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映画で知り、本で生き、舞台で弾ける。

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映画、本、観劇の記録です。 この3本の柱でわたしは成り立っています。
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2023年8月の記事一覧

放浪記(一部〜三部)・林芙美子

読書感想文 『放浪記・林芙美子』 『私は宿命的に放浪者である。私は古里を持たない。』 という文章から「第一部・放浪記以前」が始まる。 そこを読んだだけでも変にワクワクする。そのワクワクは、嬉しい、楽しいというワクワクではなく、林芙美子という女性の生き様を垣間見れるワクワク感だ。 これは小説ではなく、芙美子が日々書き留めた日記だ。当然、主人公は芙美子自身であるから、正直に綴られたその日記には心を奪われてしまう。 571ページという長い文章である。 ただただひとりの女性に魅せら

【NODA・MAP第26回公演】 兎、波を走る

酷暑の中、新歌舞伎座へと向かう。 最寄り駅にはものすごい人の波で観劇前から酔いそうな気分で劇場へと向かった。この暑さとこの人並み...これもこのお芝居の演出のひとつなのではないかと思うほど、人を酔わせる夜だった。 定時開演。 * 潰れかかった遊園地が物語の始まりの舞台となる。 妄想の世界と現実の世界、その中に時間渦の不思議が織り込まれていく。 とある場所から脱走してきた兎(高橋一生)、妄想か現実かわからない場所で迷子になったアリス(多部未華子)、アリスを探し続けるアリスの