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映画で知り、本で生き、舞台で弾ける。

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映画、本、観劇の記録です。 この3本の柱でわたしは成り立っています。
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2021年11月の記事一覧

もっとたくさん人を愛して死んでいきたい

「某・川上弘美」を読み終えた。 不覚にも最後は涙するという結果になって、私にもまだ人間のやわな心が残っているのだと再確認した。 「某」という言葉の意味をネットで調べてみると、『人の名前や、地名、場所、時などについて、それとはっきりわからない場合、あるいは、それとはっきり示さず表現する場合に用いる』と書いてあった。 なるほど...と思う。はっきりわからないのだ。 何もかも。 主人公の「わたし」は、突然この世に現れた。人間のような姿をしているが、名前も年齢も性別も生きているの

西瓜糖の日々

とても変な話だ。 
まるで誰かが見た長い夢の話を聞かされているようだった。

 いま、こうしてわたしの生活が西瓜糖の世界で過ぎてゆくように、
かつても人々は西瓜糖の世界でいろいろなことをしたのだった。
あなたにそのことを話してあげよう。
わたしはここにいて、あなたは遠くにいるのだから。

 とても素敵な書き出しに、西瓜糖の夢の世界に恋いこがれながら読んだ。何を隠そう私はこの本を数えきれないど読んだ。でも不思議なことに何度読んでもまるで新しい本に出会ったような新鮮さと驚き

人生の謎について 松尾スズキ

この本のタイトルを見た時に、「あなたが謎だよ、松尾さん」とツッコミを入れたくなった。他人の人生で「あの人、謎だわ」と思う人は多々いるが、私の中では松尾スズキほど謎な人物はいないとずっと前から思っていた。今もそう思っている。この本は松尾スズキの人生の謎について書かれたエッセイで、普通言えないよなこんなことと思えるようなことも堂々と書いてあるから素敵だ。 私は松尾さんが携わるほとんどのお芝居や映画やドラマなどを長い間観てきたが、松尾さんはほんとうに謎多き人だった。特に舞台上では