
これが今後の課題だと考えています。
最後に
ゲーセンサウンド、デパート屋上サウンドで作った最新アルバム「BEEPBOY LAND」はイベント会場の他にBoothで入手できます。
このnoteをご覧になって聴いてみたい!と思った方はぜひアクセスしてみてください。
もしサポートいただける場合は、BEEPBOYの活動資金として活用させていただきます。