マガジンのカバー画像

[私小説] 霜柱を踏みながら

24
私小説です。時系列でなく、思い出した順番で書いてます。私の個人的な思い出の物語です。
このマガジンは私の私小説風のエッセイで、月に3本くらい2000文字前後の作品を投稿していく予定です…
¥100
運営しているクリエイター

2021年6月の記事一覧

青春は、傲慢と謙虚のはざまでゆれる

一歩進むごとに、過去の一歩が失くなっていく。 いつかこの場所もゼロになってしまうのだろう。 『霜柱を踏みながら 15』 両親があんな風だったせいもあり、それに加えひとりっ子だったせいもあり兄弟・姉妹の世話をすることもなく、親戚も遠方にいたため四六時中の付き合いもなく、両親と向き合っていない時はひとりで時間を過ごすことが多かった。今のようにインターネットやゲームなどはなく、ひとり遊びの原点といえば漫画本を読むか児童図書を読むかくらいしかなかった。今の子供たちからすればなんて退

まさにその世界で、笑っていた無垢なアイツ

一歩進むごとに、過去の一歩が失くなっていく。 いつかこの場所もゼロになってしまうのだろう。 『霜柱を踏みながら 14』 その子は、名前の一部を取ってみんなから「シン」という愛称で呼ばれていた。高校の3年間を通して付かず離れずの友達だった。親友と呼べるほど親密ではなかったけど、常に振り向くとそこにシンはいた。シンは小柄で髪はショートカットで日焼けしたような小麦色の肌をしていた。顔は特別可愛いというわけでもなくかといってブスでもなく、平凡な顔だったように思う。でもどういうわけか